Bk.022 風果つる館の殺人

22:50 Sat 28.04
風果つる館の殺人 (カッパ・ノベルス)風果つる館の殺人 (カッパ・ノベルス)
(2006/08/22)
加賀美 雅之

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::: ミステリ ::: ★★★☆☆


読みたいなぁとは思っていた作家さんの作品ですが、たまたま図書館の返却棚でちょこりんと座って、わたくしを迎えてくれたので借りました。(´v`)


読み始めて、登場人物達が外国人という設定にちょっと引きました。
わたくし海外作品を苦手としているので、正直、ちょっと読むのを躊躇したのですが、作家が日本人なので、そう難しいこともないかなとがんばりました。'`,、('∀`) '`,、

600ページの長編でしたが、初めから終わりまで、思った以上にとても読みやすい作品でした。
個人の日記か、事件記録を読んでいるという印象で、プロの物書きとしては、表現力に乏しいものを感じますが、個人的には、長編を途中で投げ出すことなく、一気に読ませてくれたので良かったです。


本作は館もの、資産家の遺産相続、奇妙な連続殺人と、ミステリの古典を忠実に手本にしている。
著者自ら、 『犬神家の一族』 のオマージュとしているように、ミステリー好きにはたまらない作品だと思う。
『このミステリーがすごい!』 や 『本格ミステリベスト10』 では評価されなかったが、『本格ミステリー・ワールド』 で、選考したプロの目は高い評価を下した。
新鮮さや斬新さばかりが追求されていき、そこに支持が集まる昨今のミステリー小説の中で、古典的な様式美にこだわった作風が、本格ミステリの原点に還らせるきっかけだとしたら意義があったのかと思う。
わたくしがその昔、横溝正史や綾辻行人の作品を夢中で読んでいた時代を懐古しつつ、楽しんで読んだように。
思いっきり、著者の思惑にはまってしまった感があるが。。。
ただ、復元された形式に比べ、ミステリとしての中身は荒さが目立つ。


それと1番評価したいのは、内容よりも(オイ)、読者に対してのやさしさというか、丁寧さに好感を持ちました。
主な登場人物の紹介や、相関図は、よくミステリ作品では見かけますが、それ以外にも、物語の舞台となる 『風果つる館』 の平面図だったり、殺害現場となった部屋の間取図、殺害トリックの再現図など。。。
図を多く活用していることがすごく良かったです。
昔のミステリにはよくあったのですが、最近ではとんと見かけなかった。
もちろん文章でも説明はされるのですが、読者にわかりずらいかも(?)という意図があったのかもしれません。
読者に伝わらないと危惧することは、作者にとって文章表現に問題ありと思うところかもしれませんが、わたくしは昔から、ミステリ小説で図があるとすごく好奇心をかきたてられるタイプですし、ミステリにはそんな遊び心というものが絶対必要なので、もっと他の作家の作品にも取り入れて欲しいなと思いました。











※ これ以降ネタバレしてます。






































『お義母さま、ご遺言は─』

このセリフを聞いて、おもわず吹きだしちゃうのは、ミステリ好きしかありえないでしょうね。(´ー`)┌
横溝正史原作 映画 『犬神家の一族』 の初っ端のシーンの再現が、本作で行われている。
映画では、 『お義父さま、ご遺言は─』 なのですが。。。
その 『犬神家の一族』 のオマージュとして書かれたのが本作だそうです。
魔女のような三姉妹、顔を隠したメイド、資産家の遺産相続を巡る骨肉の争いとか、下地は犬神そのもの。
ただ違うのは、登場人物達が外国人(イギリス人やフランス人)であるということ。
今まで、登場人物全員が外国人という設定で描かれた、日本人作家のミステリというのを読んだことがなかったので、すごく不思議な感じでした。
登場人物に関して言えば、横溝風というよりは、アガサ・クリスティー風といった印象を受けました。


わたくしは、著者の作品は本作がデビューなので、まだ、どういった作風なのかということはよくわかっていませんが、古典的な本格ミステリを得意とする作家さんなのかなぁと思いました。
しかも、10年くらい前の作風。
綾辻行人さんの館シリーズに近い匂いを感じました。
若手の作家さんだと勢いが良いし、誰も書いたことがないような奇抜な発想のミステリを書こうと、意欲的な感じがしますが、本作はそういった新鮮さを感じなかった。
ある意味、ハズレは絶対にないが、大当たりもないだろうという手堅い作品とも言える。
王道的作品なので、本格好きにはとりあえずは落ち着いて、安心して読める。

新しいミステリを探求することは大事ですし、それを読んだ時の楽しさもたまらないのですが、それと同じだけ、古典的な形式を重んじるミステリも読みたくなるのがミステリ好きのサガ。
古式ゆかしき世界観にひたるのもまた格別なものがある。


