::: ミステリ ::: ★★☆☆☆
哲学と競馬、そして短歌を無理やりミステリに絡ませた、こじつけミステリ?
これまでに 『邪馬台国はどこですか?』 と 『九つの殺人メルヘン』 を読んだことがあるが、この2作にも増して軽くチープな仕上がり。
連作短篇であることや、安楽椅子探偵もの、物語に関連したイラストが描かれている点など、 『九つの殺人メルヘン』 にスタイルが非常に似ている。
また、『九つの殺人メルヘン』 では、グリム童話とミステリの融合でしたが、本書では、哲学(哲学者の名言)とミステリです。
シリーズものなのかはよくわかりません。
8篇の連作短篇のタイトルには、有名な哲学者の名言がつけられている。
当然ですが、それが謎解きの鍵になっているわけです。
あらすじは、難事件を担当する特捜班のメンバー、警視庁の高島警視と久保主任は、捜査に難航する度に競馬場に訪れる。
そこには、事件の内容を聞いただけであっという間に、真相を突き止めてしまう哲学探偵がいるからだ。
哲学探偵(謎のおっさん)は、その名の通り、哲学をヒントに事件を解明していく。
事件が起きてから解決するまでの流れは、事件の捜査過程を説明後に、捜査官は競馬場に赴き、競馬関連の薀蓄と短歌の紹介をする。
そうこうしているうちに哲学探偵が現れ、哲学の薀蓄を披露がてら謎解きが始められるというパターンを8回繰り返すわけです。
形式的に進められていく展開(無駄な描写は一切カット)と、赤川次郎の作品でみられるようなアクロバティックなトリックのミステリに、サクサク読めるライトな文章は、 “哲学” という難解なものに抵抗感がある人にとっては、極めて読みやすい。
哲学というタイトルを見ただけで尻込みしそうですが、読んでみると全てにおいてシンプルにまとめられているので、哲学もミステリも初心者という人にもお薦めできそうです。
ただ、哲学探偵にしても、警察官の2人にしても、キャラクターがまるっきり魅力に欠ける。(笑)
それと、薀蓄系ミステリの宿命でもあるが、ミステリでありながら謎解きが腑抜けなものが多いこと。
“こじつけ” と云われても致し方ないでしょうね。
哲学にも競馬にも短歌にも全く興味が無いミステリバカには、物足りなさ120%な作品。
※ これ以降ネタバレしてます。薀蓄ミステリは好きです。
好きですけど、何で、3つも無理やり入れる必要性があるのかわからない。
哲学探偵なんだから、思う存分哲学を薀蓄ればいいじゃないかと思うのですが。。。
個人的には、哲学には興味があるので楽しめましたけど、事件との絡みが強引というか、事件そのものもそうですが、かなりこじつけ感は否めない。
それと、哲学の薀蓄はもうちょっと簡単にして欲しかったかなぁ。
簡単な言葉を使っていても、文章全体としての意味がわからなかったりする。
身近な事柄を例にして説明してくれた方が理解しやすいと思う。
疑問に思うのが、何故、謎解きが競馬場でなければならないのか、とか、短歌の必然性だったりする。
競馬場に関して言えば、1話目では、1月に行われる中山金杯というレースに始まり、2話目では皐月賞、以降、優駿牝馬、日本ダービー、菊花賞、天皇賞、ジャパンカップ、有馬記念と、年間を通して行われるメインレースを取り上げている。
哲学探偵が競馬好きというのもあるが、おそらくエラリー・クイーンの短編集 『犯罪カレンダー』 のパスティーシュンなのかなと。
それが競馬に関連する事件だったら、尚良かったのかもしれないですが。。。
ただ、競馬やレースに関する薀蓄は、競馬音痴のわたくしには勉強にはなりました。
微妙なのが、短歌です。
刑事の久保が、競馬場に来る度に、短歌を詠みあげる。
彼は事件の様相からインスパイアされて浮かんだ歌を口ずさむのですが、その歌人も歌も全く知らない。
高島警視のように、 “誰です?” 状態。(笑)
しかも、どういう意味なのかもわからない。
歌人の説明するならついでに詠んだ歌がどういう状況で作られて、どんな意味があるのかくらい教えて欲しい。
個人的には、事件の様相を詠んだ短歌だったら面白かったんですけどね。。。
短歌で謎掛けして、哲学で解答されるミステリってのもすごいじゃないですか。(笑)
本書は今後シリーズ化するつもりがあるのでしょうか?
