::: ミステリ ::: ★★☆☆☆
水乃サトルシリーズ7作目(大学生篇3作目)です。
何かとタイミングゥ〜なせいでしょうか、著者の、しかも水乃サトルシリーズを立て続けに3冊読みました。
まず、2008年9月に刊行された最新刊 『鬼蟻村マジック』 を皮切りに、シリーズ第1作で、文庫(新装版)の 『軽井沢マジック』 、そして、2005年にノベルスとして刊行された本書が、2008年10月に文庫化したので読んでみたという具合。
なので、別に嫌いなわけじゃないのですが、しばらくは著者の作品は遠ざけたい気分です。(笑)
水乃サトルシリーズは、著者の作品中では、かなりライトなミステリという印象があり、基本的には読みやすい。
ジュブナイル感覚ですね。
わたくしの子供時代のように、海外作品の意味のわからん翻訳ミステリを読まざるをえない世代からしたら、今の子供達は何て贅沢なのかしらと思うくらい、サービス満点な読みやすさだ。
著者の作品に限らず、子供の為の子供向けのミステリをわざわざ書いてやってる作家さんはえらいなぁと思いますよ。(´ー`)┌
しかし、何も子供騙しな本というわけでもなく、大人も十分に読めるわけですが、今回に限っては、かなり人を選ぶかなぁと思います。
タイトル通り、手塚治虫マンガのコレクター達が関わった殺人事件が起こります。
おそらく手塚作品に関する薀蓄等はあるであろうことは、百も承知ではあったが、わたくしの予想よりもかなりカルト度が高かった。
手塚作品といったら、 「ブラック・ジャック」 とか、 「火の鳥」 といった名の知れた、というかもはや国民の常識といっても過言ではないほど有名な作品くらいしか読んだことがないわたくしにとっては、手塚作品の薀蓄はかなり重たかった。
鬱陶しいとまではいかなくも、そこまで知らなくてもいいんだけどなぁ。辟易。。。という感じです。
ただ、著者のオタクっぷりがすごいです。
水乃サトルは、著者のオタク部分を形にしたキャラクターなわけで、マンガに限らず、著者はいろんな物事に熱中する方なんでしょう。
そして、それを突き詰めて1つのミステリ作品にまで創り上げてしまうんだから脱帽です。
本書では、手塚作品の薀蓄だけでなく、古書についての薀蓄も必読です。
わたくしには古書に価値を見出すという趣味は全くないので、未知の世界の話を知ることはとても興味深かったです。
どっちかっていうとミステリよりも、古書の薀蓄の方が面白かったほど。。。(笑)
余談ですが、カッパノベルス(光文社)版では、手塚治虫先生のたくさんのマンガの背表紙の写真が表紙になっている。
文庫版の方は、手塚作品の(どれかは不明)ワンシーンが表紙に使われている。
ちょっと気になるのが、その文庫版の表紙のワンシーン。
手塚キャラの間久部緑郎(ロック)が必死の形相で車を運転しているコマなんです。
本書を読む前から疑問に思っていたんですよね。
ノベルス版の方は、背表紙の写真だったのに、何故、文庫版では、作品のワンシーンをそのまま表紙にしているのか。。。
作品のコンセプトを考えたら、ノベルス版のようなデザインが最適だと思うのですが。。。
それと、何でこんな脈絡も無いワンシーンを表紙に使ったのか謎だったんですが、読後、よくよく考えてみたら、本編ミステリ部分でのヒントになっていたことに気づかされる。
表紙も伏線というミステリらしい装丁はよく考えられている。
ただ、裏を返せば、文庫版の表紙で、これは手塚治虫のキャラクターだとか、手塚治虫の作品でしょ? と気づかない人にはお勧めできない本でもある。
中身はもっと専門性高いので。。。
※ これ以降ネタバレしてます。水乃サトルシリーズのタイトルは、決まって “〜マジック” って付くのだと思っていたが、そうでない作品もあるんですね。
調べたところ、社会人篇は “〜マジック” で、大学生篇が、 “〜の不思議” というタイトル付けらしい。
結構こだわりのある作者のようです。
わたくしは、3冊目にして初めてその大学生篇とやらを読んだのですが、まず思ったことが、主人公・水乃サトルの性格というか、人物造詣がかなりひどいです。(笑)
作者に躁鬱の気があるんじゃないかっていうくらい、波が激しい。
本書は、躁(ハイ)な水乃サトルでした。(´ー`)┌
ゲーム性の高いミステリ(フィクション)で、殺人の動機がどうのって言ってみても意味がなさそうですが、それにしても、殺人犯の心理も、探偵の人物造詣もむちゃくちゃですよ。
己が唯一のコレクターになりたいからという理由で、殺人を犯しますかね?
コレクションを奪いたいからというストレートな動機の方は、わかりやす過ぎてダメなんですかね?
