::: ミステリ・ファンタジー ::: ★★★☆☆
2004年版 『本格ミステリ・ベスト10』 で17位という中途半端な位置にランクインした作品。
“城”シリーズの3作目にあたり、講談社ノベルスとして刊行。
2007年から順次文庫化されており、その都度図書館でお借りして読んでいる。
過去の2作品と本書を読んで、やっとこ著者の作風というか、スタイルが掴めてきた。(笑)
とにかく著者はオリジナリティだけは、強烈なインパクトを持っている作家ではあります。
ただ、それが読み手の感性と合いづらいのではと思う。
存命中は全く評価されないが、死後、偉大な芸術家として評価されるようなタイプ?(笑)
人を選ぶ作品、作風ではある。
わたくしは、1作目(『クロック城』殺人事件)を読了後、2作目(『瑠璃城』殺人事件)を読む時点で、かなり用心してというか、石橋を叩いて読んだつもりだったのですが、ことごとく裏をかかれてます。
それは、本書(3作目)でも教訓とはならずに、もう、完敗です。(笑)
予想に反したというか、予想を上回る攻撃には手も足も出ません。
おそらく、4作目も読者の思い通りにはならない作品になっていることだろう。
もう読まずに敗北宣言しておきます。
著者にしても、作風にしても、とにかく掴み所が無いといった表現が一番適当かと思う。
バカミス? と思いきや、ミステリに対する知識や見識は高く、不真面目(本格ミステリを嘲笑するような)にミステリを書いているわけでもなさそうなんだ、これが。
古典的な本格ミステリを書くだけの技量はあるぜ、ってそこはかとなく主張しているのに、読者の期待をあっさり裏切ったりする。
しかも、裏切られても、また読んでしまいたくなる不思議な魅力満載だから困るんだよ、これが。
本書では、孤島に立てられた妙ちくりんなアリス・ミラー城に、探偵達が一同に集められる。
城のどこかに隠されていると云われている “アリス・ミラー” を探し出すためだ。
しかし、何者かによって1人、また1人と探偵達が殺害されていく。。。
城(館)に、孤島、そして、アガサ・クリスティの 『そして誰もいなくなった』 を彷彿とさせる世界観。
密室殺人に、バラバラ殺人。
古典的な本格ミステリに必要なガジェットは整っている。
さらに、メフィストらしい(?)、ちょっとイっちゃてる系の探偵達。
これは普通に、新本格っぽいミステリやっちゃうのか? と期待も膨らむ。
読み始めは、登場人物達の名前に悪戦苦闘しながらも、じょじょに物語に引き込まれていく。
前の2作に比べるとかなり面白い!
おぉ、これは久々のヒットとなる作品か? などと、手から放たれた風船のごとく高く期待も舞い上がる。
しかし、もうちょっとで昇天かってところで、無情にもカラスに突付かれて、哀れ風船の残骸は地面に叩き付けられるわけです。(笑)
何故、何で、どうして、クライマックス(謎解き)で、あんなにも読者は叩き付けられなければならないのか。。。(´ー`)┌
脳みそ真っ白、目が点、お口ポカァ〜ン、ですよ。(笑)
あの一瞬、わたくしは間違いなく廃人になってましたね。(´ー`)┌
あの真相を膝を叩いて納得する読者っているのだろうか?
それとも、著者は盛り上げ過ぎちゃって、どうにもこうにも結末を収束できなかったのだろうか?
衝撃のというか憤激の結末の本書に、わたくしは何故、星3つという大サービス(とうとう狂ったか?)なのだろうか。
確かに、ひどい結末ではあるよ。
だけど、そこに至るまでの謎と論理(強引だが)は、それを凌駕するだけのものはあったと思う。
著者の十八番でもある独創性(=非現実性)の際立つ物理トリックも楽しませて貰った。
さらに、本格ミステリにおける物理トリックに対する考察なんかは、必読の価値はある。
また、本書ではルイス・キャロル原作の 『不思議の国のアリス』 、 『鏡の国のアリス』 をモチーフにしており、文学ミステリとしての面白さも兼ね備えている。
多角的な方向から読める。
ただ、結末がいただけないだけ。。。
星4つ、5つになり得るだけの作品だっただけに、何とも惜しい。
※ これ以降ネタバレしてます。ミステリ小説でありながら、ミステリの評論としての役目も兼ね備えている作品という印象を受けました。
登場人物達が、物理トリックについて議論するシーンなど興味深かったです。
物理トリックをメインにこれまで作品を発表してきた著者の自虐的ともいえる私見。
“自虐的” というのが、本書でのテーマかとさえ思える。
古典的様式のミステリに対して、キャラクター小説に対して、そして、非現実的な物理トリックに対して、徹底的に風刺している。
本格ミステリでは、フーダニットやハウダニットは、とても重要な要素であり、そこに論理性を求める。
論理的であるからには、読者に対してフェアでなくてはならない。
この根幹ですら、本書では滑稽にしてしまっている。
あれだけ本格ミステリらしい道具立てをしておきながら、登場人物達も読者も知らない人間を犯人ですと登場させるのだから。。。
お口ポカァ〜ンにならない方がどうかしている。
その犯人の殺害動機も狂気の沙汰であり、どこかのテロ思想を持った宗教団体の教祖レベルです。
酸性雨で破壊された土壌を正常化させるために、人間の体(組織)が欲しかった、とか、環境破壊の元凶である人間の数を減らす、なんて動機で殺されるのだから。
これまで読んできたミステリの作品でも、殺人犯の動機が軽視されがちなものはたくさんあったが、その中でも本書はワースト3に入りそう。
酸性化した土壌を中和するのに人間じゃなくたって、動物だっていいし、中和剤を科学的に作れるんじゃないのとか、普通考える。
ターゲットとなった人選も、何故、探偵でなくてはならないのか?
人間を減らすことが目的なら、女性を優先的に殺した方が手っ取り早いはず。
何より、密室殺人にする必要性が全く無い。
探偵達を個別にしとめる為の囮(罠)という理屈も苦しい。
バラバラ死体の利用法なんて、ピタゴラスイッチかよっ! と突っ込まずにはいられない。
これもそれも全部ひっくるめて、著者の計算なわけです。
これも1つのミステリに対する愛情表現と思いたいです。
いつか、20年後くらいに再読してみたいです。
その時には、何でこの本に星3つなんやろ? と違った意味で、お口ポカァ〜ンになっているかもしれませんが。(笑)
( ゚_ゝ゚) { 『物理トリックの歩んだ道は強現実への服従と敗北だ。』 “現代人の失っているもの。それは静かで激しい拒絶だ。” っていうのを思い出した。
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