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::: サスペンス・ミステリ・ホラー ::: ★★★☆☆


1979年から1981年までの作品を纏めた短編集。
赤川作品としては最初期のもの。


赤川センセの初期の短編集にははずれがない。
わたしは著者の作品では、 『孤独な週末』 という短編集がお気に入りだが、本書も甲乙つけがたい作品と言ってもいい。

本書は解説でも “奇妙な味” と表現されるように、一風変わった作品である。
例えて言えば、TVドラマ『世にも奇妙な物語』を観ているよう。
ミステリはもちろん、サスペンス、ホラー、ブラック・ユーモア、無常観すら感じさせるほど、バラエティに富んだ作風が詰まっている。
サラリーマン、OL、主婦といった普通の日常を送っている人々が体験する奇妙な物語であり、共感まではいかないかもしれないが、身近に感じられる作品ではないでしょうか。


およそ30年前の作品であるため、若干の年代的なギャップを感じるし、オチのユルさが難点ではあるが、読書が苦手な方や、サスペンス小説やミステリ小説を読んだことがない方のビギナー本としては、非常に読みやすいのでお勧めしたいです。















※ これ以降ネタバレしてます。









































ちょこっと感想。




・「駐車場から愛をこめて」

とあるビルの会社で行われる会議に出席するため、車で訪れた助教授。
駐車場に車をとめようとするが、突如、男が現れ、「駐車場は満車」と告げる。
空車があるはずと訝しがる助教授は、会議でその話を持ち出す。
営業部長の男は、「あなたは幽霊に会ったのだ」とある男の話を始める。。。



【サラリーマンの不条理、悲哀が描かれたホラー】


何をやらせてもダメ。。。そんな人に人生に一人や二人出会う。
本作に登場するサラリーマンの中田がまさにそうだ。
彼の場合、若年性認知症だと思うのだが。。。
忘れっぽいという一言で片付けるのはどうかと思う仕事ぶり。

読んでいて、とてもかわいそうな気持ちで一杯になる反面、企業側の立場からしたら仕事はボランティアじゃないわけで、中田を叱りつける女上司の気持ちもよくわかる。
そんな中田を陰で支える女子社員の存在は、救いではあったが、最後の最後まで不条理なストーリーでした。。。
本作で注目する点は、冒頭から中田が幽霊であることを読者に教えてしまっている。
ベタな作品であれば、最後の最後で、中田が幽霊であるという驚きのオチを用意するのでしょう。
ところが、本作では、中田の女上司までも実は幽霊だったという点が、意表を突いていて面白い。





・「我が愛しの洋服ダンス」

夫が大切にしていた古い洋服ダンスを、妻が無断で売ってしまう。
夫の逆鱗にふれた妻は、タンスを取り戻そうとする。
ところが、古いタンスであるにも関わらず、既に他の人の手に渡ったことを知る。
売り払われたタンスは、今まさに、高級住宅街のある邸宅に運ばれようとしていた。
妻は、タンスを買い戻そうと、邸宅の主人に交渉するが。。。



【夫婦の確執に主婦が巻き込まれるサスペンス】


古いタンスを買い付ける男。。。とくれば、やはりその中に死体が入るのがミステリの王道ではないかと。。。(笑)
ヒッチコック風なハラハラドキドキサスペンスです。
夫婦のいさかいがテーマであり、リアリティがある。
方や、妻の存在を疎んじ殺害した夫がいれば、手遅れになる前に、お互いを思いやる心を取り戻した夫婦もいる。
対象的な夫婦像を、短編のサスペンスで上手く描いている。





・「見知らぬ同僚」

会社のデスクに見知らぬ青年が座っていた。
新入社員か、税務署の職員かと、社員同士の憶測が飛び交う。
彼は一体何者なのか?
一人の青年の存在が、社員たちの運命を変えてしまう。。。



【脛に傷持つ方はご注意あれ、ちょっとブラックなドタバタコメディ】


噂が一人歩きするとこんな感じになるんだなぁ~と、面白おかしく読みました。(笑)
けど、知らない人間が会社にいたら、あんた誰?くらいの事は、普通尋ねますから、現実的には本作のようなストーリーにはなりませんけどね。(´ー`)┌

