Bk.042 後鳥羽伝説殺人事件

15:53 Tue 08.08
後鳥羽伝説殺人事件 後鳥羽伝説殺人事件
内田 康夫 (1996/06)
角川春樹事務所
この商品の詳細を見る


::: ミステリ ::: ★★☆☆☆


浅見光彦シリーズの記念すべきデビュー作。
著者自身、このシリーズがこんなにも人気作品になるとは思ってもみなかったはず。
シリーズ1作目とは言うものの、シリーズ化を考慮していなかったせいもあり、浅見くんがメインとは言いがたく、物語の半分までは、広島の刑事視点で書かれていたり、殺人事件発生後の現場の描写や、捜査状況など、良く言えば丁寧に、悪く言えば、ダラダラと書いているのが、ひどく退屈でした。
そういう意味からしたら、“脇役”としての浅見くんが見れるのは、本作だけだと思う。


とはいえ、それまでの著者の作品と比べて、このシリーズは、エンターテインメント性の高い作品だと思います。
一重に、浅見くんのキャラクターのお陰なのかもしれません。
おっさんばかりの主役じゃ、売れるわけがないですからね。(´ー`)┌
偶然とはいえ、そこに気づけた著者はラッキーだったと思います。
しかし、多作系作家でなければ、このシリーズも、作家としての人生も危ういのですが、著者にはその才能があった。
運と才能を併せ持っているわけですから、ベストセラー作家になるべくしてなったというものでしょうかね。


個人的には、浅見シリーズはライフワークとなっているのでしょうけど、新境地を開拓して欲しいと思います。
同じ作品ばかりを書き続けるのもすごいとは思いますが、作家としての意欲だとか、チャレンジ精神、成長が見られない。
出版社が作家に要望する本と、作家自身が書きたいと熱望する本は、必ずしも一致するとは限らないのですが、著者は浅見シリーズ以外は、書きたくないのかなぁ? と思えてならない。
ミステリでなくても良いから、違う世界を見てみたいですよね。










※ これ以降ネタバレしてます。




































作家としてはまだ新人のせいか、物語の構成が上手とはいえない。
とくに前半は、読者に説明してるようにもとれる内容が退屈でした。
三次駅で殺人事件が起こり、犯人は電車を利用した可能性もあることから、駅に乗り入れる電車や、時刻表について、長々と小難しくゴチャゴチャと書いてるのですよ。
正直、適当に流し読みしちゃいましたけどね。
西村京太郎のような、トレイン・ミステリだったら、大事な場面なんでしょうけど、結果として、それがトリックとして活きておらず、犯人を落とすのに、そんなものは必要なく、あんだけ書いてた割には、意味なかったじゃんと思うほど拍子抜け。


それと、犯人がエリート警察官というのは、よくあるパターンであり、野上刑事を村八分にした時点で、犯人の最有力候補ですよね。(´ー`)┌
読者の意表を突くには、意外性のある犯人は面白いのですが、本格ミステリー好きには受けは悪いかな。
さらに、物的証拠ともいえる本を、処分せずに、仲間の実家に送るというのも有り得ないなぁ。
わたくしだったら、自分の手で処分しますよ。
だって、本ですよ? 紙ですよ? ( ̄−  ̄;)
本が現存してたから証拠になったわけで、無かったらこのミステリは成り立たないね。

ラストで浅見くんが、謎解きをしながら、電話を使い桐山警部に罠を張るのですが、現実には証拠能力はなさそう。
それでも、フィクションのトリックとしては面白い。









(  ゚_ゝ゚) { 『名探偵の誕生』 誕生作品のくせに、浅見家の暗い過去から始まるのか。。。





テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

Bk.041 隠岐伝説殺人事件

22:59 Sun 16.07
隠岐伝説殺人事件 隠岐伝説殺人事件
内田 康夫 (1997/12)
角川春樹事務所
この商品の詳細を見る


::: ミステリ ::: ★★☆☆☆


記念すべき浅見光彦シリーズの第一作『後鳥羽伝説殺人事件』で、後鳥羽上皇を取り上げたのに、再び、同じネタで書いた作品が本作。
さすがにタイトルは、 『後鳥羽伝説殺人事件2』 とはいかなかった。(´ー`)┌
同じような設定で、 『平家伝説殺人事件』 の平家ネタを再度用い、『赤い雲伝説殺人事件』 という作品を残している。
日本の伝説もそろそろネタが尽きてきたのでは? と心配です。


