棄霊島

02:20 Mon 17.11
棄霊島 上 (ノン・ノベル 855)棄霊島 上 (ノン・ノベル 855)
(2008/10/23)
内田康夫

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棄霊島 下 (ノン・ノベル (856))棄霊島 下 (ノン・ノベル (856))
(2008/10/23)
内田康夫

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::: ミステリ ::: ★★★☆☆


浅見光彦シリーズであり、 『贄門島』 に続く、 “島” シリーズ第二弾です。
と言っても正式な続きものではなく、どちらもホラーチックなイメージを感じさせる似たようなタイトルであることから、わたくしが勝手にシリーズ化させてるだけです。


物語は、かつて炭坑の島として栄えていた長崎・軍艦島。
炭坑の閉山時に起きた30年前の変死事件を調べていた元警察官の老人が、静岡県・御前崎の海岸で他殺体として発見される。
「旅と歴史」の取材旅行で老人と面識のあった浅見は事件を追ううちに、軍艦島の歴史の闇と過去の事件に肉薄していく。



著者は戦争ものを書かせると、大長編になるようですね。
『はちまん』 という作品でもそうでしたけど、年齢的にも戦争に対する思い入れというか、見解があるのでしょう。
本書では、北朝鮮の拉致問題や、靖国神社の合祀問題、宗教、教育と、日本国を憂うべきてんこ盛りな問題がテーマです。
ちょっと詰め込み過ぎじゃないかと思うほど。
『贄門島』 もそうですが、タイトルのおどろおどろしさに興味をそそり、ホラーチックなストーリーかと思いきや、バリバリのハードな社会派ミステリだ。

戦争が絡んでくると、暴走気味になり “旅情” 部分が影を潜めてしまい、現地の美味い食べ物のみに終始する点が気になる。
本書ではこれまでの作品に比べて、浅見くんの移動はかなりのもので、長野県、静岡県、愛知県、京都府、長崎県と大移動だ。
それだけ立ち寄ったにも、五島列島ぐらいしか観光気分を味わえてない気がする。
まぁ、そもそも、「度と歴史」の取材は五島列島のみなわけで仕方ないんですけどね。
これだけ移動したのだから、映画化するくらいのストーリーになってるかと思いきや、かなり微妙だったりする。
さすがに重いテーマでテレビドラマだと難しいが、映画なら見応えはありそうなのですけど。。。

本書は著者の戦争観とか、宗教観が色濃く出すぎているので、エンターテインメント性のある旅情ミステリを求めている読者には、かなり重たく感じるのではないでしょうか。
いくつも地方を周っていながらその土地の歴史だとか、旅情観といったものがあまりみられない。
名物を食ってうまかったと書いときゃいいだろうじゃ、小学生の夏休みの日記よりひどい。
それと、結末が賛否両論をよびそうですし、浅見光彦というキャラクター性を考えた時に、個人的には納得出来ない点がある。
しかしながら、星3つと高評価にしたのは、軍艦島という廃墟というか、廃島を舞台に選んだ着眼点と、30年、60年という長い時間の流れの中で、2つの事件を上手にリンクさせる構成力が良かったと思う。
昭和史がおざなりのわたくしなんかは、著者の噛み砕いた歴史観というのは勉強になったし、浅見光彦シリーズは、老若男女に人気のある作品なので、多くの人に日本の歴史や、戦争、日本人観といったことを考えてもらうきっかけにはなるのではないでしょうか。


内容とは関係ないですが、本書は2006年に文藝春秋より単行本(上下巻)として刊行されています。
わたくしは、2008年11月に祥伝社より刊行されたノベルス版で読了しました。
ノベルス版の表紙は、天使の銅像を写した写真が使われており、上下巻を並べると1枚の写真として見れるという、上下巻の表紙にはよくある装丁です。
長崎(キリスト教)が舞台ということもあり、天使の写真が使われたのだと思いますが、イメージとしては、祈りとか、鎮魂といったものを感じる良い写真です。
しかし、個人的には単行本のデザイン・装丁の方が、本書には合っていると思います。
軍艦島(たぶん)の廃墟を写した写真で、灰色と朱色で上下巻の色分けがされています。
廃墟の不気味さをさらに強調させるかのような配色が良い。
おっちょこちょいのわたくしは、上下巻のデザインが似ていると、誤まって上巻だけ2冊買ってしまうというおバカをやってしまいます。(´ー`)┌
親切な書店員さんだと一言声をかけてくれますが、そうでない時は悲劇です。(笑)
祥伝社版はデザインは文句なしですが、とにかく表紙が似ているので紛らわしいです。
天使の像を下からのアングルで写している為、空が写ってるわけですから、上巻は昼間の青空で、下巻は夕方の夕焼け空といった具合に色分け出来てたら面白いのになぁと思いましたが。。。















