::: エッセイ・対談集 ::: ★★☆☆☆
綾辻行人と牧野修によるホラー映画に関する対談エッセイ集。
70年代から現在に至る、A級からC級までのホラー映画を挙げつらね、独自の解説というか、ナゴミどころを紹介している。
ホラー映画でほっこりなごめるかどうかははなはだ疑問ですが。。。(笑)
わたくしはホラー映画はそんなに好きではない。
ホラーの代名詞的な、スプラッターとかスラッシャーとか、グロいのとか、虫がたくさんとか、そんなのは苦手です。
ただし、宗教が絡んでいるオカルトや、謎とき要素のあるミステリよりのホラーは好き。
綾辻先生といえば、やはり本格ミステリってことで、謎ときミステリ・ホラーで何か面白い作品はないか物色してみました。(笑)
かなりコアなホラーファン向きの本書であり、ホラー初心者はあまり参考にはならない。
紹介されている作品もかなり多く、ホラーと一言でいっても、サスペンス系から、巨大生物、アニマル・パニックといった映画まで紹介されており、もうちょっと焦点を絞って欲しかった。
それと、メジャー作品の紹介が多く、ホラー好きを豪語するなら、有名じゃないけど秀作だという “ツウ” な作品をもっと紹介してほしかったですね。
また、欄外で、作品の解説があったりなかったりと、DVDのパッケージ画像が無いのもマイナスかなぁ。
挿絵とか、デザイン、イラストがとてもかわいいし、凝っているのでもったいないですね。
※ これ以降ネタバレしてます。コアなホラーファンでないわたくしにはあまり面白い本ではなかったが、印象に残ったのは、綾辻先生によるJホラー・ブームの解釈。
特に 『邪願霊』(1989年 日本) 、 『女優霊』(1995年 日本) の二作品が、Jホラー・ブームの起点ではないかという解説は興味深かったですかね。
機会があったら観てみたいですけど。
わたくしはオカルト系のホラーか、ミステリ系のホラーが大好きで、本書でもわたくしが観賞した大好きな作品が紹介されていました。
いくつか紹介。
『エクソシスト』 シリーズ(1973年~ アメリカ)
『オーメン』 シリーズ(1976年~ アメリカ)
『リング』(1998年・日本)
『ナインスゲート』(1999年 フランス/スペイン)
『シックスセンス』(1999年 アメリカ)
『呪怨』(1999年 日本)
『アザーズ』(2001年 アメリカ/スペイン/フランス)
『the Eye』(2002年 香港/タイ/イギリス/シンガポール)
『ダークネス』(2002年 スペイン/アメリカ)
『アイデンティティー』(2003年 アメリカ)
『ヴィレッジ』(2004年 アメリカ)
『奇談』(2005年 日本)
『スケルトンキー』(2005年 アメリカ)中でも、映画館で上映されなかったDVD作品である 『スケルトンキー』 は、世間ではC級ホラーに甘んじているが、個人的には非常に評価が高いと思っており、綾辻、牧野両者とも絶賛しているのは嬉しいことです。(笑)
『スケルトンキー』 は、アメリカ南部の土着的な古呪術 “フードゥー” にまつわる恐怖を描いたホラー・サスペンス。
本格ミステリの手法で描かれており、構成は緻密です。
映画館での上映がされなかったのは、いわゆる差別的な要素があると判断されたからなんでしょうかね。。。残念です。
それと、ホラーの基本中の基本である 『エクソシスト』 と 『オーメン』 だが、わたくしはオーメン派。(笑)
どちらも宗教(キリスト教)絡みのオカルト。
本書では紹介されませんでしたが、 『スティグマータ 聖痕』 という作品もオカルト・ホラーと、謎ときミステリが融合した良作です。
『奇談』 は、漫画家・諸星大二郎の代表作 『妖怪ハンター』シリーズ の 『生命の木』 を映画化したもの。
日本の作品であるが、東北の隠れキリシタンの村を舞台にしており、キリスト教絡みのホラーというよりは、歴史ミステリ・サスペンスに近いですね。
『ナインスゲート』 は、A.P.レベルテ原作のオカルト・ミステリの映画化。
富豪の依頼により、禁断の書である “悪魔の書” を入手した古書籍ブローカーが奇妙な殺人事件に巻き込まれる恐怖を描いている。
ジョニー・デップ主演というのも良いですな。(笑)
『リング』 『呪怨』 は、日本独特の死者の怨念という恐怖を描いた作品。
悪魔がいない日本は、誰かを呪って死んでいった恨みの念が一番怖いですね。(笑)
本書では紹介されませんでしたが、 『輪廻』 もなかなか怖い作品です。
『シックスセンス』 『ヴィレッジ』 『アザーズ』 は、叙述的な仕掛けがほどこされたギミックなゴシック・ホラー。
『スケルトンキー』 同様に本格ミステリとしても観られる秀作です。
『the Eye』 は、香港/タイ/イギリス/シンガポールの合作。
レベルの高いJホラーにも負けないだけのアジアンホラーだと思う。
意味不明でおちゃめな幽霊の言動も面白いし、怖さだけでなくストーリー性も光るものがある。
『ダークネス』 は、めきめき力をつけてきているスペイン性のミステリ・ホラー。
ちょっとヤバ気なオヤジが家庭を崩壊に導くという点では、 『悪魔の棲む家』 に似ている。。。
『アイデンティティー』 は、シリアルキラーにモーテルの宿泊者がバンバン殺害されるという映画。
日本でのいわゆる “新本格”ミステリ をそのまんま映画でやってくれたという作品。
映画って本当にいいですねって言いたくなるほど、巧みな構成にはアッパレです。
掘り出し物を探すつもりで読んだ本書だが、観た映画ばっかりでちょっと残念。
しかし、両先生による、謎ときミステリ・ホラーの評価が高い点は、嬉しいばかりです。(´v`)
( ゚_ゝ゚) { 『ジェイソンによる死は事故死とあまり変わらないものなのだ。』 じゃなきゃとてもじゃないが観れない。。。