真夜中のタランテラ (ミステリ・フロンティア)真夜中のタランテラ (ミステリ・フロンティア)
(2008/10)
麻見 和史

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::: ミステリ ::: ★★☆☆☆


麻見和史作品デビューです。
著者のデビュー作である 『ヴェサリウスの柩』 を先に読みたかったのですが、なかなか読む機会がなかった。
そうこうしているうちに、姉が本書を購入してきたので、先に2作目から読むことになりました。


本書は、アンデルセンの童話 『赤い靴』 になぞらえたような見立て殺人が発生する。
片足が義足の女性ダンサーが、何者かによって健常だった足を切断され、殺害されるというショッキングな設定。
『赤い靴』 の物語自体が不可解で、不気味で謎が多い話だけに、ミステリの題材にはおあつらえ向きではある。
そこへ持ってきて、義肢装具士を主人公にし、義肢の薀蓄、義肢ユーザーの生活や社会環境まで掘り下げている。
謎解き中心というよりは、義肢に携わる登場人物達の生活や、背景を丹念に描いているので、ミステリを読んでいるというよりは、ちょっとしたノンフィクションか、文芸小説を読んでいる気分になる。
純粋にパズル要素の強いミステリを望んでいる人には、義肢の薀蓄はいささか重たいかもしれない。
おそらく、義足ユーザーの足を切断するという設定に対する、障害者への配慮もあっての事だと推測します。

童話の見立てや、義肢装具士という職業をミステリに取り入れた発想は良かったと思う。
ただ、事件の性質上、エンターテインメント性が薄れたことで、ミステリとしての面白さは半減。
それと、シリーズ化も難しいだろうし、キャラクターの魅力が欠けている点も気になる。













※ これ以降ネタバレしてます。







































本書の主人公は、義肢装具士の香坂徹であり、彼が事件解決に奔走するのかと思いきや、実際の探偵役は、再生医療の研究者である鴇圭一郎だったりする。
香坂がワトソン役で、情報収集が担当でした。(笑)
肝心の鴇は、香坂が集めてきた情報を分析し、そここに散らばった伏線を回収して、事件解決に導いていく安楽椅子探偵タイプ。
シリーズ化しそうな設定ではあるが、いまいちキャラクター性も、再生医療研究者と義肢装具士が殺人事件に介入するだけの動機も薄弱である。


内容に関しては、本格ミステリとしての要素はしっかり抑えてある佳作だと思う。
見立て殺人や、伏線、ミスリードもセオリー通り。
プラスアルファの薀蓄も良かったと思う。
足りないのは、やはりエンターテインメント性だろうか。
読者を引き込む力、見せ方がよくないのと、キャラクターの魅力の無さ。
睡眠時間を削ってでも読みたいという思いに、最後までさせてくれなかった。

フーダニットに関しては、整形外科医の宗像が犯人であろうと、誰もが思うほどあっけない犯人像。(笑)
もちろん、被害者である桐生志摩子が共犯だったという展開までは読めませんでしたが。。。
なんにせよ、この2人の事件関与に対する動機が理解し難い。
宗像は、彼の恋人が自殺した原因は、香坂が勤める仲井義肢製作所の社長にあったとして積年の恨みを抱いていた。
桐生は、義足の不具合で仲井社長と揉めていたことと、ダンサーとしての人生を美しいまま終わらせたいと願っていた。
2人の思惑が一致し、桐生は青酸毒を服用し自殺。
その後、宗像は桐生の遺体を工作し、殺人事件としてその疑いが仲井社長に向くように仕組んだわけです。

宗像の動機は、いわゆる逆恨みってやつですし、桐生に関しては、ハンディキャップを持つ人々の自立支援活動に力を注いでいた、というめちゃめちゃプラス思考を持つ人物像という設定であり、読者はどうあがいても犯人当ても、殺害動機もわかるわけがない。
宗像の逆恨みの原因は、仲井が宗像の恋人に向って発せられた言葉にあるが、常識的に考えて、仲井のような発言をするのが一般的と思われる。
それを自己否定されたと自殺されたら、やられた方はたまったもんじゃない。
誰もが精神科医でもなけりゃ、テレパシー能力を持っているわけでもないのだから、仲井にそれを求めても無理というもの。
それをまた逆恨みする人間がいるんだから、仲井はふんだりけったりだ。(笑)
桐生にしても、ハンデを持ちながらも、精力的にあらゆる方面で活動していたし、夫もいて、経済的にも恵まれている。
それで一体何が不満なのか? 美しいままで死にたい? 全くもって理解できません。
宗像の恋人にしても、桐生にしても、自殺の動機が “他人に理解され難い理由” である。
自殺するなら、まずそこんとこを本人が理解してからやってくれと思う。
でないと、関わった人が大迷惑します。(´ー`)┌
こんなちゃらんぽらんな動機なせいか、最後の最後まで論理的な解決とはいかず、犯人の告白文という形で謎が解明される。
これじゃ、2時間サスペンスの崖の上での犯人の告白と大差が無い。
やはり、薀蓄にページを割きすぎているせいでバランスが悪い。










(  ゚_ゝ゚) { 『与えられた条件が不利だったとしても、はねのけて頑張っていくべきなんだね。そうするうちに自分だけの生き方が見えてくる。』 はねのけられないくらい条件が不利なんですが。。。(笑)








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