哲学探偵は何者なのか、結局謎のまま終わってしまいましたが。
続きがあるとしても、さすがに競馬場は無理でしょうね。
1年間の主なメインレースは取り上げてしまいましたからね。
競艇とか競輪になったらちょっと引きますけど。。。(笑)
特筆すべき内容ではないのですが、一言だけ。
・第一話 世界は水からできている(タレス)水割りのグラスを被害者自身が入れ替えた事を示す証拠として、テーブルについた水滴を哲学探偵は指摘してますが、一度、グラスをテーブルに置くという行動が解せない。
2つのグラスを入れ替える場合、両手に持っていっぺんにやりませんかね?
片腕しかないとか、片腕をケガしているといった理由ならわからなくもないが。。。
・第二話 汝自身を知れ(ソクラテス)名前の漢字の成り立ちから被害者には兄弟がいるのでは!? と双子説を唱える点は、ミステリ作家らしい伏線。
ただ、金田一京助くらいしか気づかないのと、あからまさな双子トリックがいまひとつ。。。
・第三話 われ思う、ゆえにわれ在り(デカルト)何とも赤川次郎の作品っぽい人物の入れ替えトリック。
殺害現場のトイレから変装して出て行く犯人の描写が何ともわざとらしく、こいつ犯人じゃね?と突っ込む始末。(笑)
駅のトイレの個室で人を殺すのはかなり難易度が高い上に、犯人は“掃除中”といった立て札や掛け札を用意してないなど、100%運に頼った犯行なのに、100%実行できちゃうご都合主義な展開。
・第四話 人間は考える葦である(パスカル)女性を殺害し、341もののパーツに遺体をスライスして、山奥の湖に遺棄するという猟奇事件。
百歩譲って、冷凍庫や341個に人間をスライスする機械があり、誰にも気づかれずに人間を殺害し、人間の冷凍薄切り肉が完成したとしよう。
完全犯罪を達成できるにも関わらず、何故犯人はスライスした遺体を一纏めに袋詰にして湖に遺棄したのか??
激しく疑問です。
バラバラにした意味がないじゃん。
・第五話 純粋理性を求めて(カント)死の三日後に出された犯行声明が、殺人の証明となった事件。
変則的なアリバイものという感じ。
犯行を隠したい一心で、逆に目立つ行動をしてしまうという、おてつき犯罪者は現実でも多いですよね。
黙ってれば事故死として処理されたかもしれないのに。。。(笑)
・第六話 厭世主義〈ペシミスト〉の暴走(ショーペンハウアー)気功で殺人?'`,、('∀`) '`,、
腹痛と肩凝りくらいなら治りそうですけどね。。。
・第七話 神は死んだ(ニーチェ)小学生が粘土で作った生首をタイプカプセルに入れる図は、想像できませ〜ん。
いたずらの度合いがかなりマイナス方向に向いてます。(笑)
っつか、普通、タイムカプセルに物を入れる時はみんなで集まって入れません?
みんなが見てる前で、さすがにニセ生首は入れらんねぇなぁ。
・第八話 存在と時間の果てに(ハイデッカー)電話の子機を携帯電話のように使うというアイデアは良いけど、既存のトリックな気がする。
子機の電波がどこまで届くのかもよくわからないですし。
問題は、店に置いてある電話がどういう電話機なのかの説明がなかった(と思う)こと。
子機がついているような住宅用の電話機であるとか、公衆電話タイプのものなのか、など。
しかも本篇の扉絵には、昔なつかしダイヤル式の黒電話機が描かれているのはフェアではない。
( ゚_ゝ゚) { 『人生と、事件の謎と、競馬場。』 ソースが絡まってないパスタ。