本作は、デビュー作では、描ききれなかった後鳥羽伝説を、もっと掘り下げて書いてみたかったのかなと思うほど、ボリュームのある作品です。
確かに、著者の歴史観とか、後鳥羽上皇の人物像については、一読の価値はあります。
しかし、それがミステリーにあまり結びつかなかったような気がします。
前半は、後鳥羽上皇の呪いだのなんだのって、盛り上げてますけど、後半は、上皇なんて完全に忘れられた存在でした。(´ー`)┌
さらに、500ページ近いボリュームなのに、読者をひきつけておくだけの、決定的な展開がない。
山も谷もなく、落差のないジェットコースターのようでした。
おいしい食材はたくさんあったはずなのに、調理で失敗したという感じです。










※ これ以降ネタバレしてます。




































なんだか、もったいない作品だと思います。
冒頭の謎の屋敷のシーンは、ミステリの掴みとしては良かったと思うし、後鳥羽上皇に関する歴史の自説も面白いし、『ち』の呪いのキーワードの使い方や、笑い顔の死体もインパクトがある。
ミステリとして楽しめる要素は、ありすぎるほどあった。
初めから肯定的な目で読んだが、良い出来だとは思わなかった。
何が悪いかっていえば、スピード感がない。
歴史ミステリとなれば、ページ数が増えるのは仕方ないと思うが、それ以前に、事件の流れがとても遅かった。
それと、5人ものの死者の謎を解かなくてはいけないのに、死者が出る度に、その手掛かりともなるような展開や、証拠品なども出ず、延々と引っ張られたことが、退屈と感じた点だろう。
もっと読者が食いつくようなエサを小出しにするとか、テニスで言えば、対戦相手が右へ左へと振られるような球を打てれば、退屈する暇など無いはず。
これでは、何人も殺害される意味が無く、1人しか殺害されないミステリを読むのと大差がない。

あと、気になったのが、雑誌連載が災いしたのか、人物の描き方が極端で失笑した。
特に、佐田、白倉両教授の変貌ぶりはひどかった。
連載当初は犯罪に絡む人物ではなかったのだろう。
それと、広山警部の名推理も、書いてる最中に、探偵役の浅見のアリバイが無く、探偵どころか、一番の容疑者であることに気づいちゃったんだろうなぁ。
それを逆手に取って物語りに活かしたように感じました。
自作品に客観性を見いだすのは困難であり、編集者か読者に指摘されたと思います。


著者の作品は、現実に起きた事件や事故を元にして書く場合が多く、そういう意味では、とても現実的なストーリーなんですよね。
そのせいか、本作に出てきた源氏物語絵巻や、軍事作戦なんか、本当のように思えてしまう。
世事にうといと妄信的に信じてしまいそうになるが、フィクションだと解説に書いてました。
中には、本当に信じてる人とかいそうだよなぁ。









(  ゚_ゝ゚) { 『浅見さんより祟りのほうがよっぽど怖いですよ』 男として悲しむべきか、喜ぶべきか。。。





テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

Bk.039 崇徳伝説殺人事件

21:38 Fri 07.07
崇徳伝説殺人事件 崇徳伝説殺人事件
内田 康夫 (1997/02)
角川春樹事務所
この商品の詳細を見る


::: ミステリ ::: ★★★☆☆


伝説と社会事件を巧みにミステリに織り込んだ浅見光彦シリーズ。
特別養護老人ホームで起きた、事故死、汚職事件が、連続殺人事件へと発展する。
事件の真相を知る老人ホームの看護士から、偶然、写真のネガを託された浅見光彦は、事件解決へと奔走します。


