Bk.087 透明な遺書

12:30 Mon 05.11
透明な遺書 (祥伝社文庫 う 1-13)透明な遺書 (祥伝社文庫 う 1-13)
(2007/06)
内田 康夫

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::: ミステリ ::: ★☆☆☆☆


タイトルの面白さに惹かれて読んだのですが、内田作品にしては珍しく読書スピードが遅かったです。
大概は、遅くても1日で読了するのですが、5日もかかってます。
500ページの長編ではあるのですが、わたくしの嫌いなジャンルのストーリーだったことが原因。
政治家、暴力団、汚職と、疑獄事件ネタであり、旅情ミステリとはほど遠いベタな社会派ミステリで、とにかく重く、どこまでも暗い。
浅見ちゃんじゃないが、経済には疎すぎるわたくしには退屈極まりない作品。
天下に名高い浅見シリーズでも、主婦が食いつきづらいネタだけに、さすがに本書のドラマ化は難しいかもしれない。











※ これ以降ネタバレしてます。






































“透明な遺書” というタイトルが魅力的。
遺書と書かれた封筒だけを残し、車中で排ガス死という変死で発見された男性。
このような状態で発見されれば、大概は自殺と判断されると思われるが、浅見ちゃんのするどい観察眼から、他殺の疑いが濃厚となり素人探偵の調査が始まる。

褒めるとすればこの排ガス自殺と見せかけた殺害トリックですかね。
一度ホースを短くカットし、その穴に棒を通し、パワーウィンドウのスイッチを押すという物理トリックは良かった。
また、車中で遺書を書くためのペンや便箋が無いことや、ホースをカットし、再び繋ぎ合せて使用した不可解な点から、他殺と判断した浅見ちゃんの洞察力も素晴らしい。
自殺でないから、他殺の証拠が出るのは当たり前。
首を絞めて殺せば、絞殺死体特有の痕跡が残るのと同じ。
しかし、今回は死体からではなく、死んだ人間が残した物や、状況から、その因果関係を見つけ出した。
まぁ、ちょっと突っ込んじゃえば、ホースに通さなくても、直接細く長い棒でパワーウィンドウのスイッチを押せるんじゃないかとか、中身の無い遺書が書かれた状況が詳細に書かれていないので、読者としては、浅見ちゃんが指摘するまでわからないわけで、手放しで褒め称えることは出来ないかな。。。
しかし、遺書があるから、それを書いたペンや、便箋があるだろうと読者を錯覚させるような書き方は、ミステリ独特の技術でもあるので仕方ないか。(´ー`)┌


問題は、動機や、事件の性質という点に関して。
政治家と金とか、汚職や悪徳警官に暴力団。。。
これだけ悪の権現が出揃い、タッグを組んでしまうと、もはやホワイダニットには期待はできず、動機になりようがない日常化した題材であるので、ある意味、手抜き仕事と思われても仕方ない。
早い段階で、疑獄事件モノかとわかった時点で、読む気が失せるというもの。









(  ゚_ゝ゚) { 『人は誰も、死に臨んで、心に遺書を書くものだと思います。 それを読み取ることが、残された者の務めではないでしょうか。』 遺書を書くほどの財産も想いもない。。。




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Bk.025 はちまん 上・下

19:58 Tue 06.06
はちまん〈上〉 はちまん〈上〉
内田 康夫 (2002/09)
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はちまん〈下〉 はちまん〈下〉
内田 康夫 (2002/09)
角川書店
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::: ミステリ ::: ★★★☆☆


数ある内田作品、浅見光彦シリーズの中でも、群を抜いて秀でた作品だと思う。
愛国心、戦争、歴史、宗教、政治、教育といった、日本が抱える問題を、ミステリを通して描いている。
著者の戦争観、教育論が余すところなく書かれています。
とても考えさせられますし、かといって、ミステリ部分がおろそかにされることもない。
上下巻でページ数が多い分、構成にも余裕があり、とても丁寧に描いていることからも、著者の意気込みというか、作家としての情熱を感じます。
エンターテインメント性はほとんど皆無で、今回ばかりは、浅見くん持ち前の明るさも影をひそめています。
しかし、学校校長のくだらない “命の大切さ”話 を聞かされるくらいだったら、本作を読んだ方がよっぽどためになる。










※ これ以降ネタバレしてます。




































前半は政治的な暗いというよりは、黒いストーリー展開であり、それに加え、浅見くんもなかなか登場しないので、多少もたつきます。
その後も、戦争や宗教、教育といった難しい話が続くので、途中で飽きちゃう人もいるんだろうなと思う。
しかし今回は上下巻の長編ということもあり、主役の浅見くんだけでなく、登場人物達の視点で描かれていくので、どこでどうストーリーが繋がっていくのか楽しみでもあります。
そのせいか、主役のはずの浅見くんですか、本作ではかなり影が薄いですね。
その浅見くんは今回、彼には珍しく、人の命に関わる痛恨のミスをおかします。
彼のミスが無くても、薄々展開は読めていましたけどね。。。


