::: ミステリ ::: ★☆☆☆☆
大長編の割には作品全体の出来としては、良くなかったように思う。
謎解きにしても、読者を納得させられるだけの決定打とか、根拠がなく、浅見ちゃんの勘でどうにか乗り切ったという感じです。
事件性を臭わすような小道具をたくさん序盤で用意しいてながら、結果的に選択したのはほんのわずかなものだけなので、物語序盤のミステリアスな展開が全て無駄になっている気がしてならない。
余計な描写が多いだけの長編にしか過ぎず残念。
こういう作品を読むと、ミステリというのは連載小説向きでないということと、しっかりとしたプロットが無いと良質な作品は出来ないということがつくづくわかる。
※ これ以降ネタバレしてます。今回の浅見ちゃんは、「旅と歴史」の取材で、源平合戦における “一の谷の合戦” の謎を解く旅であった。
源義経率いる小隊が鵯越(ひよどりごえ)の切り立った絶壁から、一気に馬で駆け下り、崖下に陣を布く一の谷の平家に奇襲攻撃を仕掛け、見事大勝したという有名な話ですが、実際は、鵯越と一の谷の間には直線距離で8キロという隔たりがある。
その不可解な謎について取材に来ていたはずなのですが、そんなものはそっちのけで、殺人事件に首を突っ込みます。
浅見光彦シリーズの中でも、 “〜伝説シリーズ” では、歴史上の人物をテーマに、殺人事件と上手に絡ませて物語を進ませていくのですが、本作では “鵯越の逆落とし” という興味深い謎は、事件との絡みが無く、無いどころか歴史の謎は中途半端に置き去りにされてしまうので物足りなかった。
似たような展開として、序盤に尾形光琳の屏風がもちだされ、その芸術的価値や、美術品に対する真贋についてのくだりがあり、今回は、芸術作品についてのミステリなのかと思わせるほど詳細に書かれている。
ところが、それは事件の発端にしか過ぎない。
昇栄海運の会長・小野田修三の人物像や、宮水に関する利権問題にしても、必要以上に書き込まれている割りには、結果的には事件とは何ら関係が無かったりする。
ミスリードのための伏線というよりは、明らかに当初考えていた意図とは違う展開になってしまったという観がしてならない。
プロットをそこそこに書き始めている作品という気がして、読む側としては手抜き仕事のように思えて気分が良いものではない。
今回は麻薬絡みの事件であり、暴力団と、小野田家を乗っ取ろうと企む義理の息子・広瀬と、小野田家を守るために犯罪に手を染めた執事の犯行だったわけですが、肝心の麻薬に手を出した修三の娘の扱いが適当過ぎですね。
物語上ほとんど登場してこない。
それは主犯の広瀬にしろそうなんですが、直接浅見ちゃんと相対するシーンが無い。
ヒロインの亜希とでさえ出会うのも後半に入ってからですし、その後も行動を共にするシーンもあまりない。
そのせいか、事件の核心に迫るだけの根拠が非常に薄い。
結果的に、浅見ちゃんの勘に頼るところが大きくて不満が残る。
また、浅見も亜希も事件の顛末は人任せという点が非常にすっきりしない。
特に浅見ちゃんは、他人の家で粗探しをするだけしといて、後はどうぞご自由にという態度が好きになれない。
著者の十八番でもある、犯人自らが死を持って罪を償うという終わり方は、著者の美意識なのでしょうが、身の処し方を問われなければ、犯人はそのまま生活を続けていたはずなので、美しい終わり方とはいえない気がしますね。
人物設定については大正時代の話か? と思うほど古臭い。
ラストで亜希が竹久夢二の絵を見て感慨にふけるシーンがあり、大正から昭和初期の時代を意識して書いた作品だったのかなぁと思える。
芦屋に住むお嬢さまという設定である亜希が、一見して勝気で強そうに見えるが、その中身は弱々しい存在なのに反して、亜希の母親はおっとりしてひ弱に見えるが、本質はとても強くたくましいという対比は読んでいて面白かったです。
ラストで亜希が意に添わない縁談に乗っちゃうという設定も、著者としては、亜希が母親の本当の姿を知ることで、その生き方に敬意を持ったことと、事件を通して亜希が成長したことを、大正(昭和初期)の時代背景を利用することで、より効果的に表現できたのかなと思います。
現実的なわたくしにしてみれば、結局は親の言いなりで自分の考え無しかよと思ってしまうところだが。。。
( ゚_ゝ゚) { 『女なんて、いつの時代も似たようなものなのかな』 苦労を知らないお嬢さまに説得力はない。
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