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(2010/03/26)
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::: ノンミステリ・文芸 ::: ★★☆☆☆


東野圭吾路線に完全にシフトした道尾文学。
本書も直木賞候補になるのだろうと思うと、特に著者自身のファンでもない、ミステリファンとしては残念でならない。
賞取りレースに躍起になっている間は、おそらく今後も、本格ミステリから脱却した、ミステリタッチの人間ドラマを創作していくことでしょう。


本書のコンセプトは、東野圭吾の 『新参者』 に影響を受けたとしか言いようが無い構成になっている。
『新参者』 が1つの殺人事件を通して、複数の登場人物達が絡んだ群像劇で、長篇としても連作短篇としても読める構造になっているのに対し、本書では、一章の登場人物が、二章に登場する(直接的もしくは間接的)というように、登場人物達がバトンリレーのようにリンクしていくという繋がりがあるので、構造としては連作短篇だが、各章は独立した物語になっているので短篇集ということになるのかな。

構成にしても、物語の核にしても、ミステリタッチな謎を提示し、解決へと誘導していくという点においては、これまで培ってきたミステリの手法が使われていることは言うまでもない。
ただし、本格度は低い。
その分、“文芸”作品としての割合が多くなっている。
人間の内面を描くという点では、東野圭吾より著者の方がリアリティを感じられると思う。

文芸作品としては、主題もそれに準じたタイトルもわかりやすく、“ライトな純文学”といった印象。
ライトというのは内容のことではなく、理解度や読みやすさという意味だが。。。
個人的には星3つつけたいところだったが、人間ドラマとしての部分の説得力であるとか、各章で光に照らしだされる忌むべき事件性が、演出過剰に思えてならないのがマイナスになりました。
一番の問題は、女性の性描写に関する表現を、男性としての立場、感覚で描いている点。
これは本書に限ったことではない。
『シャドウ』 も 『ソロモンの犬』 でも感じていて、かなり抵抗感があった。
男性作家がうかつに手を出すと失敗するであろうデリケートな部分を、無神経にいじられると神経を逆撫でされる。
本書の場合、それが賞取りのための手段として、粗雑に必要以上に利用されている点が不快。
それさえなければ。。。残念です。
















※ これ以降ネタバレしてます。









































暗い場所から、暖かくやわらかい光ある場所を求めようとするのは、植物や昆虫だけじゃない。
白い蝶が道案内となって、紡がれていく物語は、光を媒介に必死に生きる道を模索する人々を描いている。
白い蝶は、登場人物達が抱える苦悩、絶望、悲哀から、再生への希望の光、未来への道筋という象徴なのかもしれない。

ミステリの技法(論理性)を使いつつ、読み手の感受性を刺激するような心理描写のバランス感覚が良い。
例えて言うなら、基礎構造は機能性や耐震性に優れた現代建築だが、外装と内装は暖かく癒しを感じられる古民家風の家という印象。
登場人物達のバトンリレーは叙述的な手法だし、陰惨で暗い物語を飽きさせずに読ませるために用意された謎、それらを解決へと導くための伏線などなど、これまで培ってきた本格ミステリのテクニックは高い。
そうして左脳を刺激しつつ、純文学風な筆致で人間の心を写実していく。
一章の夏から始まり、秋、冬、春と各話に季節を感じられる演出がされていたり、殺人という肉体的な傷よりも、精神的な心の傷や、心の闇をより深く描くなど、感性、感情を司る右脳も揺さぶってくる。
割合としては、ミステリ作品というよりは、文芸作品と感じる人の方が多いのではないでしょうか。


作品としては、悪くは無いと思う。
ただ、著者の性表現がどうしても肌に合わない。(笑)
折原一がスポーツ新聞に掲載されているような、おっさん向けのエロ小説風な性表現だとすれば、著者のは、変質者的思考の表現だと思う。
とくに本書は、その演出過多ぶりに辟易だ。
おそらく、賞取りを意識した内容にするためだと思う。
昨今の直木賞とか、芥川賞は、性的表現をどれだけ個性的かつ斬新に描けるか。。。みたいな作品が受賞している。
賞取りの傾向と対策を考慮して書き上げた作品が本書という印象がぬぐえない。