飯島という老人が殺害された背景には、戦争中に、八幡神宮で盟約を結んだ人々が関わっているのですが、その孫同士が恋人同士だったり、悪の根源のような人物が落雷で天の裁きを受けるなんて、かなりご都合主義的な展開もあります。
これも天罰、神意と思えということなんでしょうかね?
著者は日本人の誰もが思う、理想の正義観を持っているが、その反面、冷静に現実も直視している。
いくら正義を振りかざしても、悪意がまかり通ることもあるのだと。
それを天罰というラストで締め括るしかなかった幕切れは、爽快さに欠け、物足りなく残念に思う。


物語の中で登場人物に、子供達が起こすイジメ、自殺、障害事件は、戦後、学校や親が、勉強させるだけの教育しかしてこなかったせいだと語らせてます。
そんな子供達の苦悩を取り去るには、命の大切さを訴えるだけでは払拭できないと。
戦前、日本が信じていた正義や善の価値観が、戦後、逆転してしまい、悪になった時から、日本は日本自身を、憎悪の対象にしてしまったとまで書いています。
その憎悪から目をそらして、がむしゃらに働き、経済大国となった日本。
そのつけがというよりも、歪みが、今の子供達の教育に、日本人に悪影響を及ぼしているのかもしれない。
物質的には豊かになったけど、心は戦争していた頃より貧しくなったのではと思う。
純粋に日本という国を愛していた時代の心を取り戻すには、日本人が、古来から自然には神が宿ると信じて、大切にしてきた、慈しむ精神を取り戻すことから始めるしかないのでしょうね。









(  ゚_ゝ゚) { 『人間は自分の思いどおりに生きることは容易でも、思ったとおりに死ぬことは難しい。』 小生、思い通りにも生きられません。






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Bk.024 歌わない笛

19:11 Fri 19.05
歌わない笛 歌わない笛
内田 康夫 (1997/11)
徳間書店
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::: ミステリ ::: ★☆☆☆☆


つまらない。
こんなものを商品化するとは。(´ー`)┌
浅見光彦の勘だけで突っ走っている作品のため、2時間サスペンスの域を出ていない。
っつか、ドラマ化も無理だろう、こんなんじゃ。
っつか、こんな作品を単行で、しかも何年も持ち続けていた自分が。。。恥
もう何も書くべきことはない。。。










※ これ以降ネタバレしてます。




































利権をめぐる、政治家達のこ汚い話は嫌いです。
内田センセは結構好きですよね、政治家や官僚がらみの話が。
社会派を目指してるのか? 政治家や官僚が嫌いなのか?
わかりませんが、浅見光彦の作品にはあまり似つかわしいようには思えない。


本作は、音楽大学の移転をめぐる、政治家の利権争いにまつわる殺人事件なんですが、殺害トリックをどうこう言う以前に、犯人の人間性が怖いくらい単純過ぎで、動機もかなり無理がある筋書き。
あまりの手抜きに驚きです。
天下の浅見シリーズにもこんな駄作もあるのですね。(´ー`)┌
内田作品というのは、インスタントな作風のせいか、古書店で多く見受けられます。
わたくしも若い時分は好きで、一杯集めてましたけど、最近は出る一方で、これだけは本棚に置いておきたいという作品がないのが現状。
気軽に読めるという手軽さは大事なのですが、イコール、図書館で十分と思わせる作品もどうなんでしょうね。( ̄−  ̄;)









(  ゚_ゝ゚) { 『命を賭けた相手に対しては、命を奪う以外に方法はない』 殺人犯の勝手な理屈ですね。





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Bk.070 歌枕殺人事件

14:44 Wed 28.12
歌枕殺人事件 歌枕殺人事件
内田 康夫 (1996/04)
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::: ミステリ ::: ★☆☆☆☆


『白浪、松山を越ゆ』 という謎の言葉がこの作品の発端なんですが、著者の発想から生まれた言葉なのでしょうか?
だとしたら、感性がするどいですよね。
波が越えられないからこそ、末の松山なのに、それを逆手に取った発想は面白いです。


本作は、旅情+歴史ミステリで、謎のキーワードに、百人一首の和歌と、題材としては、とても面白いのですが、展開があまりにも浅見光彦の偶然と勘に頼る作品でダメ。
あと、警察官の立場を無視した、浅見の軽い無責任な発言がひどすぎ。(´ー`)┌








