::: ミステリ ::: ★★★☆☆
水乃サトルシリーズ通算第6弾。
著者の作品はすべて、二階堂蘭子シリーズだけだと思っていたのですが、いろいろあったみたいですね。
水乃サトルシリーズは初読にして、最新刊を読んでしまいました。
続き物でしたが、特に問題なく読めたので、読者には親切な構成で助かりました。
二階堂蘭子シリーズは、舞台設定が確か戦後まもない時代(だったと思う。。。)で、江戸川乱歩テイストの作風であり、地の文などでの表現方法も多く、比較的読みづらいという印象があったが、本書の水乃サトルシリーズは、とても読みやすかった。
代表作という点では、二階堂蘭子シリーズに軍配が上がるのかもしれないが、ミステリを読み慣れてない人には、水乃サトルシリーズをまずお薦めしたいですね。
本書では、横溝ミステリの代表作 『犬神家の一族』 のような世界観と設定が特徴的であり、おそらくパスティーシュ(オマージュ)としての意味あいがある作品なのだと思う。
憎悪が激しく、複雑に絡み合う登場人物達の相関関係や、相続を巡る争いの中で、連続殺人が勃発する。
謎の毒殺事件に端を発し、密室殺人といった不可能犯罪と、本格ミステリ好きにはたまらないシチュエーションである。
謎解きの面白さも、シンプルで人間の盲点を突くようなトリックであり、解明には洞察力が必要となる。
昨今の流行でもある、複雑で科学的要素が多い理系物理トリックと比べると、謎解きには誰もが納得出来るであろうと思えるし、特に、ミステリ初心者の為の導入本としても評価が高いです。
構成として個人的に良かったのが、連続殺人事件のきっかけともなった過去の殺人事件を、上鬼頭家の人物紹介を兼ねた歴史として、物語の始めにまとめて説明している点。
物語の本筋の途中で挟みながら語られるよりは、最初に一気に説明してくれた方がわかりやすいし、頭の中で整理しやすかった。
難を言えば、探偵役である水乃サトルのキャラクターがいまひとつ。。。
いわゆるオタクちゃんなんですけど、薀蓄るわけでもないし、笑いがとれるわけでもない。
美形らしいが、外見にしても、内面にしても造形がしっかり出来ていない。
もしかしたら、シリーズを通して読んでいないとわかりづらいのかもしれませんが。
※ これ以降ネタバレしてます。横溝ミステリ 『犬神家の一族』 のパスティーシュ(オマージュ)であると思える作品ですが、横溝正史が描く、ドロドロとした人間関係のようには描けていないところが残念。
上鬼頭加世子を筆頭に、美佳子、佐江子、志女子といった女達が憎悪、牽制し合うのだが生々しくない。
甘っちょろいヒステリーっぽくて、殺人まで犯す動機としての必然性を感じない。
その動機の薄さ加減が、連続殺人の主犯が加世子であるという答えに到達できなかったのだと思う。
物理的に不可能(加世子死亡後に起きる連続殺人)であったという先入観も眼を曇らせたわけですけど。。。
フーダニットに於いては、納得出来かねるのだが、密室トリックは非常に良かったと思う。
特に、過去に起きた殺人事件の犯人が、いかにして人の目を掻い潜って脱出したか、これを現代で起きた密室殺人事件の伏線にしつつ、読者に対する謎としても提示出来たことが、構成としても優れていると思う。
後に起きる殺人事件の伏線であるわけだから、読者の大半がその謎を看破することが可能(大前提)である。
第一の謎(過去の犯人脱出の謎)がわからなかったとしても、第三、第四の謎(密室殺人の謎)を見破ることが難しいため、伏線としての役割は依然として保たれるわけです。
伏線自体を謎の1つにしてしまう一石二鳥な発想と構成は素晴らしい。
第三の密室殺人(上鬼頭静子殺害事件)、このトリックは、伏線である第一の謎を踏まえれば解けるはずなのだが、タンス(引き出しのある)の構造を知っていないとどうにもならない。(笑)
“タンスには底板が無い” という構造を知っていれば、引き出しを全部半分ほど引き出し、タンスの底から入り込み、後ろに開いたスペースに隠れることが可能であると推理出来るのだ。
普通の人は、タンスに底板があるとかないとか考えることもないわけで、さすがミステリ作家の着眼点は凡人とは違う。
第三の密室殺人までは良かったのだが、第四の密室殺人(周爺の殺人を装った自殺)は、主犯(計画犯)である加世子と、第三の密室殺人の実行犯・周爺の性格や、犯行動機を明確に理解してないと、解明は絶望的である。
同様に、第二の謎(国也毒殺事件)に於いても、実行犯である加世子の殺害動機は、性格的なものに起因している。
本来であれば、物語の中で、それぞれの登場人物の描写から把握しないといけないのだが、最初に書いた通り、人物造形を理解するだけの描写が不足している。
ミステリとしては、前半は論理性も高く納得いく展開だったが、後半は逆にご都合主義に走ってしまった感じです。
( ゚_ゝ゚) { 『権利と義務は、両方とも果たさなければなりません・・・』 権利ばっか主張する上司の多いこと。。。
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