古式ゆかしき世界観を再現したことに関しては、本作は素晴らしいと思うのですが、その反面、肝心の内容とはどうかというと、ちょっと疑問視する部分が目立った。
例えて言うなら、舞台も装置も申し分ないのに、肝心の脚本や、役者の演技がまずかった。。。
そんな印象です。
設定も、演出も、物語の展開も、盛り上げるだけ盛り上げたのに、結果がそれに見合うものでなかった。
あまりにもお膳立てが良すぎたので、そのとってつけたような謎解きには納得がいかない。

第一の殺人のトリックで、パラシュートを使うのも、仕掛けるのもかなり手間がかかる上に、目立ちすぎだと思う。
館にいた誰かが、たまたま散歩に庭に出たら、すぐにバレてしまうようなものだし、何よりも番犬(ランスロット)がいち早く気づく危険性がある。
仕掛けが実行されるまで、それが上手く成功したかどうかも、犯人の知るところでないというのも、わたくしが犯人だったら、そんな自然(風)まかせの穴のある計画は立てないし心理的にもありえない。
1番疑問だったのが、人一人の体重を持ち上げられるだけの風というのが想像できなかったこと。
そんなに強い風は現実的なのか。。。?
さらに、サイロの突端に死体を吊るしているロープが偶然引っ掛かり、犯人が意図した殺害方法とは異なってしまうという設定はありえない気がする。
死体を一気に持ち上げるには、断続的に北から南に吹く暴風しかなく、パラシュートの配置も、サイロの北側にわざわざ置くバカはいないはずなので、飛ばされるパラシュートに繋がれたロープが、北側に戻ってサイロの突端に引っ掛かるという現象は起きそうもない。

イヴォンヌ事件にしても、風に舞った扇子が喉を切ったためによる事故死とな?
謎解きを期待していただけに、そんな解決じゃ誰も納得できないよ。。。(´ー`)┌
第一の殺人のトリックだけアイデアがあって、あとは適当に辻褄合わせて作ったようにしか思えない杜撰さ。
迷路も利用しようと思ったけど、結局、良いアイデアが浮かばずに、放置されてしまったという感じですし、後から取り繕ったような印象は拭えないです。


また、登場人物達の動かし方もすごく下手だなぁと思いました。
複数の人間が登場するにも関わらず、常に動かしているのはパトリックだけで、パトリックの視点で描かれているので、それ以外の登場人物達の中には、途中から急に登場しなくなったり、最初だけちょこっと出たと思ったら、謎解きになって名前だけ出す程度と、物語上いてもいなくてもどうでもいい人間ができてしまう。
お陰で、犯人は事件が起きる前から、医者(ホイットニー・ドリスコル)なんじゃないのと直感が冴えてしまう。
実際、彼が犯人だったわけだけど。(´ー`)┌
また、スタイルズ夫人も顔を隠していることもあり、ケリイ家の女主人、イングリット・ケリイじゃないのと、思ったらやっぱりそれも的中。
パットがメアリーとウィリアムとの仲を疑うシーンも、昔のドラマを見るようなベタベタで、バレバレな演出。
人間描写というか、人間の心理が納得のいくものではなかったですね。
人間を書くのがヘタとしか言いようがない。
登場人物達の恋愛事情や、犯人の殺害動機も、みょうちくりんな遺言状を残した理由も、イヴォンヌ、スタイルズとイングリットの関係も、イヴォンヌ事件のアホらしさとか、仰々しく登場した迷路は事件には無関係だったとか、とにかく全てにおいて “幼稚” という言葉が思い浮かぶ。
読者を納得させられるだけのものではないし、それをベルトランに饒舌に語らせてるのですが、彼が語れば語るほど作品の言い訳のように聞こえるし、強引に説得させられてるような感じでした。
“理屈” で作られたミステリというよりは、 “へ理屈” で作られたミステリじゃないかと思いました。


ミステリとしての内容は酷評に近いものがあるのだが、個人的に好きなタイプ(古典的形式)のミステリであり、トリックの奇抜さ(非現実的でも)と、犯行動機が特定の人間に遺産が受け取れないようにするために計画された、という逆転の発想に意表を突かれた。
それまで遺産相続をめぐる殺人事件というのは、素直に遺産目当ての犯行というのが常だったせいで、その思い込みから、犯人の不可解な殺害行動を生み、謎解きを複雑にさせたのだと思う。
だからこそ、犯人は部外者ではない方が面白かったのではないかとも思うが。。。










(  ゚_ゝ゚) { 『自分の愛する人が自分以外の人を愛しているの知った時、貴方はどうしますか?』 そりゃ。。。仕方ないですよね。。。






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