※ これ以降ネタバレしてます。


























何がダメって、犯人とその父親の人間描写。
それに輪をかけて、自殺させてしまう浅見の行動が、好ましくないです。
しかも自殺することを察知していながらっていうパターンが多い、こいつは策士やな。
事件の発端である、最初の被害者(女性)の殺人事件が、放置されたままで、物語としては、犯人が殺害を認めれば、それでその役は全うしてるのでしょうけど、フォローがないのは雑すぎる。


本作では、ミステリや殺人犯の心理、死について、本文と解説で著者が熱く語っていました。


『殺人者に脅えているのは、殺人者自身』

『人間は死に対して慣れるということは、絶対に有り得ない』

『ミステリーは人の死をテーマにしたドラマ』


肝心の作品はあまり面白いとは思いませんが、著者の持論には、どれも同意見です。
とくに、『ミステリーは人の死をテーマした』 という点。
ミステリーでは、誰が、どうやって殺人を犯したのか、というトリックや犯人当てを重要視する作品が多いですが、“何故殺人を犯したのか” という、根本の部分が無視されがちです。
人間ドラマとして描くには、大切なファクターなんですがね。。。
『半落ち』 なんかはその成功例だと思います。
こういうドラマ性の強い作品がもっと増えて欲しいとは思います。









(  ゚_ゝ゚) { 『白浪、松山を越ゆ』 お正月の町内カルタ取り大会を思いだした。




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Bk.063 ユタが愛した探偵

22:44 Sat 17.12
ユタが愛した探偵 ユタが愛した探偵
内田 康夫 (2005/10)
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::: ミステリ ::: ★★☆☆☆


著者が長年温めていた作品というだけあって、今までの浅見シリーズとはちょっと違った印象を受けた。
旅情ミステリーを得意としている著者ですが、より一層、情感ある作品だと思った。
舞台は沖縄。
今でこそ、リゾート地として、日本人の憧れの地でもあるわけですが、歴史を紐解くと、戦争と本土との関係を無視しては通れない。
著者は、本文でも沖縄について、

『空が大きくて、海が広くて、明るくて、陽気で、そして悲しみに満ちた国』

『沖縄は日本であって、日本でないようなところがある』


と書いています。
印象的なのが、沖縄を “国” として表現しているところですね。
昔も今も沖縄人は、沖縄の全てにおいて、その誇りを大事にしている人達だということが伺い知れます。
そのせいか、著者が真摯な気持ちで作品にとりかかりたいという気持ちはよくわかるし、本書ではそれが十二分に表現できていると思います。


謎解き部分においては、そんなのあり? という結末なのは、納得はいかないのですが、裏を返せば、意表を突かれた作品とも言えます。

本作では、ユタというイタコのような、不思議な能力を持った人達が登場します。
今回のヒロインは、そのユタの女性・香桜里でした。
彼女は、神がかり的な能力で、浅見と共に事件を探っていきます。
現代社会を描いたミステリで、彼女のような存在を活かすのはとても難しいと思うのですが、沖縄の神秘性も加わったお陰で、違った意味でのミステリアスな作品に仕上がっていると思います。


物語とは関係ないですが、 “ユタ” という言葉のほかに、“サーダカウマリ”(性高生まれ:生まれながら高い霊力が備わっていること)といった言葉が、ヒンズー教の言葉とよく音が似てるなぁと思いました。








※ これ以降ネタバレしてます。


























殺されたと思われていた人物が、実は、保険金目的の自殺だったというオチはどうなんだろう?
結局、犯人不在で、いわばハッピーエンド的な結末も、なんだか腑に落ちない。
正直、ミステリは殺されてなんぼっていうイメージがあるので、テンション上げるだけ、上げといて、結果がこれだと拍子抜けですよね。(´ー`)┌
それに今回は、スーパー霊能力者・香桜里ちゃんがいるので、浅見ちゃんお得意の勘も冴えない感じでした。
香桜里ちゃんが、非現実的な能力で犯人を探すなら、浅見ちゃんは、論理的思考で対抗するような、いわば、推理合戦になっていたら面白かったのになぁと思いました。


合戦といえば、本作で、一番見苦しかったのが、女二人の浅見の争奪戦ですかね。。。 (´ー`)┌
聡子が現実的で、積極的な女性なのはわかるのですが、神秘的な女性として登場する香桜里ちゃんも、狙ってやってんの? と思うほど、打算的な感じがして、女性の目からみたらすごく嫌でしたね。
まだ、聡子のように、浅見に堂々とアタックしまくっている女性の方がかわいく見えた。
そんな香桜里ちゃんですけど、ラストの空港でのシーンは、とても良かった。
浅見とお別れをするシーンですが、彼女の慎ましやかな物腰や、儚げな感じが美しく感じました。
対する浅見も、とても優しかったです。
映画のワンシーンを見ているようでした。
必読の価値ありです。








(  ゚_ゝ゚) { 『式さんにだって見えないことが、きっとありますよ。』 優しい一言ですね。





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