『アリス・ミラー城』殺人事件

00:38 Fri 07.11
「アリス・ミラー城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-3)「アリス・ミラー城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-3)
(2008/10/15)
北山 猛邦

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::: ミステリ・ファンタジー ::: ★★★☆☆


2004年版 『本格ミステリ・ベスト10』 で17位という中途半端な位置にランクインした作品。
“城”シリーズの3作目にあたり、講談社ノベルスとして刊行。
2007年から順次文庫化されており、その都度図書館でお借りして読んでいる。

過去の2作品と本書を読んで、やっとこ著者の作風というか、スタイルが掴めてきた。(笑)
とにかく著者はオリジナリティだけは、強烈なインパクトを持っている作家ではあります。
ただ、それが読み手の感性と合いづらいのではと思う。
存命中は全く評価されないが、死後、偉大な芸術家として評価されるようなタイプ?(笑)
人を選ぶ作品、作風ではある。

わたくしは、1作目(『クロック城』殺人事件)を読了後、2作目(『瑠璃城』殺人事件)を読む時点で、かなり用心してというか、石橋を叩いて読んだつもりだったのですが、ことごとく裏をかかれてます。
それは、本書(3作目)でも教訓とはならずに、もう、完敗です。(笑)
予想に反したというか、予想を上回る攻撃には手も足も出ません。
おそらく、4作目も読者の思い通りにはならない作品になっていることだろう。
もう読まずに敗北宣言しておきます。


著者にしても、作風にしても、とにかく掴み所が無いといった表現が一番適当かと思う。
バカミス? と思いきや、ミステリに対する知識や見識は高く、不真面目(本格ミステリを嘲笑するような)にミステリを書いているわけでもなさそうなんだ、これが。
古典的な本格ミステリを書くだけの技量はあるぜ、ってそこはかとなく主張しているのに、読者の期待をあっさり裏切ったりする。
しかも、裏切られても、また読んでしまいたくなる不思議な魅力満載だから困るんだよ、これが。


本書では、孤島に立てられた妙ちくりんなアリス・ミラー城に、探偵達が一同に集められる。
城のどこかに隠されていると云われている “アリス・ミラー” を探し出すためだ。
しかし、何者かによって1人、また1人と探偵達が殺害されていく。。。
城(館)に、孤島、そして、アガサ・クリスティの 『そして誰もいなくなった』 を彷彿とさせる世界観。
密室殺人に、バラバラ殺人。
古典的な本格ミステリに必要なガジェットは整っている。
さらに、メフィストらしい(?)、ちょっとイっちゃてる系の探偵達。
これは普通に、新本格っぽいミステリやっちゃうのか? と期待も膨らむ。
読み始めは、登場人物達の名前に悪戦苦闘しながらも、じょじょに物語に引き込まれていく。
前の2作に比べるとかなり面白い!
おぉ、これは久々のヒットとなる作品か? などと、手から放たれた風船のごとく高く期待も舞い上がる。
しかし、もうちょっとで昇天かってところで、無情にもカラスに突付かれて、哀れ風船の残骸は地面に叩き付けられるわけです。(笑)

何故、何で、どうして、クライマックス(謎解き)で、あんなにも読者は叩き付けられなければならないのか。。。(´ー`)┌
脳みそ真っ白、目が点、お口ポカァ〜ン、ですよ。(笑)
あの一瞬、わたくしは間違いなく廃人になってましたね。(´ー`)┌
あの真相を膝を叩いて納得する読者っているのだろうか?
それとも、著者は盛り上げ過ぎちゃって、どうにもこうにも結末を収束できなかったのだろうか?


