::: ミステリ ::: ★★☆☆☆
ずっと読みたいと思っていた作家のミステリーをやっとこ手にする事ができました。
本作は 『このミステリーがすごい! 2006年度版』 で第2位に選ばれていました。
期待が大きかったせいでしょうか。
思ったほどの衝撃というのは受けませんでした。
はっきり言えば、物足りなかったということでしょうか。
本格ミステリといえばその部類に落ち着く作品だとは思う。
ゲーム性の強い作品として認識しておけば、読後、腹を立てることもないでしょうね。(´ー`)┌
文章自体は読みやすく、倒叙形式を用い、犯人の視点で描かれており、殺害トリックも凝っているわけでもなく、大どんでん返しがあるわけでもない。
なので、ミステリを読んだ事が無い人や、苦手な人には、このシンプルさ加減は丁度良いとは思う。
しかし、基本的に水面下でしのぎを削りあう、犯人と追及者(探偵役)の頭脳戦、心理戦がメインなのですが、そのいくつかの重要な分岐点にたどり着くまでに、およそ事件に関係の無い(読者にとっては)、登場人物達のバカ話を延々と読み続けなければならない。
これは正直つらいものがある。
このくだらない文脈の中にこそ、伏線があることはわかっているのだが、いくら読書好きとはいえ、退屈この上ないのである。
ミステリ作品としは、いまひとつの評価なのですが、アイデアと演出はとても面白かったと思います。
初めから終わりまで、被害者の部屋の扉を閉ざしたままでの謎解きなんて、考えもしなかった。
大抵この手のミステリでは、被害者の部屋に登場人物達が入り、肝心の死体を発見してからゲームがスタートするところですが、死んでるかどうかもわからないところから推理合戦が始まる。
アイデアは良いのだが、捻りが足りない。
また、ベタベタな推理小説というよりは、論理性だけを追求した、ゲーム感覚のおしゃれなミステリという印象であるのだが、如何せん登場人物達の人間描写がとてつもなく嘘臭く、人間性にも欠けている。
シリーズ物ではないとはいえ、そろいも揃って、色素の無いキャラクター性というのか、立っていないといえばそれまでなんですが。。。
探偵役にしても才色兼備で完璧すぎというのが逆に魅力を失ってしまっているし、犯人なんか、その殺害動機の非現実性に於いては、ゲームだからと割り切らなければ納得できようがない。
個人的には小説で読むよりも、舞台劇にした方がもっと面白くなるような気がしました。
※ これ以降ネタバレしてます。いつ、だれが、どこで、どのようにして殺害したか?
それを最初に提示して創られるミステリが、倒叙ミステリと言われているものですが、それはあくまでも基本であって、作品によっては、 “いつ” や、 “どのようにして” などを意図的に隠すことで、それ自体をトリックの1つの要素として用いたりする変則的なものがある。
本作に至っては、基本的な倒叙形式であり、ミステリ初心者にとっては非常にわかりやすい。
というのも残りの謎、 “何故” だけを探求すれば良いからだ。
つまり、本作は犯人は何故被害者を死に至らしめたか? を解くためのミステリ・ホワイダニットである。
倒叙形式は一見読者に有利に思え、謎解きも簡単そうだが、そうはいかなかったりする。
どんなミステリであれ、圧倒的に有利なのは作家本人だけ。
ただ、細かい動機はわからないにしても、原因というか、動機になりうる要素は掴むことはできる。
一流のミステリ作家ともなれば、その要素すら隠しとおしてしまうのですが、著者は伏線を張るのが下手。
これには、致命的ともいえる人間描写の欠陥が原因と言ってもよいかもしれない。
本作に登場する人間達を見ていて、この人達の口から、 “臓器移植” について語られるのには、極めて違和感を感じた。
また、大学時代の友人が集まった初めての楽しい同窓会という席で、しかも食事の席で、臓器移植の話は正直、空気が重くなるし、デリカシーに欠けているとすら私的には感じるのだ。
同窓会という平和かつ日常的とも思われる空間での、臓器移植という別次元な話題は、あまりにもあけすけすぎる伏線だったりする。
これは、罠か? と思わずにはいられない。(´ー`)┌
また、犯人(伏見)が異常に死体の発見を遅らせたがっている点。
しかも、正確な時間を計測していることが、臓器移植との関連性を強めましたしね。
何故という動機に関しては、ほぼ、被害者(新山)の臓器を移植のために提供させたくなかったということはバレバレになる。
ただ、わたくしは医療に詳しくないので、死んだ人間の臓器が、どのくらいの時間経過すると使えなくなるといったことはわからなかった。
なので、完全には犯人が臓器移植を阻止したかったかどうかまで確信できなかった。
おそらく臓器移植に関しての知識は、一般的には知りえないことだと思う。
わたくしにしても、病院で患者に回復の見込みが無いとか、急死が断定された時点から、鮮度を保ちながらも2、3時間が限度かなぁという想像でしかなかった。
この殺害動機の非現実性はひどいとしかいいようがない。
犯人の目的が、殺人(命を絶つ)という極めて悪質な犯罪を実行することでなく、死んだ後の臓器提供を阻止することにこそ殺害の目的があったのだから。
つまり、臓器提供の意思カードを被害者が持っていなければ、殺害計画も無かったということになる。
何度考えても腑に落ちないのは、犯人に殺害計画を練る頭脳があるのなら、被害者に臓器提供の意思カードを破棄させる方法を考えた方が1番簡単かつ、リスクが少ないと思うのですが。。。
それを言ったらミステリは書けなくなるのでしょうけど、それでなくても本格ミステリーは人間描写が欠落していると言われている中で、ますますもって拍車が掛かって、歯止めが効かないという状況ですね。。。(´ー`)┌
物語の舞台が、東京の世田谷区成城のペンションというのもどうもピンとこなかった。
厳重なセキュリティというのは理解できるが、ペンションという客商売で使われる部屋の安全管理として、いくら貴重なドアだからといって、鍵がちゃちい上に、ドアストッパーを使うという点が、思わず吹きだしちゃうくらいの陳腐な設定。
これを利用することで、なんらかの事故が発生する可能性が生じてくるのは明らか。
何度も言いますが、ペンションであるならば、可能な限り事故防止対策が必須だし、まずそこが譲れない第一条件ですよね。
外からの侵入には万全の対策ながら、中の人間の安全には緩いというのは、あまりにも不釣合いというか、現実性を伴なっていない。
あり得ないだろう。 これも罠? と思うしかないだろうに。
それもこれも扉を開けたくないばかりの苦しい設定。
他に方法無かったんですかね?