一章では、大人の女性が少年に。。。なアメリカじゃそれ、レイプだし。
二章では、おっさんがいたいけな少女に。。。だし。
三章では、母親のヒモ男が、娘を献上。。。。
六章では、少女が動物虐待。。。
どんだけ著者の性観念はゆがんでるんだよと思わずにいられない。(笑)

確かに、殺人という肉体としての死の方が、現代人には身近すぎて、刺激的じゃないのかもしれないが、ここまで演出過多にしなきゃ、賞取れないんですかね?
これじゃ、リアクション芸人の芸風と変わらない。
三流の役者の三文芝居を見せられてるのと同じ。
常識的な感性を持っている読者だったら、性犯罪の被害者(しかも少女)に感情移入したり、同情するのは当たり前の感情だと思うんですよ。
読者が女性だったら尚更です。
その部分で読み手の感情を誘導(?誤導ですね)して、感動させようとするのは一流の作家とは言えない。
そういう点で、わたくしが評価したいのは四章の物語なんです。
子供を女手一つで育てなければならない母親を嫌悪する息子の話。
子供を育てるために、あらゆるモノを捨ててきた、己を変えて生きざるをえなかった。
そんな母親の気持ちを知っていながらも嫌悪してしまう。。。
家族という繋がりが持っている、特有の複雑な感情を表現した作品だ。
奇抜な事件があるわけでなし、演出過多な性表現があるわけでもない。
地味だが、どんな家庭、家族にもあるリアリティを感じれる。
誰もがかわいそうだと同情を寄せるような、わかりきった計算された演出では心に響かない。
日常生活で蓄積され、誰もが持っている陰鬱で漠然とした負の感情を、的確かつ何気ない表現で追体験させられるからこそ衝撃を受けるのだと思う。

もう1つ言いたいのが、性表現があまりにも男性の感覚で描きすぎ。
本書での性犯罪の被害者という設定は、女性は同情を寄せるが、男性はひそかに興奮してそうな気がする。(笑)
つまりは、エロ本とかアダルトビデオを見てる感覚と同じで、男性による男性のための性表現だと。
しかも日本特有の小児愛症者とか、電車で痴漢するような変質者的な妄想を呼び起こしそうな。(笑)
本書だけでないが、著者の作品の性描写というのは、はっきり言うが気持ちが悪い。
男性目線で性描写を描く時、その対象が女性や子供などの弱者というのは、男性作家にとっては諸刃の剣だ。
相当女性や子供の心理、社会における立場に精通してないと難しい。
単に、読者の心を打つような悲劇的な状況設定欲しさに手を出すとボロが出る。
著者にはそれだけの繊細さに欠けている。
俗に言う、デリカシーの無いヤツである。(笑)
フォローがない分、余計に癇に障る。

賞取り(ひいてはセルアウト)のための手段として、陳腐な同情話と粗雑かつ過剰に扱われる性描写は難点きわまりない。
女性は不快だが、男性は興奮しそうな描写は、アダルトビデオの見過ぎか、それとも性観念がどこまでも歪んでいるのか。。。
弱者を鞭打つことで集まる “同情” を “感動” に転化させるのは無謀。
デリケートな部分を、結果につなげるための設定と考えてしまう打算的で野心的なところは、東野圭吾同様に理系脳丸出しだ。
ある意味、やっぱりこの作家はミステリ作家なのだと皮肉にも感じられる。
ミステリ作家としては一流になる要素は十分だが、苛められっ子が苛められている様子を見せてるだけの表現力では、文芸作家としては三流としか言いようが無い。
ただ、作品の構成、コンセプト、主題、タイトルどれも良く、何を描こうとしているのかわかりやすい。
問題はやはり性描写。







