Bk.030 人間の証明

15:43 Thu 14.10
人間の証明 人間の証明
森村 誠一 (2004/05)
角川書店
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::: ミステリ ::: ★★★★☆


母さん、ぼくのあの帽子どうしたでせうね?
ええ、夏碓氷から霧積へいくみちで、渓谷へ落としたあの麦藁帽子ですよ。

母さん、あれは好きな帽子でしたよ。
ぼくはあのときずいぶんくやしかった。
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。

母さん、あのとき向こふから若い薬売りが来ましたっけね。
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとしてずいぶん骨折ってくれましたっけね。
だけどたうたうだめだった。
なにしろ深い谷で、それに草が背丈ぐらい伸びていたんですもの。

母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう?
そのとき旁で咲いていた車百合の花は、もう枯れちゃったでせうね、
そして、秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかもしれませんよ。

母さん、そしてきっといまごろは今晩あたりは、あの谷間に、
静かに霧が降りつもっているでせう。
昔、つやつや光ったあの伊太利麦の帽子と
その裏にぼくが書いたY・Sといふ頭文字を埋めるやうに、静かに寂しく

【 麦藁帽子 】 西条八十




西条八十(やそ)の有名な詞をモチーフに執筆された作品。
映画はもちろん、ドラマ化もされた。
子供の頃、父が小説を持っていてそれを読んだことがありましたが、如何せん、ガキだったのでほとんど理解できなかった。

最近、角川書店から再版されたので読んでみました。
その前に、竹之内豊主演のドラマも見てたのですが、ドラマティックな構成はドラマの方が面白かったですね。
原作には無い、エピソードやキャラクターも違和感なく盛り込まれてました。
しかし物語の舞台背景の描写はさすがに、森村さんのがうまかった。
戦後の日本やアメリカの世相がこと細かく書かれており、戦後生まれのわたくしにもかなりリアルに伝わりました。

内容的には、本格ではないのですが、 『ストーハ』、『キスミー』 など謎のキーワードを巧みに利用し、トリックを重視する現在の推理小説とは異なり、人間の情感に重きをおいたところが新鮮にみえた。
また、黒人青年の殺人事件と平行して、女性の失踪事件が起こります。
その二つの事件と、刑事・棟居の暗い過去が物語を追うごとに徐々に近づいていき、一人の人間(犯人)にリンクします。
物的証拠もなく、被疑者が強固に犯罪を否定するなか、棟居刑事が最後の手段として、目の前に一篇の詞をつきだし揺さぶりをかける。


『人間の証明』 というタイトルが意味しているものは何なのか?
それは、人間が人間たることを証明するための 良心 なのではないでしょうか。









(  ゚_ゝ゚) { 『肉親や友だちは、編隊を組んで飛んでいる飛行機のような気がする。』 棟居刑事の寂しい心模様ですな。。。








テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

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