Bk.080 マジックミラー

10:03 Thu 11.10
マジックミラー 新装版 (講談社文庫 あ 58-15)マジックミラー 新装版 (講談社文庫 あ 58-15)
(2008/04/15)
有栖川 有栖

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::: ミステリ ::: ★★★★☆


有栖川センセのデビュー作は、江神シリーズ第1弾でもある 『月光ゲーム』 なのですが、わたくしは、何故か本書がデビュー作のような気がしてならない。
多分、小説家にしろ、漫画家にしろ、デビュー作がいきなりシリーズ物になるなんて考えてもみなかったからかもしれない。
著者の人気作品は、江神(学生アリス)シリーズと、火村(作家アリス)シリーズの2本。

(一般的には、学生アリスシリーズとか、作家アリスシリーズと呼ばれているようですが、わたくしはどっちがどっちだかわかんなくなっちゃうので、江神シリーズ、火村シリーズと呼んでます。)


本書は、そんな人気シリーズとは異なり、ノンシリーズ作品である。
シリーズ物と勝手が違うせいか、初期作品だからか、わかりませんが、結構、小説として技巧的な作品に思える。
作家に限らず、若い時って、テクニックに拘ったりするところありますよね。
ミステリに対する持論を展開したりして、ほんとに著者はミステリが好きなのだという気持ちがビシビシ伝わってくる。
そのせいか、読みづらい感じを受ける。
また、時刻表、完璧なアリバイ、そして双子。。。とあからさま過ぎる設定から、堂々とトリックが仕掛けられていることを暗黙のうちに明示しているように思う。
作風からは、紳士的で物腰のやわらかさを感じる著者ですが、時たま見せる大胆さ、挑戦的なまでの度胸の良さが好きです。


本書では、ミステリとしての面白さ以上に、小説としての構成、演出の良さが際立った。
冒頭のダイアローグは、双子の対話形式で描かれており、それに対応して、ラストのモノローグは、推理作家の独白形式。
演劇でもよく使われる演出であり、舞台でのお芝居を観ているよう。
特に、ラストでは感傷的(人によってはブラック・ユーモア)な余韻を残すような演出は、有栖節とでも言うか、ペシミズム漂う終焉であり、リアリストなわたくしをおセンチな気分にさせてくれました。(笑)













※ これ以降ネタバレしてます。





































鉄道ミステリというのは、よくよく考えると、日本だけしか通用しないミステリですよね。
電車が時刻表通り到着し、時刻通り発車するなんて、海外ではまずありえない。
さらに言えば、本書では航空機を利用した複雑な仕組みであることから、現実的に考えたら、有り得ない設定なのだろう。
だからといって、パズルを解く楽しさまで失われることはないですけどね。
ただ、残念なことに、女性を筆頭に、昨今の日本人は、こういった時刻表を見ながらトリックを暴くというチマチマした根気のいる作業は嫌いなようです。(´ー`)┌
著者が捻り出したトリックを真剣に検証した人はあまりいなさそう。
ミステリの中でも、時刻表を用いたトリックは難しいですよね。


本書では、鉄道ミステリだけでなく、双子をネタにしたアリバイ・トリックなどあり、とても贅沢な1冊だと思う。
特に、双子のアリバイ・トリックがすごい。
何がすごいかっていうと、トリック自体もすごいが、 “双子という特性” を利用したトリックを著者が2つも用意していたこと。
最後のオチまで入れれば、3つということになるが。。。

柚木新一、健一の双子が、保険金目当てに新一の妻を殺害する。
しかし、双子には完璧なアリバイがあった。
このアリバイで使われたのが、電車と飛行機を利用した複雑なトリックである。
今度は、その双子に復讐をするべく、作家・空知が双子の特性をうまく利用し、殺害。
さらに自分のアリバイをも確保するという離れ業をやってみせる。
その空知の犯行を、探偵・小桑が暴くわけですが、空知をハメる罠が、実は、小桑も双子だったというオチ。
3段構えのオチには参りましたというほかあるまい。(笑)


鉄道ミステリは、前座に過ぎなかったという点が脱帽です。
しかも、それがあるからこそ、空知の犯行が可能であり、より効果的だったということ。
一見、必要がなさそうにみえる 『アリバイ講義』 も、マジシャンのように何もトリックがないのだというように、曝け出して、注意を向けさせておきながら、そこにはない新たなトリックで騙す。
そして、その謎解きの解説にすらこの『アリバイ講義』が一役買っているのだから。┐('〜`;)┌
全てに於いて無駄が無く、理路整然としている。
ただ、空知がどんなに論理的に組み立てた殺人計画であっても、ユカリという女性の第六感は想定外だったようだ。
それでも、空知という人間は憎めないものがある。
冒頭からこの好人物に感情移入していたからだろう。
著者の描く人物像は、作家・アリスにしても、何でこうもやさしい人なのだろうと思う。
やさしい男であるはずの空知の中に潜む、衝動的な暴力性に気づいたときから、嫌な予感はしていたが。。。








