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名もなき毒 (カッパ・ノベルス)名もなき毒 (カッパ・ノベルス)
(2009/05/21)
宮部みゆき

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名もなき毒名もなき毒
(2006/08)
宮部 みゆき

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::: ミステリ ::: ★★☆☆☆


数年ぶりに読んだ、宮部みゆきの小説。
『誰か』 の続編で、杉村三郎シリーズだそうです。
『誰か』 を読んでいなくても支障はなかったです。
昔は著者の作品を結構読んでいたんですが、時代小説やファンタジーに路線変更してきた時点で読まなくなってしまった。
その当時、彼女はバリバリのミステリ作家というか、推理小説家という印象を持っていたのですが、本格ミステリの楽しさを知ってからは、著者の作品は本格ミステリとは違うことに気づいた。
俗に言う “社会派” ミステリというカテゴリーなるのだろう。
なので、映画化までされた 『模倣犯』 や、 『理由』 も興味が無かったのですが、本作のタイトルが妙に気になって読んでみました。


感想は。。。やっぱなという感じです。
何が、やっぱなのかというと、本格好きなわたくしには面白味の無い作品だったということですかね。
基本的に読書が娯楽というスタンスで読むわたくしにとっては、社会派は重過ぎた。
確かに、とっても考えさせられる内容であるし、勉強になる部分は多いのですが、山も谷もない500ページ近い長編を読まされるのは正直ツラい。
何にそんなにページを割いたのかというと、多人数の登場人物の造詣にあるのだが、キレイごとをのたまう、まさに物語の中だけの人物でしかないのだ。
フィクションなんだからそれは有りなんですよ、通常は。
だけど、著者の作品の場合、その舞台設定があまりにもリアリティがありすぎるのですよ。
舞台背景がフィクションとは思えないほど現実的なのに、人物描写だとか、彼らを取り巻く社会的環境が嘘っぱちに過ぎないので、違和感を感じるし、読んでいてイライラするのだ。


著者の昔の作品はとても好きなのだが、いろんなジャンルの小説を節操無く書くようになってから好きになれないでいる。
それだけ才能があるということはよくわかるし、直木賞を受賞するだけあって読者層の幅も広い。
でも、それらは結果論ではなく、全てそうなるべくして計算されて書かれた作品でしかない。
プロの作家なんだから、多くの作品が売れることは1つの指標なんだろうけど、あまりにも欲深いイメージがつきまとうし、信念を感じられない。
本作を読んだことでまた宮部離れが続くだろうなぁ。。。












※ これ以降ネタバレしてます。






































こういう作品は非常に困る。
何が困るかっていうと、カテゴリーを何にするかで悩む。
広義な意味では、ミステリなのだが、ミステリと言うほど犯人探しや、トリックを重視していない。
それどころかはっきり言って、2時間サスペンスよりも内容的に悪い。
サスペンスでも、アクションでも、エンターテインメントでもない。
あえて言うなら、 “社会派シリアスドラマ” としか言いようが無い。
文芸作品に近いのかなとも思うが、それだけの人物描写に長けているとも思えない。。。(´ー`)┌


正直、読み始めて失敗したと思いました。
内容的には決して悪いものではないのですが、個人的な趣向として本格ミステリが好きなので、そうでなさそうと薄々気づき始めてからが読むのがツラかったです。
とにかく嫌な本でした。。。
始めから終わりまで、陰陰滅滅とした気分で読むなんて、楽しい読書が拷問にすら感じる。
登場人物の誰もが怪しげで、信頼出来ないだけでなく、この先どういう展開になるのかも宙ぶらりんにされたまま、延々と読まされる苦痛。。。(笑)
下りが見えないジェットコースターをグングン上っている感じです。
そういう書き方を故意にしているんだろうことはわかるのだが、焦らし方が執拗過ぎる。
著者の性格の悪さを垣間見た気がした。(´ー`)┌