ちょこっと感想。



・「第一章 隠れ鬼」

認知症の母親と暮らし、印章店を営む中年男性の隠された忌まわしい過去の記憶とは。。。


親父だけでなく、その息子までたぶらかすサキュバスのような女は、一体何がしたかったのか。。。
正妻へのあてつけ?
そんなことよりも、認知症になったら、自分の心の闇も、忘れていた記憶も表に曝け出してしまうほど、無防備で抑制力が無くなってしまうのか。。。と気づいたら、絶対に認知症になる前に死なねばと思ってしまった。。。(´ー`)┌





・「第一章 虫送り」

川原で虫取りをしていた小学生の兄妹。
ある夜、川原で知り合ったホームレスに妹が虐待をうける。
復讐を企てる兄だったが。。。



ピンポンダッシュですら小学生低学年の子供にしたら、ビクビクもん。
ディズニーランドで迷子になっただけで、半泣きになるようなふにゃちんな心なのに、犯行現場を大人に目撃されて、すっとぼけるのが不可能なくらい追い詰められたら。。。
想像したらその後の人生観が変わってしまいそうなくらいの衝撃だと思われる。(笑)
まぁ、あれですよね、未必の故意でも未成年の犯罪は罪に問われないってことに気づくまで、せいぜいビクビクオドオド暮らすしかないですね。(´ー`)┌





・「第三章 冬の蝶」

初恋の少女が背負う不条理な現実。
彼女ために少年がついた嘘とは。。。



ヒモ男の欲望を満たすため、実の娘を献上する鬼母。(笑)
むか~しの安っぽいマンガにありそうな設定。
レイプ願望の男が妄想しそうな設定。
同情するなら金をくれで脚光を浴びたドラマを連想する設定。
戦後の荒れた日本ならあり得そうだが。。。(´ー`)┌





・「第四章 春の蝶」

両親の不仲、離婚が原因で、失聴した少女が抱える苦悩とは。。。


子供は両親の不仲に敏感です。
あらゆる手段を用い、仲を取り持とうと健気にがんばります。
そうやって溜まったストレスの解消方法を知らない子は、自分を傷つけるか、自分より弱者を傷つけます。
イジメの首謀者とか、動物虐待をするような子にならないよう気をつけましょう。





・「第五章 風媒花」

ポリープで手術入院をすることになった姉を見舞う弟。
父親を癌で早くに亡くしている弟は、いつになく神妙な姉の様子に心配をするが。。。



本書で一番の秀作。
梅雨の時期という陰鬱な設定ですら伏線であり、大掛かりなトリックがなくても、ミステリを書いてみせることができる著者の才能に拍手。
人が死にそうで死なない、ちょっとだけドキドキできるハートフルなミステリ。
一度破壊された人間関係が再構築される時って、痛みを伴うとわかっていてもホッとする。






・「第六章 遠い光」

猫を虐待した犯人が、教え子の女生徒だと知らされた担任の女性教師。
心に問題を抱えた女生徒の心の闇とは。。。



ラスト、締めくくりの話としては、内容がありふれたもの。
女生徒が母親の実母でない上、母親が再婚を考えていることに苦悩するという設定も、特に珍しい事ではない。
のら猫のメスは交尾したら必ず妊娠する上、妊娠から子育て、子離れまでの期間も2~3ヶ月と短い。
そういう本能丸出しで生きるメス猫の特性が、母親とダブってみえたのでしょうね。
のら猫と同一視される母親がなんだか哀れ。。。(笑)












(  ゚_ゝ゚) { 『残酷な世界だ。それでも、人を信じたい。』 早々に信じないことに決めたわたくしですが、何か?







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印章店を細々と営み、認知症の母と二人、静かな生活を送る中年男性。ようやく介護にも慣れたある日、幼い子供のように無邪気に絵を描いて遊んでいた母が、「決して知るはずのないもの」を描いていることに気付... 粋な提案【2011/01/29 02:27】
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