もうちょっと自然な設定は作れなかったのかと思う。
ただこれも、人間の心理を考えたら本当に苦しい設定としか言いようが無い。
大学卒業以来、初めて行われた同窓会というのが第一前提なわけで、そこで、いくら疲れているから、睡眠改善薬を飲んだからという理由で、5時間も6時間も放っておきますかね?
これじゃ、何の為に東京までのこのこ出てきたのか意味がないよ。
一時的にでも、人間4時間ほど眠れば充分なはずですし、強引にでも叩き起こすのが普通なのでは?
ところが、呼べど叫べど内線電話のベルでも起きない。。。
これは中で異常な事態が起きていると考えるのも、これ普通だと思うのですが。。。
しかし、登場人物達は呑気にも宴会を続ける始末。
頭脳派の優掛だけがその状況に怪しむという状況もあり得ないよなぁ。
誰がどう考えても、強引に部屋に突入するのがこの場合の正解でしかない。
人の命と天秤に掛けられるモノはないと思うのですが。。。
犯人の動機にしても、登場人物達の行動に於いても、いまひとつ人間性が欠落しているとしか思えない。
論理的な謎解きに於いては、良く出来ていると思う。
それが日常的というか、身近な感覚を感じられるものばかり。
犯人が殺害現場の窓のカーテンを閉じ忘れたり、ウィスキーを日の当たるテーブルに置いたり、身近なものを置きやすいテーブル近くのベッドを使用しなかったりといった些細なミスを、論理的に解決していく。
極めつけは新山さんの銀縁眼鏡。
犯人にとって衝撃的な指摘なんですが、ベッドに置いてあるかもしれない、という優掛の推測でしかないので微妙ですかね。
全体的に考えると、アイデアは良かったのだが、捻りが足りなかったと思う。
あまりにも素直なストーリー構成なので、あっけないというか、物足りない気がする。
伏線があまりにもわかりやすい点も気になった。
本筋とは別にアクシデント的なサブストーリーを入れて、複雑化するなどしないと、作家自身の個性があまりにも薄い。
個人的にいろいろ妄想してみた。。。(´ー`)┌
倒叙方式でまず犯人が殺害を行うのだが、その後、探偵役の論理的な指摘は、犯人が工作した状態と食い違った方向に進んで行く。
被害者は生きているのかも、もしくは、犯人以外の真犯人が別の工作を行ったかもしれないという状態になっていく。。。
自分が工作して扉を閉ざしてしまった為に、部屋の中を確認することもできず、殺したはずの犯人ですら、探偵役に徹して謎を解かなくてはならない状況に陥るとか。。。
素人考えとはいえ、もうちょっと凝ったプロットにして欲しかった。
本作の面白さは、何と言っても、
“扉が閉ざされたまま” 事件が始まり、終わるという点。
斬新なアイデアだと思う。
部屋の主が、どんな状態で居るのか、生きているのか、死んでいるのか、急病で倒れているのか、自殺したのか、故意に閉じこもっているだけなのか。。。
犯人捜しをする以前の問題に重点を置いて、様々な状態が混在する中、少ない手がかりで推理する面白さ。
そして、何よりも優掛という女性の打算的な女の怖さを味わう小説かもしれない。'`,、('∀`) '`,、
それは、
“新山さんの銀縁眼鏡” という一言に集約されている。
新山さんの銀縁眼鏡が、ベッドにあるのか、風呂場にあるのか、それは犯人にしか分かりえない事実であり、それを推測とはいえ確信し、逆に、ベッドにあったら致命的だよと暗に指摘した心眼。
“あなたの事なら何でもお見通しよ” と脅迫を受けているのと同然。
恐ろしい魔女である。
伏見くんもとうとうこの女郎蜘蛛の糸に絡め取られたのである。
夜が明け、警察が来るまでが、計画の終焉だと思っていた伏見だが、その前に、人生最大にして、究極の二者択一を迫られることになるとは思ってもみなかったことだろう。
警察に捕まるか、優掛から一生離れられないか。。。
優掛は、殺人という非人間的な事態を事も無く冷静に受け止め、それすら利用しようとする女ですからねぇ。
どうあがいても逃げられないか。。。?
( ゚_ゝ゚) { 『対決の立会人はわずかに四人。あなたが、五人目です。』 見てるだけぇ〜
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