人間、後ろ暗い事があると、悪知恵スイッチがONになってしまったり、疑心暗鬼になりやすいという心理がよく表現できている。





・「幸福な人生」

親友である祐子の恋人を奪った美樹。
その日から、二人の運命の歯車が狂い始める。
幸福な人生とは。。。



【赤川流の不条理文学】


タイトルは「幸福な人生」とあるが、現代人の感覚からしたら、どう見ても祐子の人生は不幸としか言いようが無い。
不条理だらけで、読んでいるとつらいストーリーだ。

美人で派手な美樹に、地味で大人しい祐子と、女王様と小間使いのような関係性の二人。
恋愛ドラマによくある設定。
全てを持っているはずの美樹だが、どうしてか祐子に嫉妬心を燃やす。
そして、祐子の恋人を略奪してしまう。
心のどこかで良心の呵責があったかどうか謎だが、婚期を逃していた祐子に、男性を紹介し結婚させるも、この結婚が上手くいかず、それどころか殺傷事件まで起こしてしまう。
そして、祐子も短い生涯を終えてしまう。。。
何とも救われないストーリーだ。
それでも、祐子は幸福だと語る。
親友を看取る立場ほどつらいことはないと。

ある意味、嫌味なのか?とも思えるセリフです。
それにしても美樹という女性は、無意識の悪意で人を傷つける何とも嫌な女です。
彼女達の関係性が親友と呼べるものなのか、はなはだ疑問です。





・「人生相談」

ラジオ番組の相談コーナーで、番組を盛り上げるため、サクラの相談者として、電話を通じて相談を持ちかけた早苗だったが、その後、彼女のまわりで奇妙な事件が起こる。。。


【落語のようなオチのサスペンス・ミステリ】


落語のネタみたいなお話です。
早苗の姉の夫が担当するラジオの相談コーナーに、早苗が面白半分に電話で相談を持ちかけるが、その後、早苗の夫が事故にみせかけて殺されそうになる。
実は、早苗は電話ボックスから相談をしていたのだが、話の内容を聞いていた隣のボックスの男が犯人だったというオチ。
著者らしい意外性のあるオチだが、見も知らずの男が何故、早苗の夫を殺害しようとしたのかといった、動機の点ではかなりいい加減な設定。
単純に、キ印だったからということなのか。。。?





・「あなたのラッキーナンバーは」

電話番号の末尾が〈50〉の方に限り、現金一万円のプレゼント。
というラジオの放送を聞きつけた二人の主婦。
先着順5名に限りという条件が、二人を煽り、ラッキーナンバーをめぐり争奪戦が繰り広げられる。
あの手この手で会場のスーパーに向かうのだが。。。



【一万円の価値をめぐるドタバタコメディ】


男性作家なのに、タダ、無料、プレゼントという言葉に我を忘れる主婦パワーを、多少誇張しているものの、リアルに描いているのではと思う。(笑)
本書の争奪戦に使われた時間や、経費、苦労を考えると、一万円と等価じゃないのと思ってしまう。
結局、二人とも一万円は手にすることは出来なかったが、友情は育めたようで、めでたしです。(笑)





・「予約席」

満員電車で通勤する清美。
その同じ電車に、毎日、途中の駅から乗車してくる老人と知り合いになる。
いつしか老人のために席を譲り、たわいない会話をするのが毎朝の日課になっていた。
ところが、その情景が清美の父親を会社から退職に追い込むきっかけとなっしまう。。。



【何気ない生活風景の人間模様を描いた作品】


著者には珍しい、ドラマ性の高い作品。
日常的な生活風景をフィクションの世界で淡々と描き、それを読者に読ませることは、非常に難しいと思う。
しかし、ちょっとした波紋を立たせ、読者を引き付ける構成は素晴らしい。
家族にとって、父親が職を失うという設定は、大事件であるし、リアリティがある。
ラストは、ご都合主義とはいえハッピー・エンドで終わってよかった。(笑)





・「危険な署名」

サラリーマンの江本は、駅前で反戦を訴える署名活動を行っている少女に出会う。
少女の真剣さにうたれた江本は、署名にサインをする。
ところがその後、江本は誰かに見張られていることに気づく。
さらに、同じ署名にサインをした近隣の男性が、一家心中で亡くなった事を知る。。。



【赤川流のノワール文学】


黒いです。。。真っ黒です。
こういう闇社会を描いた作品を読むと、著者は本当に引き出しの多い作家だと改めて認識します。
暗黒小説というのは、文章や表現も含めて複雑で難しいものが多いのですが、著者の場合、ライト感覚で読めるので、この手の小説が苦手なわたくしとしては楽しめました。











(  ゚_ゝ゚) { 『退屈で平凡な日常と背中合わせの恐怖。』 日常は小説よりも酷なり。








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