犯人が精神的疾患があったというとってつけたような言い訳も、長年本格ミステリを書いている作家としては苦しいかな。
それと、水乃サトルのあのハイなキャラクターはちょっと痛い。
明るい性格というよりは、ヘラヘラし過ぎだし、所詮は他人事のような言動には真摯さが欠ける。
そういうキャラにしたならそれはそれでいいんですよ。
けど、そんなキャラが、被害者に対する同情や、犯人に対する怒りだけ人並み以上でアピールされても、全てが嘘臭く聞こえてならない。
宝塚かミュージカルの大げさな芝居を観ているようで、ぜんぜん、説得力ない。(笑)
なんだこいつ、偉そうなこと言っても、結局はただの八方美人じゃないかで逆に魅力ダウンですよ。
もう一つが、わざとなのか、著者のセンスなのかわからないが、サトルの変人っぷりを表現する部分が、かなりわざとらしいのですよ。
まるで、今時ナウいとか、バイちゃとか、死語を平気で言ってのける人みたいです。
個人的には、うぜぇというか、サトルの言動に付き合う(くだらない会話を読む)のがめんどくせぇという感じです。(笑)
いきなり駄目だししてますが、肝心のトリック自体は、良かったと思います。
心理的密室と、物理的密室は、読んだ瞬間に “あぁ〜そうかっ!” とまるでアハ体験したくらいの衝撃。
心理的密室は、奇術(マジック)の技法が光る。
自殺にみせかけて絞殺したはずなのに、何故、窓やドアの内側からガムテープで目張りする必要があったのか。。。
とくに、窓にまで目張りをしたことが重要である。
窓に一分の隙間もなく、しっかりとガムテープで目張りされていたという事実が、ドアの内側にもおそらく同じように目張りがされていたであろうと、ドアを破った人間に錯覚させることが出来る。
実際は、ドアのガムテープは剥がれかけた状態であった。
ドアを蹴破った段階で、内側にガムテープがしっかり目張りされていたかどうかなんてわかるわけがないですしね。
犯人は、ドアから入って、ドアから出て行けたわけです。
物理的密室は、ホテルマンの春山明美が実行犯であり、星城明人殺害時に、明美が勤めるホテルに宿泊していた明人の父親の車のキーと、同じキーホルダーについていた星城宅の玄関の鍵を盗み、ずうずうしくも父親の車で星城宅まで乗りつけ、堂々と玄関から鍵を使って侵入し、明人を殺害するという犯行方法。
被害者の家族の車を使うという発想は目から鱗なんですが、水上温泉から、東京まで車で行くにしても、そんなに長い時間、他人の鍵を持ち続けられるもんでしょうか?
わたくしは車を所持していないのでわかりませんが、車でホテルに来た場合、ホテルの規模にもよるでしょうが、玄関先で送迎係りに車を預け、駐車をお願いするのだと思う。
当然のことながら車の鍵を送迎係りに貸すわけです。
しかし、駐車が完了したらすぐに鍵は客に返しませんか? 普通。
宿泊している間中、車の鍵はホテルマンに預けたら、客には返さないもんなんですかね?
わたくしだったら、まずは車の鍵だけ渡して、駐車が完了したら即効で返してもらいますけど。。。
外出する際は、フロントに車の鍵を預け、玄関先まで転がしてきてもらいますが。。。
あと、家の鍵までついたキーホルダーごと他人に預けるかという点にしても、著者とわたくしとでは認識が異なるようです。
その部分がすっきり納得できていれば、トリックとしては素晴らしいと思うのですが。。。
今回の事件の主犯は、三浦良介で、共犯(実行犯)が春山明美でしたが、最初から最後まで三浦が怪しいと思わずにいられない。
大河内はレッドヘリングだろうと。
三浦に関しては、物語上、登場させる必然性を感じないのに、事あるごとにチョロチョロと出てくるんですよね。(笑)
もう怪しいったらありゃしない。
推理で当てられない犯人当てって意味ないんですけどね。
犯人当てという点においては、いまいちだわ、星城殺害の動機は非現実的、大河内と三浦の接点や殺害にしても伏線らしいものもなく、サトルの直感といってもいいくらいで、無理やり感一杯だ。
決定打は、山口美也子が犯した殺人未遂事件ですよ!
三浦への憧れから、一転、サトルへ恋愛感情が移ったかと思ったら、結局、三浦の恋人・明美への嫉妬心から、明美を滅多打ちですか。。。
しかも彼女は高校三年生(未成年)ですよ。
殺しに年齢や性別は関係ないのかもしれないが、それまで品行方性な女性として描いておきながら、女の顔を正面から鉄パイプで滅多撃ちですか。。。大胆な裏切りじゃないですか。(笑)
女子高生ならせいぜい相手の髪を掴んで、引きずりまわすくらいが関の山だと思っているわたくしの認識は甘いんですかね?
というか、この小説に登場してくる人物は、どいつもこいつも人格破綻してます。(笑)
ジギルかハイドか。。。(´ー`)┌
ミステリのハウダニットに関しては、必読の価値がある作家かもしれないが、人物を描かせたらひどい。
これだけ、人格に波があったら、何でもありやがな。
ある意味、警察官が犯人だったというオチよりもタチが悪いかも。
真面目(?)にミステリ書いてれば、もっと評価が高いと思うのですが。。。
( ゚_ゝ゚) { 『あるはずの本がなくて、ないはずの本がある。 その上、あるに決まっている本が最初からない─』 とんちですか?
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