本作でミステリについて語っても意味が無い。
名ばかりの添え物でしかないのだから。
特筆することはない。
本作で語るとすれば、 “毒” をテーマにしたことについて。
毒をテーマにし、それを様々な意味で物語を展開していく構成は非常に巧いと思いました。
青酸カリで殺害された事件、土壌汚染やシックハウス症候群といった人間を含めた環境を破壊する毒、そして、その全てが集約された根本的な毒として “人間” があげられている。

何故、原田いずみというストーカー的な役割を持つ人物を登場させているのか、当初は疑問だった。
しかし、後に人間の毒の部分を誰にも最もわかりやすく伝えられる存在であったことに気づかされる。
“よくいるよ、ああいう人” という症例(笑)の1つだった。
物語ではかなり脚色しているが、現実に、騒音おばさんだとか、ゴミ屋敷といった、人の迷惑を屁とも思わないどころか、攻撃的でイカれた人間が多い昨今なので、有り得ないだろうと笑えないどころか、背筋を寒くさせる。
著者は、そういった社会的状況や、環境の変化にとても敏感で、鋭敏な神経を持っている作家だと思う。
フィクションでなく、ノンフィクション書いた方がいいんじゃないかと思うほどだ。

ただ、わたくしが疑問視したいのは、舞台設定は完璧なのに、それに乗っかる人物描写がいまひとつな気がしてならない。
とくに、杉村一家というか、夫婦がどうしても感情移入はできない。
彼らが裕福で、これといった苦労もなく幸福だからというやっかみもありますが、それを自覚できない人間が、そうでない底辺で必死に生きてる人間に説教垂れる姿に説得力を感じないから。
人を傷つけることはいけないことだなんて、誰でもどんな立場の人間でも理解している。
理解しているが、そうせずにはいられない状況になったら、“普通の人” だって他人を傷つけるかもしれない。
そこがわからない人に、どうして? とか、 何故? と問われても、答えようがない。
そんな杉村夫婦だからこそ、原田というストーカーに襲われるんですがね。。。(´ー`)┌

物語ではあまりにも暗く、重い内容だけに、 “毒” を浄化する役割として、原田いずみの両親や、毒殺犯人に同情的な運送会社の社長を登場させていますが、それはちょっと作り過ぎに思えて、妙に興醒めしてしまうのだ。
確かに “善人” っているとは思うのですよ。
いるけど、現代ではあまりにもマッチしなさすぎです。
今の世の中、犯罪者はどこまでいっても犯罪者でしかなく、彼らが救われることは稀である。
延々、人間の毒を描きながら、最期の最期でまたもその毒で落としたら、さすがに作家としてはおまんまの食い上げだと思ったのだろう。
妙に甘ちゃんなラストで、煮え切らない感じでした。
ただ、このラストだと人間の毒は、必ず浄化できるものなんだという意識を読者に植え付けてしまった気がしてならない。
わたくしに言わせれば、それこそファンタジーな世界だ。
どんなに善行を積んだ人間でも、幸福な人生や死を迎えられないこともある。
とことんリアリティーを追求しながらも、最期の最期は夢物語で終わらせる著者の感性にはついていけない。
より残酷な気がしてならない。


人間の毒は、その人間が死なない限り毒を吐き続け、人間社会は元より、自然環境まで汚染しつくすでしょう。
毒を持たない人間はこの世には1人としていないし、皆その影響を受け続ける。
毒の蔓延した社会で生まれたキレイな赤ちゃんも、いつしか自らが毒を吐きながら生き続ける。
その毒を唯一解毒できるのは、同じ人間だけというところが皮肉だが、人間が吐き出す毒には名前がないが、解毒剤には名前があるということは救いでもある。








(  ゚_ゝ゚) { 『あらゆる場所に「毒」は潜む』 常に心に解毒剤を!







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装幀は緒方修一。装画は杉田比呂美。 北海道新聞、中日新聞、東京新聞、西日本新聞、河北新報、中國新聞に 実質約9ヵ月連載(時期違いあ... 粋な提案【2009/04/27 03:17】
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