衝撃のというか憤激の結末の本書に、わたくしは何故、星3つという大サービス(とうとう狂ったか?)なのだろうか。
確かに、ひどい結末ではあるよ。
だけど、そこに至るまでの謎と論理(強引だが)は、それを凌駕するだけのものはあったと思う。
著者の十八番でもある独創性(=非現実性)の際立つ物理トリックも楽しませて貰った。
さらに、本格ミステリにおける物理トリックに対する考察なんかは、必読の価値はある。
また、本書ではルイス・キャロル原作の 『不思議の国のアリス』 、 『鏡の国のアリス』 をモチーフにしており、文学ミステリとしての面白さも兼ね備えている。
多角的な方向から読める。
ただ、結末がいただけないだけ。。。
星4つ、5つになり得るだけの作品だっただけに、何とも惜しい。














※ これ以降ネタバレしてます。







































ミステリ小説でありながら、ミステリの評論としての役目も兼ね備えている作品という印象を受けました。
登場人物達が、物理トリックについて議論するシーンなど興味深かったです。
物理トリックをメインにこれまで作品を発表してきた著者の自虐的ともいえる私見。
“自虐的” というのが、本書でのテーマかとさえ思える。
古典的様式のミステリに対して、キャラクター小説に対して、そして、非現実的な物理トリックに対して、徹底的に風刺している。

本格ミステリでは、フーダニットやハウダニットは、とても重要な要素であり、そこに論理性を求める。
論理的であるからには、読者に対してフェアでなくてはならない。
この根幹ですら、本書では滑稽にしてしまっている。
あれだけ本格ミステリらしい道具立てをしておきながら、登場人物達も読者も知らない人間を犯人ですと登場させるのだから。。。
お口ポカァ〜ンにならない方がどうかしている。
その犯人の殺害動機も狂気の沙汰であり、どこかのテロ思想を持った宗教団体の教祖レベルです。
酸性雨で破壊された土壌を正常化させるために、人間の体(組織)が欲しかった、とか、環境破壊の元凶である人間の数を減らす、なんて動機で殺されるのだから。
これまで読んできたミステリの作品でも、殺人犯の動機が軽視されがちなものはたくさんあったが、その中でも本書はワースト3に入りそう。
酸性化した土壌を中和するのに人間じゃなくたって、動物だっていいし、中和剤を科学的に作れるんじゃないのとか、普通考える。
ターゲットとなった人選も、何故、探偵でなくてはならないのか?
人間を減らすことが目的なら、女性を優先的に殺した方が手っ取り早いはず。
何より、密室殺人にする必要性が全く無い。
探偵達を個別にしとめる為の囮(罠)という理屈も苦しい。
バラバラ死体の利用法なんて、ピタゴラスイッチかよっ! と突っ込まずにはいられない。


これもそれも全部ひっくるめて、著者の計算なわけです。
これも1つのミステリに対する愛情表現と思いたいです。
いつか、20年後くらいに再読してみたいです。
その時には、何でこの本に星3つなんやろ? と違った意味で、お口ポカァ〜ンになっているかもしれませんが。(笑)








(  ゚_ゝ゚) { 『物理トリックの歩んだ道は強現実への服従と敗北だ。』 “現代人の失っているもの。それは静かで激しい拒絶だ。” っていうのを思い出した。







テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

Bk.034 『瑠璃城』殺人事件

16:12 Fri 04.04
「瑠璃城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-2)「瑠璃城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-2)
(2008/03/14)
北山 猛邦

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::: ミステリ・ファンタジー ::: ★★☆☆☆


著者の作品を読むのは本書で2作目なんですが、評価はもちろんですが、ジャンル分けにしても悩む。
というか、本書を語るのはとにかく難しい。。。(笑)

ジャンルとしては、前作の 『「クロック城」殺人事件』 にしても、表向き(タイトルから)はミステリ小説としか思えないのですが、読んでみると、ミステリとは名ばかりで、SFか、ダーク・ファンタジー路線なんですよね。
ジャンルといっても個人の主観でしかないので、わたくしの感覚で決めてますけど。。。
『「クロック城」殺人事件』 では、滅亡を迎える近未来の地球が舞台であり、本書では輪廻転生がテーマ。
SFだろうが、ファンタジーだろうがどっちでも良いのかもしれない。
ただ、個人的にはSFは科学的な世界観というか、概念とか理論といったものが、物語上しっかり構築されていないとそれらしく思えないという点からいうと、本書では輪廻転生について何も語られていない為、ファンタジーと考えた方がよいのかもしれないですね。

