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すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER (講談社文庫)
(1998/12)
森 博嗣

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すべてがFになる (講談社ノベルス)すべてがFになる (講談社ノベルス)
(1996/04)
森 博嗣

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::: ミステリ ::: ★★★☆☆


整理を兼ねての再読です。
1998年発行された文庫版であり、初版を持っているので、かれこれ約10年が経過したことになる。


第1回メフィスト賞(1996年)受賞作品にして、デビュー作。
綾辻行人を始めとする本格派ミステリ作家らが火付け役となった、 “新本格” ブームが下火となっていた90年代後半に、京極夏彦を筆頭に、超・個性的な作風で再び本格ミステリに光を当てるきっかけとなった作品であり、その作家。

著者は作品そのものよりも、ミステリ界に及ぼしたニ次的影響の方が大きいのではと思う。
個人的には、バリバリの本格派とは言い難く、根底は本格でありながらも、その本流から分かれた支流的作品、作風、作家なのだと思う。
ただ、京極夏彦も含め、一方向にしか流れていなかった川筋から、様々な支流を作るきっかけとなった、ミステリ界の幅を広げる(内容の良し悪しは別として)分岐点となった事は確か。
それは、メフィスト賞という、 “究極のエンターテインメント” を追求する文学賞を生み、そこから個性的な作品、作家が続々と登場することになる。


森博嗣の作品は、 “理系ミステリ” と呼ばれる。
著者自身が大学の工学部助教授であり、作品に登場してくる犀川(S&Mシリーズの探偵役)も同じ設定。
さらに舞台が大学や、研究所といった理系環境での作品が多いためそう称される。
作品事体はさぞや論理的に事件が解決されているのだろうと思いきや、実はそうでもない。
また、殺人事件における犯人の動機や、登場人物の人間描写が、やっぱ理系だと思うほど薄弱。
ミステリには論理的思考が必要であり、理系人間にはおあつらえ向きなのだが、如何せん文章力や表現力がお粗末なので、何かの報告書か、学会のレポートを読んでいるよう。
登場人物においても魅力に乏しい。
衝撃的な内容だけに感化され、著者の作品を “本格” ミステリであると思い込んでいる若手作家が、著者の作風を真似た作品(しかも劣化コピー)を世に送り出すという憂いべき状況を作り出している。
良くも悪くもミステリ界に影響を与えた微妙なお人です。(´ー`)┌


本作の評価ですが、内容だけを考えると星2つというところであり、今では本作のような奇抜な作風はゴロゴロしてますが、当時の状況を考えると、ミステリ界に喝を入れるような衝撃的な作品ではあった。
そんな著者の功績も考えて星3つとなりました。













※ これ以降ネタバレしてます。





































森博嗣の作品を集めだしたきっかけは、ノベルズ版のハイセンスな装丁にあった。
いわゆるジャケ買いというやつです。
一応ミステリーでもあるし、堅苦しい文章でもなく、専門的な分野を活かしてミステリにする切り口がとても新鮮に映った。
当時、わたくし自身若かった事もあり、内容的にも嫌悪感もなくすんなり受け入れられた。
しかし、著者の作風を真似た作家の作品や、その作家自身の人間性やプロとしての無知さ(古典作品を読まないなど)を知る度に、ミステリ界での救世主(笑)でもあるのですが、粗悪な作家、作品を生み出すきっかけともなった著者に複雑な思いだったりする。
そんな若手作家に感化されたのかわかりませんが、著者の作風もますますもって拍車がかかっていくのも微妙な気持ちだったのですよ。
S&Mシリーズを5冊まで読んで、それ以降読むのをやめてしまった。
しばらくはその後発行された新シリーズも買ってたんですが、それすらもやめてしまった。
そんなわけで、いつまでも場所を取る本を読まないわけにもいかず、所持している文庫を少しづつ読んで、現在のわたくしの感性に合わないようなら処分も検討している次第です。


約10年ぶりに再読した 『すべてがFになる』 ですが、タイトルや、装丁も含めて斬新な作品だったと思う。
内容に関していえば、衝撃的な設定や描写に惑わされた感が強い。
登場人物達が、専門知識を有しているはずの理系人間なのに、誰一人としてビデオのトリックや、“すべてがFになる” というメッセージに気づかないのは、どう考えても理解し難いのだ。
それ以前に、殺害自体の実行が限りなく不可能としか言えないし、理系作家のくせにむちゃくちゃすんなぁとしか思えない。
“机上の空論” とか、 “砂上の楼閣” を絵に描いたような作品。
99%不可能でも、1%可能ならアリでしょ? みたいなノリにはついていけない。
まぁ、いいですけどね、どうせフィクションですから。。。
けど、それでは読者を満足させるには至らない、自己満足の世界の王様でしかないですけどね。

その他にも、第一の殺人事件に関しては非常に手が込んでいるにも関わらず、第二、第三の事件はひどくぞんざいな殺し方だったりする。
殺害の動機にしたって、 “天才” という免罪符を振りかざすだけで、説得力もあったもんじゃない。
天才だと語れば何でもあり、キ印が人を殺すのに動機なんか無くてもいい、論理的で合理的な解決が成せれば動機はいらない、と聞こえるのです。
第二、第三の殺人事件がいい加減なのも、ストーリー上トリックを考える必要性がないからであり、合理性を追求したくなる理系人間の考えそうなことです。
その為、作品全体としてバランスがかなり悪い。
文系人間の作品だったら、そのバランスを取るために、あえて第二、第三の事件にも意味を持たせようと考えるところだ。

さらに、登場人物に関しても魅力に欠ける。
しかも、コーラが好きだとか、あいさつをしない人だとか、小学生の自己紹介レベルの定義付けだったりする。
それも理系っぽくて笑ってしまう。。。(´ー`)┌
漫画やアニメのような誰にでもわかるしっかりしたマニアックなキャラクター設定の押し付けはいらん。



いまでこそ、ライトノベルでこの手の作風(レベル的にも)は定着してますが、本作もその枠組みに入れるべき作品だと思う。
一般的な本格ミステリ作品というよりは、ティーン向けのブランドですね。
森博嗣のデビュー後、その作風を真似た作家がミステリーというジャンルに限らず、続々と登場してくるわけですが、ミステリというカテゴリーにおいては、その作風はかなり受入れ難いものが多い。
個人的には、パズル的思考能力を必要とするトリックは許せても、キャラクターや内容全てがゲーム感覚的なミステリは好きではない。
ギリギリ許容範囲なのが、森博嗣までということですね。









(  ゚_ゝ゚) { 『現実とは何か、と考える瞬間だけ、人間の思考に現れる幻想だ』 単なる逃避か、それとも本作に対する自己弁護なのか。。。








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