Bk.082 演じられた白い夜

10:30 Fri 05.09
演じられた白い夜 (Jノベル・コレクション)演じられた白い夜 (Jノベル・コレクション)
(2008/08/20)
近藤 史恵

商品詳細を見る


::: サスペンス・ミステリ ::: ★☆☆☆☆


近藤作品デビューです。
著者の作品は、2007年に刊行された 『サクリファイス』(新潮社) が話題となり、2008年の大薮春彦賞と、本屋大賞第2位を受賞しており、今後に期待がもてる注目株の作家のようです。
デビューは1993年と、結構、スキルがある割には遅咲きという感じですね。
現代ミステリを始め、歌舞伎や江戸を舞台にした時代ミステリや、ゲームソフトのノベルズ版を書いたとりと、とにかく作風が幅広い。
内容は別としても、書けるという能力は素晴らしいと思う。

本書は、1998年(実業之日本社)に刊行された作品。
文庫化にも至らず、10年お蔵入りになっていたが、2008年にJノベル・コレクションとして新装・再刊された。
今回、たまたま本書のあらすじを読んで面白そうだったので、読んでみました。


物語は、雪深い山荘に、舞台演劇のリハーサルのために役者やスタッフが集められる。
主宰者である神内匠は、演出、脚本を手掛けており、新作として本格推理劇を用意していた。
ところが、その脚本通りに、連続殺人が発生する。。。

いわゆる吹雪の山荘ものです。
本格ミステリの様式を踏まえつつ、舞台の脚本になぞらえて殺人事件が起きるという新本格っぽい設定。
期待も高まるところですが、評価は全くもってよろしくない。
例えていうなら、食品サンプルみたいなミステリでした。
飲食店の店頭にある、ガラスケースに陳列されている料理を模型にした例のやつですね。
見かけは色艶良くて、本物より本物らしいが、素材は蝋や樹脂で出来ている偽者。
それと同じように、本書も本格ミステリとしての体裁は整っているのだが、中身はドロドロとした女の執念を感じる恋愛小説という感じです。
著者の作品は始めて読んだので、どういった作風の作家なのか知らず、読後、調べてみたところ、人間の心の奥底に淀む心理を描くのが上手らしいです。
それで、ドロドロというか、ナマナマしい演出になってるんですね。(´ー`)┌

個人的にはこの手の作品は好みでない。
同じ恋愛を扱ったミステリだったら、乾くるみの 『イニシエーション・ラブ』 の方が楽しめる。
恋愛小説の中でミステリを書くか、ミステリの中で恋愛を描くのかでは、面白さが大きく異なる。
個人的には、恋愛小説は大嫌いなので、読みたくもないところだが、 『イニシエーション・ラブ』 の場合は前者であり、予想外の驚きにインパクトもあり、構成も優れていたので評価できる。
しかし、本書の場合、ミステリ独特のどんでん返しとか、意表を突くような驚きがない。
さらに、フーダニットにしても、ハウダニットにしても、読者を納得させるだけの論理性がない。
本格ミステリとしては論外だし、ミステリとして成立しているかどうかも疑問。
かといって、サスペンス性ですら欠如しているのがもっと酷い。
身動きが出来ない状況で、連続殺人が起きているのに、緊迫感も緊張感も感じられない。
いっそのこと、2時間サスペンスとして、テレビドラマでイジって貰ったほうが、なんぼかマシになるのではと思うほど。
小説としても、ノベルス風だけど単行本という形で売るにしては、中身がスッカスカなのも気になる。
活字として読むだけの旨味がない。
簡素で味気ない、ミステリゲームをやっているような感覚に近い。
人間心理を描く作風が十八番のようですが、こんなレベルで、人間が描けているとは到底言えない。
殺人が起ころうと、誰が死のうと、無機質で無感動で、希薄な登場人物達なのだが、こと恋愛モードに入ると、感情大爆発で、本能剥き出しになるところが、動物的でなんとも不快。
人間の心理どうのって言う前に、ヒトの恋愛をまず描いて欲しいところだ。

著者にミステリ作家としての素養があるのかからして疑問に思えてきた。
まだ、たったの1冊しか読んでいないので何とも言えないが、期待していた作品で裏切られると、他の作品を読んでみたいという気が失せるのも確か。。。



ダメ出しは、作家だけでなく出版社にもある。
本書の版型がとても気に入らない。
単行よりは小さいが、ノベルスよりもデカいという中途半端な大きさ。
わたくしは、読書時には必ずブックカバーを付けるのですが、単行用、ノベルス用のどっちのブックカバーにも合わなくて困った。
文庫だと単価が安いから、出版社は単行で売りたいところだけど、本が売れない昨今、ソフトカバーでコストを下げて、けど大きさだけ確保して、少しでも高く売ろうという魂胆なのだろう。
セコい商売だ。
中身で勝負できないところが哀れ。
他の出版社もやってますけど、実業之日本社だけだよ、こんなひどい中途半端な大きさなのは。。。















※ これ以降ネタバレしてます。








































バンバン人が死んで、論理的な解決もなく、犯人が自供するという呆気に取られる顛末。
脚本家が好きだったと、唐突に告白されてもそれがどうした?
さらに、脚本家、もしくはその妻に殺意が向けられるなら納得できるが、他の役者は何故殺す必要性が?
頭のおかしいストーカー女に理性も、論理も通用しないんでしょうね。。。(´ー`)┌
納得できないのが、自白以外の証拠がないし、犯人が脚本家に行為を寄せていたという伏線もない。
いきなり、何の根拠も無いのに、犯人はあなたですねとか言われても納得しようがない。
それで自白する犯人の気も知れない。
何がしたいのか全く持って理解に苦しむ作品でした。。。











(  ゚_ゝ゚) { 『舞台が整わないうちに事件は起きていた。』 伏線もなしに反則じゃないか。。。








テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

<< Bk.084 幽霊の径 | home | Bk.081 復讐はワイングラスに浮かぶ >>

comment

管理者にだけ表示を許可する

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 BLOG TOP