ミステリとしては名ばかりと書きましたが、一応、惨殺(首切り)殺人事件が起きて、奇想天外な物理トリックが仕掛けられてます。
しかし、それを見抜くのはもはや不可能としか言いようが無い。
大体にして、輪廻転生という事象が存在しては、犯人は幽霊だったとか、探偵が超能力者だったみたいなオチと変わらず、要は謎解きする上で著しく読み手に不利なわけですよ。
ある程度ルール付けがされているならフェアだと思いますが。。。
物理トリックにしても、3%くらいは犯行可能かもしれないというレベルのもので、こちらもかなりご都合主義で、運に頼ったものだったりする。
しかし、それらはあくまでも前菜であり、カモフラージュであると考えた方がよいでしょうね。
メインは著者が作り上げた世界観を使って読者を騙すこと。
それこそが著者が仕掛けたトリック。
それがわかった上でのミステリ小説として読まないと、心底つまらない駄文でしかない。。。
奇天烈なトリックとは言いつつも、その発想力は素晴らしいものがある。

前作も読んで思ったのが、著者の作風は独自性が際立っているということ。
清涼院流水ほどぶっ壊れてないが、上遠野浩平よりも完璧ではないという感じ。(笑)
どちらにせよ、凡人には真似できない感性であることは確かだと思う。
が、余計なお世話ですが、小説(文章)書いてるより、ゲームのクリエイターになった方が成功しそう。
もしくは奇抜な発想が受けるラノベとか。
というのも全体的な描写が無機質な印象を受けるし、登場人物の名前のセンスも最悪。
彼らの感情の薄いうそ臭い人間描写、どれもこれも作風としてはかなり人を選ぶと思える。


結構けなしてますが、評価はわたくしとしては甘ちゃんな星2つです。
正直、小説としては良いとこなしと思うのですが、やはり、世界観に惹かれるのと可能性を感じる。。。気がする。(笑)
捨てようかどうしようか迷う。。。そんな本。(この表現もひどいね。。。)












※ これ以降ネタバレしてます。







































輪廻転生という素地に、時空を行き来できるスノウウィという人物が存在して、初めて成功するミステリ。
ただ、非常に難解な構成だった。
図説も多く挿入して解説しているのに、ちんぷんかんぷんですよ。(´ー`)┌
これ読んで一発で理解した人っているのかなぁ〜?
もっかい読む気力もないし、小説としてさして面白いと思わなかったので、二度と読む気はしない。(笑)
こんなややこしい設定を考えついた著者の発想力と、脳みそは大したもんだと素直に思う。
せめて西尾維新くらい柔らかければ、一般受けしたのかもしれない。


物語は、1989年の日本の図書館、1243年のフランスの瑠璃城、そして、1916年のドイツ・フランス前線の3つのパートから成り立っている。
それぞれのパートは輪廻転生した2人の男女が体験する殺人事件と、恋愛の行方を追っていくというもの。
構成として上手いのが、呪われた短剣の起源が、時間の流れ(年代)とは逆行した形で、現在だと思っていた1989年にあったということ。
さらに、それぞれの年代で起きた殺人事件の死体を、他の年代に移すことで、不可能犯罪を成し遂げるという奇抜なアイデア。
常識を覆す発想はすごい。
しかし、その世界観や物語の展開は、ほとんど著者の強引な押しで進められていくので、読者としてはただ文章を追っていくしかないところが面白さ半減。

ど派手なイリュージョンを見るような、奇天烈な物理トリックに関しては、それはそれで面白いとは思う。
駄目だしするつもりは毛頭ない。
ただ現実性が著しく乏しいので、ファンタジーやアニメの世界でしか通用しそうもない。
逆に言えば、オーソドックスな本格ミステリを書かせたら、どんな作品になるのか。。。?
期待するのは無理ですかね。。。









(  ゚_ゝ゚) { 『無秩序というのは運命に逆らおうとする力なんだよ。』 だからこの世は混沌としているんですかね。







Bk.089 『クロック城』殺人事件

22:02 Thu 08.11
「クロック城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-1)「クロック城」殺人事件 (講談社文庫 き 53-1)
(2007/10)
北山 猛邦

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::: ミステリ・ファンタジー ::: ★☆☆☆☆


何がしたかったのか? よくわからない作品。
さすが、メフィスト賞作家と驚愕するべきか、やっぱ、メフィスト賞作家だったかと落胆するべきか。。。

ろくすっぽあらすじを読まずにタイトルだけで読んでしまった。
お城で起こる殺人事件! なんて楽しそうなんだなどと思ってたんですが、舞台設定が近未来のSFファンタジーだった。