老人介護、福祉事業の問題と、テーマはかなり重たいです。
その重たさと、崇徳上皇のおどろおどろしい伝説が、うまく物語りに反映されていると思います。
けど、本作を読むと、老人ホームや福祉関係の事業は、表っ面は社会に受けが良いのですが、その実態はというと、清廉潔白とは言いがたく、読んでいて気分が滅入ります。
老後の見通しはとても暗く感じてしまいますよ。(´ー`)┌
全ての施設や事業がうさんくさいというわけではないが、今の日本、老人とペットからはふんだんに金が取れるという図式があるだけに、個人的には極めてグレーな存在ですよ。


そんな老人ホームにまつわるミステリですが、著者の作品ではバランスが良い作品だと思いました。
伝説と社会性と謎解きと、多少謎解きがあいまいになってしまってますが、老人福祉に関する記述は、身近に感じる話題なだけに、関心も高いと思います。


本作では、他の浅見シリーズ作品に登場してきた刑事が、浅見と協力しあいながら事件を解決していきますが、いつどこで登場させたかわからないような、端役の刑事を著者が覚えているのは感心します。
といっても、その刑事の容姿や性格などに関しては、もう書いた本人も忘れていると思うのですが、わざわざ昔の作品を読み直しているのかもしれないと思ったら、シリーズ物も意外と面倒なんだなぁと思ったりしました。
ご苦労様です。(´v`)










※ これ以降ネタバレしてます。




































問題は、ラストですよ。
ラストの締めくくりが、意見が分かれるところだと思います。
情状酌量のある犯罪者に対して、浅見がとった行動がよかったのか悩むところですよね。
本来であれば、浅見自身は警察の人間でもない、一市民だが、犯罪者に自首を強く要求し、罪を償わせるのが現実的だとは思うのですが、それをしない。
というか、出来ないのでしょうね。
しかし、犯罪者にとってみれば、目前には針の山、後ろを向けば、溶岩が流れる谷底という、行けず戻れずの場所に立たされているようなものです。
己の進退を、己で決断しろと迫るのは、浅見流の優しさと思うべきなのでしょうか?
今回の場合、犯人が自ら命を絶つ確率の方が極めて高く、現に犯人は、痴呆の妻の介護に疲れ、心中自殺という形で事件は終焉している。
殺人事件を推理し、真実を知るのが趣味みたいなものだと公言している浅見ですが、その推理が人を殺すこともあるわけで、それを承知で生きるか死ぬかを選択させた。
浅見は優しい男だが、残酷な男でもある。
また、冒頭で尊厳死や安楽死についてのくだりもあり、浅見(著者)の死生観が良く現れている。
ただ、キレイなだけの結末ではなく、生死を扱った作品だけに、浅見に、『これから先、死ぬまで、この秘密を抱いて生きてゆくことになる』 と語らせてます。
著者の誠実さが垣間見える良い作品でした。









(  ゚_ゝ゚) { 『善意の無関心』 嫌な時代ですね。 





テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

Bk.038 赤い雲伝説殺人事件

21:16 Thu 06.07
赤い雲伝説殺人事件 赤い雲伝説殺人事件
内田 康夫 (1996/09)
角川春樹事務所
この商品の詳細を見る


::: ミステリ ::: ★★☆☆☆


伝説シリーズ。
舞台は瀬戸内海、平家伝説のある小島・寿島。
既に、 『平家伝説殺人事件』 として、作品があるせいか、同じ平家ネタを軸にするのは、芸がない。
そのせいか、タイトルも “赤い雲伝説〜” となんとも苦しげです。(´ー`)┌
まぁ、伝説シリーズのタイトルにしては、一風変わっており、伝説の重々しさという先入観を感じずに読めたので、それもまたよろしいかな。


