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裁きの終った日 (文春文庫)裁きの終った日 (文春文庫)
(2010/06/10)
赤川 次郎

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::: サスペンス ::: ★★☆☆☆


1980年の初期作品。

物語は。。。
大富豪・本色家の当主が殺害され、その長男の息子が容疑者として逮捕される。
ところが、捜査協力を行っていた著名な犯罪研究家が、事件の真相について言及しようとした時、当主の末子の入婿が、自分が犯人であると名乗り、ナイフで研究家を殺害してしまう。。。


1つの殺人事件が、それにたずさわった関係者を巻き込み、新たな事件を誘発していく。
主役不在で綴られていくグランド・ホテル形式の愛憎群像劇。
注目したいのは、殺人事件の冤罪の発覚、そこから真犯人による新たな殺人によって物語が始まるという点。
本来であれば、真犯人が自供し、さらに新たな殺人を起こし逮捕となれば、事件は終焉を迎えるはずなのだが、本書では、一連の逮捕劇は序章に過ぎないのだ。
解決したと思われた事件は、実は、事件の発端であるという設定は、赤川先生らしい特異な着眼点である。

本格ミステリ好きには残念だが、犯罪(事件)そのものや、事件の謎解きが物語の核ではない。
赤川センセは、元サラリーマンだったという経緯もあり、その経験が活かされており、1つの事件によって引き起こる利権が絡んだ不毛な人間関係、企業内の醜い権力闘争、といった強欲さがもたらす、様変わりしていく人の心を描きたかったのではないでしょうか。

社会派ミステリの色が濃い本書だが、派手なドロ沼劇場の裏に、事件の真相が巧みに隠されている。
そういう意味では、本格ミステリのテクニックが垣間見れる。
加害者から一転して被害者へ、またはその逆となった二人の人物を取り巻く人間関係や、社会的立場を描きつつ、サスペンス・ミステリとしては、大どんでん返しを用意している周到さ。
初期の赤川作品は、やはり素晴らしい。


2009年に裁判員制度の導入などで、日本の裁判のしくみが大きく変わった。
しかし、今も昔も変わらないのは、裁判で罪が裁かれたからといって、事件の全てが一件落着したわけでないということ。
本書を読むことで痛感させられる。
殺人事件が起こると、第三者によって関係者は加害者、被害者、両遺族という立場の配役があてがわれ、さも事件が一件落着したかのように思えるが、彼らにとってはタイトルが示す通り、 “裁きの終った日” が本当の意味で事件の始まりなのかもしれない。
















※ これ以降ネタバレしてます。










































赤川作品では、90年代以降の作品には、グランド・ホテル形式の愛憎群像劇が非常に多い。
しかし、残念ながらクォリティがちょっと。。。という作品が目立つ。
というのも、あまりにも非現実的なキャラクターが多いからだ。
赤川作品の特徴として、 “意外性” は切っても切り離せないものだけど、現代にマッチした意外性かどうかというと疑問に思ったりする。

しかし、本書に関しては、キャラクターの破天荒ぶりは健在ではあるものの、テーマが非常に興味深い。
本書は30年前の作品だが、共感できる普遍性を保持し、だが誰もが目を向ける日常的なテーマでない。
赤川センセの着眼点は目を見張るものがある。
ミステリに限らず、小説は共感性と意外性がいかに重要かということを思い知らされます。


本書の事件は多くの関係者が複雑に絡んでくる。
老女殺しの冤罪による誤認逮捕に始まり、その犯罪を自供し新たに殺人を犯し逮捕される男が登場するなど、非常にややこしい。
しかも、冤罪として無罪釈放された男は、人間としても社会人としてもダメダメなダメ男。
刑務所に入れられて、やっかい払いができたと安堵していた親族にとっては、とんだ計算違いである。(笑)
ダメ男の釈放を機に、一族のファミリー企業内では、利権を巡る権力闘争が勃発する。
そんな中、老女殺しの犯行を自供し逮捕された男は、殺人を犯すような男には見えず、誰かをかばっているようなそぶりを見せる。
複雑に絡み合ったドロドロの人間模様に巧みに隠された事件の真相は。。。!? と期待される展開。


だが結果は、研究家殺しで逮捕された男の次女が、老女殺しの犯人だった。
というちょっと期待はずれの真相。(笑)
確かに、この次女は終始、異様なまでにおとなしく、存在感が希薄だった。
こういう娘っ子が殺しをするというイメージがわたくしにはないなぁ。
でも、現代社会では同級生をナイフでブスりっていう事件あるし。。。ありっちゃありなのか?
現代だから想定内と思える事件だけど、30年前にと考えると、赤川センセってば社会的にも、出版界的にも結構な異端児だったのかもしんないですね。
わたくしが学生の時分に、赤川センセの作品が、学校図書にあまり無かったことを考えると、納得。(笑)


老女殺しの娘っ子をかばおうと、確実に殺人罪で逮捕されるために、罪も無い無関係の犯罪研究家を警察官の前で殺害し、父親は逮捕されるわけです。
この殺人は許されざる大罪である。
冷静に考えれば、殺しても殺さなくても老女殺しの真相が解明される確立は50%だと思うんですよね。
相当警察が無能でない限り。
ただ、冤罪事件が取り沙汰される現代において、無いとも言い切れないが。。。
ハイリスクをおかしたのに、事件の真相が解明されてしまう可能性を考えたら、殺人がいかに無意味で、非合理的な手段かわかりそうなもんですが。。。
しかも、娘っ子や犯行を偽証し続けた家族のためになるとは、絶対に思えない。
人を殺すことで得られるものは何一つない。

ただ、ラストで事件の驚愕の真相(家族ぐるみでの犯罪の偽証、隠蔽)が明らかにされるのだが、それがミステリ的な解明ではなく、モダンホラーな締めくくりなのが面白かったです。
表沙汰にされなかった恐ろしい真実。。。
ゾッとする怖さの余韻を残すラストは秀逸です。
















(  ゚_ゝ゚) { 『人は、犯人が見つかれば、それで事件は終りだと思いがちだ。』 ニュースの裏側にある事件の本質。








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