※ これ以降ネタバレしてます。









































本書は、社会派なのか、旅情なのか。
同時に、ミステリなのか、評論なのか。
立ち位置がはっきりしないというか、舞台が長崎なだけに “ちゃんぽん” な作品だった。
戦争を語りだすと、宗教や、教育、政治と、どんどん裾野が広がっていってしまうのは著者の悪癖なのか。
作家として、胸のうちを披瀝したい心情はわからなくはない。
ただ、2時間ミステリと浅見光彦を愛する女性陣には商業的にも厳しいのではないかと思う。
ただでさえわかりづらい昭和史ですからね。
わたくしは、歴史ミステリとして読みましたが。

しかし、明らかなのは旅情ミステリではないということかな。
多くの地方を浅見くんは訪れますが、まるで弾丸グルメツアーです。
おまえは彦摩呂かと突っ込んでしまいまいた。(笑)
意地悪い発想をすれば、私的な旅行で発生した経費を、取材費と称して税金対策してしまえと考えられなくもない。(´ー`)┌
それもこれも評論チックな思想を全面に押し出したことが原因ですかね。
もうちょっといらん部分を削ぎ落とすことが出来れば、肝心なミステリに厚みを持たせることが出来たはず。
まぁ、大先生に忠言できるような編集者はいないんでしょうね。
著者にしてみれば、テレビでいうところの視聴率が取れる作品だからこその策略なのかも。(笑)


問題は、事件の結末がアレで良かったのか? に尽きる。
まず、30年前に起きた阿波神主の変死事件は、彼が保管しているとされた出生証明(念書)をめぐって多田則明が殺害。
念書には、久賀美津江の子供は、岡田との間にできた子供であると明記されていたが、真実は、桧山と美津江の子供であり、その子供こそ多田友子だったわけです。
友子と則明は兄弟(父親は異なる)であり、さらに友子の娘・ゆかりが、後口を刺殺した犯人であると。。。
なんとも複雑です。
この4人は全ての事件に関する事実を共有していた共犯関係にあり、いわゆる家族ぐるみの犯行という事になる。
しかも、多田兄弟の母親・美津江は、朝鮮人であり、戦後のドタバタ時に戸籍を新しく変えているために、念書が捜査線上に上がってこない限り、神主と後口の殺人事件は藪の中というところだろう。
しかし、浅見くんの十八番でもある “勘” で、難題を突破するわけです。
本書では、珍しくそこそこに伏線を張ってはいるのですが、肝心な部分になると、ご都合主義に走ってしまうのが残念でならない。
そのせいで、事件の顛末は犯人自らが語るという独白形式になってしまっている。
後から、あーだった、こーだったと云われても、読者は、へぇそうですかと言うほかない。

それと、美津江が念書を盾に岡田に認知や、それなりの要求をしなかった理由として、朝鮮人の誇りと則明は語ってましたが、そういう節操のある誇り高い母親を持ちながら、何故、その子供は金銭目的に殺人まで犯す犯罪者となったのでしょうか?
一家が経済的に貧窮していたからでしょうか。
岡田から金銭を奪うことが復讐だったということでしょうか。
もう一つ、友子の娘・ゆかりですが、友子は念書を奪う(金銭目的)為に、娘を捨てているんですよね。
私利私欲の為に、娘を捨てる。
とてもじゃないが、母親としても、人間としても鬼みたいな人です。
鬼女です。
ですが、本書では “良い人” っぽい扱いです。
多重人格か? と思うほど、人は見かけによらないっていうタイプ?(笑)
ゆかりと再会して、友子は自分の過去を話したことで、ゆかりは母親を許し、それどころか友子に成り代わって殺人までしてしまう。
この心理は疑問じゃないですかね。
金のために捨てた母親で、赤の他人同然の女を、そんな簡単に許せて人殺しまでやれますかね?
本書では、フーダニットでも、ハウダニットでもなく、ホワイダニットがメインだと思うのだが、そのキーになる動機の元となる人間の心理に納得いかない。

