::: サスペンス・ホラー ::: ★☆☆☆☆
2006年に刊行された、赤川作品の中では新しい作品。
これまで、改版や新装版を機会に80年代、90年代の作品を読んできたが、2000年になってからの作品は読んだことがなかった。
文庫化にともない図書館でお借りしました。
著者はよく、作品に幽霊が登場するファンタジーを書きますが、本書では、ホラーというよりは、現代的な怪談。
主人公は、桂木財閥のお嬢さま・令子。
16歳の元気な女子高生という赤川作品ではお馴染みのキャラクターです。
彼女には幽霊と会話が出来るという不思議な能力を持っていた。
その彼女を取り巻く周辺で、次々に謎の死を遂げていく人達。
彼らは幽霊となって令子の前に現れる。
やがて、彼らの導きにより、令子は自分の出生の秘密を知ることとなる。。。
普通にミステリが読みたいなと思っていたのですが、予想に反して、サスペンス・ホラーな内容。
90年代に多い、クォリティの低い作品と変わり映えが無く、正直、がっかりした。
名作が多い著者であるこを考慮して、あえて評価は厳しく星1つ。
全体的に、漠然としていて、何を言いたいのかよくわからない。
ただの怪談話で意味はないと言われればそれまでですが。。。(´ー`)┌
欲望渦巻く大人社会の醜悪さを、現代的な恐怖(怪談)として表現して、その中で、傷つきながら生きていく、少女の成長物語が描きたかったのだろうと想像するが、手法が群像劇であったことで、ごちゃごちゃとしたストーリー展開になり、判然としない作品になったのかなと思う。
たくさんの登場人物達の思惑と、欲望が交差して展開していく構成は面白いのだが、個々のエピソードがかなり強引で、荒唐無稽な設定と、現実感が全くない。
そのせいで、幽霊が出てくるという設定に驚きを感じられない。
となると、幽霊を登場させる必然性も疑問。
普通に、昼メロみたいなドロドロした愛憎物語でも良かった気がする。(笑)
それじゃ、赤川次郎らしくないってことなんでしょうが。。。
※ これ以降ネタバレしてます。好みの問題でもあるのだが、個人的は評価は全くもって良くない。
だが、評価すべき点もいくつかある。
まず、過去の因縁が元で派生する、 “呪い” という怪談には無くてはならないポイントはしっかり押さえている点。
『四谷怪談』 のような日本的な怪談の要素を現代的にアレンジしている。
そして、群像劇にしたことで、本来であれば、主人公・令子が知りえるはずの無い事実を、殺された死者が語るという設定にすることで、自然と主人公の視点で物語を集約できた。
ドロドロした欲望まみれの愛憎劇と、死者が登場する恐怖劇の一石二鳥な構成は、さすが赤川次郎。
しかし、愛憎劇の中で、成長していく少女を描くという一石三鳥を狙ったのがマイナスとなった。
というのも、令子の両親、祖父が揃いも揃って不倫に走るという非現実的な設定だからだ。
戦国時代のような家督争いが、彼らを不道徳な行為に走らせたわけだが、家族が皆嘘をつきあう不倫家庭の中にあって、少女がたった1人で、どうやって成長する要素を見出せるだろうか。。。
嫌悪しながらも、やがてそんな生活に慣れてしまうのが関の山だと思うのだが。
慣れることと、成長することは違う。
荒んだ家庭環境で、令子が成長するには、純粋に愛情しかないように思う。
しかし、物語では、恋人になるはずであった少年に裏切られ、逆に親友をも傷つけてしまう。
弟や、母親、唯一信頼できた祖母も失ってしまった令子は、死の世界に足を踏み入れてもおかしくないのだが、何故か、死者の誘惑に打ち勝つ。
打ち勝つことができたのは、彼女が成長していた証と考えられるが、そうなる要素が何一つないのが疑問でならない。
どんなに苦しい経験をしても、生きていたいと思わせる何かが無い。
バンバン人が死ぬ割には、著者の死生観も見えてこない。
あれこれと詰め込み過ぎたのが良くなかった。
少女の成長物語は余計ですが、赤川流現代的な怪談としては良く練られた作品なのではないでしょうか。
ラストでは、ハリウッドのホラー映画さながらに、令子の祖母の生まれ変わりのような赤ん坊が、祖父と愛人の子供として誕生する。
過去の因縁は、途切れることなく未来へと続いていくのだという余韻を残しすような終わり方が、なんともゾッとして怪談らしい。
本書は、単行でも刊行されてますが、購入する際は、是非、文庫版をお薦めします。
装丁・デザインがとても良いです。
今にも幽霊が出そうな、鬱蒼とした暗い小道に、制服姿の現代的な女子高生が背を向けている、水彩画のようなタッチのイラストです。
雰囲気は満点です。
( ゚_ゝ゚) { 『あなたが生まれてきたのは、間違いなのよ。』 はっきり物事を言う幽霊である。
テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