ミステリとしては、ご都合主義で、かなりプロットもずさんに思える。
本格的なミステリとは言えない。
読み手に対しての挑戦も感じられなかったですし、淡々と浅見くんが事件を解決していく様を、追っていくだけで謎解きの面白さは味わえない。
さらに、 “殺す動機” が薄いというのは、著者の小説ではよく見受けられるのですが、 “殺される理由” が薄い作品というのは、珍しいかもしれない。
同じ事のようにも思うが、殺される側が常に悪人である必要がない場合という設定なんですがね。
被害者が望んで己の首を、犯人に差し出しているような印象さえ受ける。
あらゆる意味で、かなり展開が強引だったのが良くなかったのでしょうね。


キャラクターに関しても、ヒロイン・小松美保子の浅見に対して、かなり強引にアタックしてくる点や、初対面ですぐホテルに駆け込むような、ハリウッド並みの安直なロマンス展開は、同姓としては引きます。
浅見シリーズで登場してくる女性のほとんどが、浅見シンパのような女性ばかりで、キャラクター性としては面白くない。
現代において、著者の女性観の低さは致命的だし、浅見像の “完璧性” にも魅力を感じない。 
さらに、33歳にもなる男性が、女性に対しておくて過ぎて、及び腰になる様は、現実的に見ればかなり気味が悪い。
著者にかかっては、浅見くんは生涯童貞なんだろうし、著者に至っては生涯、恋愛小説は書けないだろうと思う。










※ これ以降ネタバレしてます。




































赤い雲の下に浮かぶ寿島を描いた油絵と、牧歌的で自然の美しい寿島が、原子力発電所の建設により汚れていく情景が、まるで広島に落とされた原子爆弾を連想させる。
今回は、伝説うんぬんよりも、原発誘致に揺れる小島の光と影をうまく物語で描いていたと思う。
原発建設で、潤う人もいれば、逆に損なう人もいる。
そこに利権を狙って政治家が絡んでくるんだから、読後は消化不良な状態になりますわな。
政治家と暴力団が登場してくる著者の作品は、殺害動機や殺害方法が強引になり易いので好きではないです。









(  ゚_ゝ゚) { 『浅見光彦、諸行無常に涙する―。』 ん? 泣いてたっけ??




テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

Bk.034 平家伝説殺人事件

21:12 Tue 27.06
平家伝説殺人事件 平家伝説殺人事件
内田 康夫 (1996/06)
角川春樹事務所
この商品の詳細を見る


::: ミステリ ::: ★★★☆☆


浅見光彦シリーズの中でもおそらく人気の高い作品だと思う。
長いシリーズなので、駄作、良作、秀作と、いろいろあるのでしょうけど。
かれこれ、10回くらいは再読してるほど好きな作品。
とくにヒロインの佐和が好きになれたことが大きいかも。
内田作品の女性の描き方は、わたくしはあまり好きではないので、自分にとっても以外ですよ。


作品自体についても、内田センセには珍しく、倒叙形式で書かれ、物理トリックまであり、本格的なミステリーです。
ただ、浅見シリーズの2作品目のせいか、肝心の “平家伝説” については、掘り下げません。
その辺りは歴史好きの方には物足りないと思います。










※ これ以降ネタバレしてます。




































ドラマも含め、何度見たか、読んだことか。
簡単に言ってしまえば、単なる、保険金殺人なんですけどね。
平家に関する歴史を削ったせいか、ミステリとしては上出来。
特に、トリックに凝っていて、本格好きなミステリー・ファンも納得いく作品だと思います。
フェリーから人が落ちるトリックや、密室トリックも、シンプルだけど現実的に可能ですし、20年も前に死んでいた人間を、生きているようにみせかけて、保険金を掛け、再び殺すという巧みなトリックも、奇抜ですし、見抜けませんでした。


何度も再読していても、忘れているので、何度でも読めちゃうのですが、シリーズ2作目にして、浅見くんてば、早速、ヒロインの佐和とチューしてんですね。(´ー`)┌
恋多き男ですな。
シリーズ化が順調になってくると、手の早い浅見くんも何故か晩生になっちゃって、女っ気なし。
きっと、シリーズが完結するときは、佐和と結婚すんだろうなぁと思う展開でした。










(  ゚_ゝ゚) { 『逢えます』 予知能力者・佐和





テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

 BLOG TOP  » NEXT PAGE