そして、犯人がわかっていながら、告発できない浅見くんの弱さというのを美的センスかのように表現するのはどうかと思う。
毎度、犯人を自殺に追いやる浅見くんですが、殺人を断罪しておきながら、殺人犯に対して自殺を許してしまう(自殺させる猶予を与えてしまう)のは矛盾してないか?
暗に “死を持って償え” と言ってるように思えるのはわたくしだけか?
被害者や遺族の為に犯人探しに躍起になっているはずなのに、その結末を遺族に報告しないのは責務を果たしたことにならないのでは?
被害者や遺族を救済することが本来の目的であるはずなのに、結果はその逆で、犯罪者の名誉を守っている浅見くんはどう考えてもおかしい。
わたくしは浅見くんが好青年であるかの如く描かれているイメージと、実際の行動とにかなりのギャップを感じるのだが。。。
長崎が舞台で、クリスチャンの登場人物が多いストーリーで、自殺を推奨するような結末も納得いかん。
それとも、日本の法律や裁判制度での刑罰は、被害者の意向に沿わないのは明らかだから、“死には死を” という浅見くんの “優しさ” と受け取ればいいのか?
後口や、阿波神主(息子)など、関係者たちがとても好印象な人達ばかりだったせいか、どうしても結末が釈然としないですね。
せめて、則明が全ての罪を背負って自首という形で終わればまだ救われたのですが。。。


ストーリーとは関係ないですが、本書ではヒロインらしい女性の活躍がみられなかった。
篠原先生がヒロインなのかもしれないが、全面的に事件に関わっていたわけではないのに、お約束通り、浅見ちゃんに一目ぼれしてしまいますよ。(笑)
そして、美春とかいう小娘と、浅見ちゃんの取り合いやっちゃってますよ。
いちゃいちゃと。。。
殺人事件の捜査なのに、いちゃいちゃいちゃ。 うぜ。-y( ̄Д ̄)。oO○










(  ゚_ゝ゚) { 『犯人といえども、一個の社会人です。』 犯人にも都合というものがあるようです。









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Bk.044 贄門島 上・下

18:36 Wed 16.08
贄門島 上 贄門島 上
内田 康夫 (2003/03)
文藝春秋
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贄門島 下 贄門島 下
内田 康夫 (2003/03)
文藝春秋
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::: ミステリ ::: ★☆☆☆☆


「生贄送り」の風習が残る保守的な孤島。
謎の連続殺人、失踪事件、不審船、里見伝説。。。
そして、 “島の秘密に肉迫する浅見は、生きて島を出ることができるのか。” というコピー。
ミステリの題材として、これほどワクワクするようなものはないですよね。
横溝正史の 『獄門島』 の世界を想像しがちです。
上下巻というボリュームも考えて、とても楽しみに、期待を込めて読んだのですが、見事に期待感をぶち壊した作品だった。。。(´ー`)┌


最近富に感じるのですが、内田作品のクオリティーが格段に落ちている気がする。
それと同時に、著者自身が、ハッピーエンドに拘りすぎている気もする。
大団円、カタルシスと言えば、聞こえは良いが、結局は、ご都合主義であり過ぎるのだ。
こうなったらいいな、というか、不幸を望まない展開を、裏切る大胆さが、著者の作品には欠けている。
誰も傷つかず、誰もが幸福になるなんて、絶対にあり得るわけがないし、女性や子供、老人が必ずしも善い人間であるはずもない。
そこを捻じ曲げてしまうと、人が人を殺すという、最も罪業の深いテーマを扱うミステリでは、矛盾を生み、整合性がとれない作品となる。


著者は物語で取り上げた、 “性善説” の信望者だと思える。
良く言えば、育ちがよろしく、悪く言えば、良い子ちゃんだ。
否定するつもりもないし、それどころか、この時代にそう思える感性は素晴らしいとさえ思う。
ただ、ミステリを書く上で、例えば、このキャラクターを犯人に出来ないなら、善い人間性で描いていた、別のキャラクターを、無理やり犯人にするという、読者も違和感を抱く設定にせざるおえない。
こうなるとミステリとしては、構成などが破綻した最悪な作品となることは間違いないだろう。
願わくば、著者には連載小説をやめて欲しいものです。