太陽の黒点異常により、世界各地で磁気異常とそれに伴なう異常気象が多発。
地球が崩壊する一歩手前という終末思想全開の日本が舞台。
主人公の深騎(みき)は、ボウガンを武器に、曰くありげな少女・美菜美(みなみ)と探偵をしているという設定。
黒鴣瑠華(くろくるか)というクロック城に住む少女から “スキップマン” を退治して欲しいという依頼を受ける。
早速、城に向うが、首切り連続殺人が発生する。

終末観に、美形萌えキャラ、奇妙な館、シリアルキラー、理系ミステリ特有の薀蓄。。。
著者が本書でデビューを飾った数年前には、佐藤友哉とか、西尾維新といった無茶苦茶な作家がデビューしているだけに、作風が似すぎていて面白くない。
しかも、著者の場合、2匹目のどじょうっぽい感じも否めない。
そのせいか、世界観も、キャラも、全てが中途半端。
十一人委員会? 真夜中の鍵? 軍隊崩れのSEEMとか、これみよがしな萌え所をわざと用意している点が鼻につく。
読者はバカではない。
疑似餌には引っ掛からない。
用意されたモノには、見向きもしないのが萌え社会(笑)の現象。
作者の意図していないところで、萌えちゃうのが良いのですよ。きっと。
また、結局のところどれもこれも、中途半端に置き去りにして、尻すぼみで終わってしまっている点もすっきりしない。
まとまりが無い上に、やり投げ、出しっぱなし、ぶん投げ、そんな言葉が頭をよぎるような終結は好ましくない。
おそらく、シリーズ化を狙って残した曖昧さだったのだと思うが、著者の狙い通りとは行かなかったようです。(´ー`)┌


何よりも、最大の謎が、解説を有栖川センセが書いているということ。。。
何故。。。?( ̄〜 ̄)











※ これ以降ネタバレしてます。





































結局、美菜美ちゃんは、実体化した幽霊ってことなのかな?
深騎以外の人間には、普通に実体のある人間に見えるという設定でいいのかしら。。。?
この幽霊でもない “ゲシュタルトの欠片” とかいう設定は、ミステリとして見た場合、必要だったのかな?
密室(状況としての)で連続殺人が行われたという設定で、幽霊のような存在を認めちゃうと、推理小説として意味無くないか?
他にも、クロスという人物が人間が立ち入ることが出来ない結界を張れる能力を持っていたりする。
そんな超能力者がいたら、犯人は? とか、どうやって? なんて考えるのがバカバカしくさえ思える。
本格推理とは言いがたい。
まだ、SFという設定なのだから、そういった不思議な能力を堂々と犯罪に利用し、かつ論理的にトリックを解明する手段があったのだとしたら納得がいくが。。。
何よりも、殺人事件という生臭く現実的な事件の謎よりも、ゲシュタルトの欠片という存在や、超能力者のような能力を持つ、怪しげな団体の方が、よっぽど謎であり解明が必要に思うのだが。。。


あんなどデカイ時計がこれみよがしに3つもあって、タイトルまで “クロック” なのに、殺害トリックには全く使われてなかった、という展開の方が逆に驚いたかもしれない。。。(*´,_ゝ`)
そんなこともなく、犯人は時計の針を利用したんだろうなんてことは想像に難くない。
あれですよ、アニメ映画の 『ルパン三世 カリオストロの城』 を連想しちゃいますよね。
エロ伯爵とルパン三世が、時計塔の針の上を歩く姿をさ。
しかし、犯人がどうやって、時計も持たずに時間を知ることが出来たのか? という点においてはまだ納得は出来るかな。
死後硬直の具合を知るためと、殺害した証拠として首を切ったという点などは、奇抜なアイデアであるとは思う。

とは言っても、ミステリとしても、SFとしても、ファンタジーとしても、子供の “ごっこ遊び” のレベルで、どれも中途半端であることには変わりはないですが。。。








(  ゚_ゝ゚) { 『世界が終わる瞬間、あなたは誰と一緒にいたいですか?』 “誰と” は難しいが、せめて、 “誰か” はいて欲しい。







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