褒めるべき点といったら、残念ですが内容でなく、装丁ですね。
わたくしは、文藝春秋の単行で今回読んだのですが、落ち着いたグリーンとオレンジの単色カラーに、紙質は和紙のように手触りが良いです。
何よりもシンプルなデザインが重厚感を増してます。
内田作品の整理を兼ねた、読書だったのですが、正直、手離すのが惜しい本ですね。
それだけに、内容のクオリティの低さに残念でならない。










※ これ以降ネタバレしてます。




































旅情ミステリーで名を馳せてる著者も、今回ばかりは、和倉町はもちろんですが、美瀬島という島はフィクションで描いてますね。
当たり前か。(´ー`)┌
ノンフィクションとフィクションを、ちゃんぽんして書くのが上手な作家だけに、意外と信じてる人がいるかもしれないですね。
ただ、著者のことだから、他県の孤島を旅行した時のネタかもしれないと考えると、事件の内容は別にしても、美瀬島のような島は、現実に存在するのかなぁと想像しちゃいますが。(´ー`)┌



保守的で、閉鎖的な孤島の秘密。
そこで起きる謎の儀式と、連続殺人。
アイデアは非常に良かったんですけどねぇ。。。
上下巻というボリュームがあったにしては、お粗末な出来だった。

秘密めいた島を描いているわりには、島民はものすごく隙だらけな人が多かったのには笑いました。
島ぐるみの犯行で、厳重な箝口令がしかれているはずなのに、人の口に戸は立てられないというか、うっかり、浅見ちゃんに島の秘密をポロッと洩らしちゃう人ばかり、よく今まで、島の秘密が守られてきたと不思議でならない。(´ー`)┌
それに、殺人事件の全てが後付けであり、石橋、平子、増田、柿島のどの事件をとっても、後から著者の都合が良いように、無理やりつくられたもので、そこに推理といった論理的解決もなく、単純に設定のインパクトだけで、書き上げただけの駄作。

しかし、北朝鮮、不審船を取り上げ、そこに、密漁や麻薬といった、犯罪性を持たせるアイデアは面白いと思います。
豊饒な海の正体は、実は、密漁の産物だったなんて、北朝鮮との関連も考えると、ショッキングな内容です。



内田作品は好きなんですけど、彼の作品の中には時折、犯罪を犯罪として扱わない風潮があるというか、見逃すというよりは、正当化するような、描き方や、結末で終わることがあります。(´ー`)┌
著者はそれを、 “浅見の優しさ” と表現しますが、それに関して、わたくしは否定的です。

よくある設定としては、犯人自らが命を絶つとか、事故扱いするとか、肝心な部分で有耶無耶にされると、ミステリー好きとしては、ご都合主義だと言わざるをえない。
そこまでは良いとしても、著者の場合、連載中に、善い人として描いていたキャラクターを、無理やり犯人にしたり、その逆もしかりで、そんな行き当たりばったりの設定で、読者を納得させることが出来ると、本気で思っているのか疑問です。
頭から読者に人間を見る目が無いような書きかたをされると、とても侵害です。
いくらなんでも、人間描写がひどすぎる。
その時、その時で、コロコロとプロットやキャラクター設定が変わっていくため、非現実的過ぎてついていけないです。


最近の、内田康夫はどうしちゃったんだろうと、本気で心配です。(´ー`)┌
現実に起こる、殺人事件の犯人以外の普通の人は、殺人を犯したことがあるわけもなく、そんな中で、ミステリ作家は、殺害トリックを考えるのは、困難なことだと思うし、そこにご都合主義的な部分があっても、当たり前だと思う。
だって、フィクションですから。
しかし、人間ドラマ、人間描写、人間の行動や心理にあっては、ノンフィクションであるべきだと思う。
そういった “想像性” が一般人より、豊かであるからこそ、作家という職業につけるわけで、その部分までも、読者にいい加減だと思われる作品を商品化するのはいかがなものか。
世界一周旅行といった、 “贅沢” を肥やしに出来る大作家なんだから、いい加減連載小説はやめて、もっとプロットを重視した、本格的なミステリーを書いて欲しいと心の底から思いますね。









(  ゚_ゝ゚) { 『生贄の島で、浅見光彦、危うし!』 確かに、貞操は危うかったね。。。





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