(  ゚_ゝ゚) { 『明日に行けない、昨日に帰れない。その檻を食い破るのが、ミステリという昏(くら)いファンタジーなのです。』 時間で作られた密室。







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Bk.079 幻想運河

23:08 Sun 07.10
幻想運河 (講談社ノベルス)幻想運河 (講談社ノベルス)
(1999/10)
有栖川 有栖

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::: ミステリ ::: ★☆☆☆☆


火村シリーズでも、江神シリーズでもない作品。
“有栖川ミステリ裏ベストワン” という売り文句にあるように、らしくない作品でもある。
有栖川ファンも評価を二分にするだろう挑戦的なミステリーです。
らしくないと肩を落とすか、新境地と狂喜するか、判断が微妙。
わたくしの評価は星1つであり、信頼を置く著者の作品では最も低い。
といっても、その評価はわたくしの感情論に基づいたものであり、端的に言って、好きか、嫌いか、面白いか、つまらないかという単純思考で決めたもの。
そういう観点から言えば、肌に合わない作品だったということ。

本書はミステリというジャンルに属するも、本質は、幻想小説だと思う。
わたくしは、幻想小説とか、精神論を展開するような小説が苦手なんですよね。
なので、中々事件が起きないスロウな展開だとか、のらりくらりとオランダの情景やら、人間模様を読まされるとツラかったりする。
おそらく、わたくしに限らず、女性はこういう作品苦手だと思う。
基本的に現実的な生きものだから。
逆に、ロマンチックな男性は絶賛するだろうね、本書を。


ミステリとしては、読者に “ぶん投げ” という荒業をかましているので、論理性を求めていた読者は、 “なんじゃこりゃ!?” と肩透かしをくらうだろう。
普通にミステリとして読んだら、評価もくそもあったもんじゃない。
ミステリ作家・有栖川だからこその “裏ベスト” であり、小説家・有栖川と考えたら、裏でなくとも結構イケるじゃないのと思えてくる。












※ これ以降ネタバレしてます。




































何も解決せずに、結果だけが取り残されるミステリ。
真相は著者の頭の中にだけあるという、一歩間違ったら、清涼院流水のような“とんでも”ミステリになる可能性もあった。( ´ロ`)
あぶない、あぶない。。。(o゚c_,゚o) プ
そこは、上品な文才と、巧みな幻想的描写で土台を固めていたからこそ成立した作品なんでしょうね。

ミステリとして考えたら、動機も犯人も、犯行方法も全て想像の範疇でしかなく、それを丸々読者にぶん投げるという大胆な結末は有り得ないところ。
しかも、ロジック王の著者としては、あまりにも甘い伏線だったように思う。
ボート・ハウスが出てきた時点で、アリバイ・トリックやなと想像に易い。
逆に、本書での探偵役である恭司の推理は、間違っているのかもしれないと勘繰ってしまうほど。
また、作中作でSFミステリらしいものを書いているが、それが本編に対して何を意味しているのかもよくわからない。
遺体をバラバラに切断したにも係わらず、運河に捨てるという、バラバラ殺人が持つメリットを無視してまでも行われる犯行に対する、強い執着心、犯罪心理についての著者の持論が、本書でのバラバラ殺人を行った犯人のイメージと一致しないように思う。
作中作にしろ、バラバラ殺人に執着した背景といい、著者のメッセージが伝わらない。

全てにおいて、曖昧模糊、リンクしていない、一方通行、そんな読後感でした。
読解力の問題か、感性の問題か、人間として未熟なせいか。。。
数年後、再読したら本書の良さが理解できるのか、謎ばかりが残された。









(  ゚_ゝ゚) { 『終わりのない重力のバレエ』 幻想推理。。。(笑)







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Bk.071 ジュリエットの悲鳴

09:57 Thu 20.09
ジュリエットの悲鳴 (ジョイ・ノベルス)ジュリエットの悲鳴 (ジョイ・ノベルス)
(2000/07)
有栖川 有栖

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::: ミステリ・サスペンス ::: ★★☆☆☆


短編集。再読です。
昔読んだ時は、大して面白くなかったと記憶していたのですが、そんなに悪くは無いなぁと撤回。
しかし、短編集とはいえ、かなり短いものもあり、小粒揃いのせいか、記憶に残る作品かどうかは疑問。


全体的に統一感は無い。
本格・倒叙・クライムミステリもあれば、サスペンス、幻想小説、SFと様々。
インターミッションのミニミニ短編などは、星新一を思わせるような作風。
また、犯人側の視点に立った作品が多く、それをブラック・ユーモアで包んでいるところが良いですね。


個人的に良かったのは、 『登竜門が多すぎる』 と インターミッションでは、 『世紀のアリバイ』 ですね。
前者はオチがちょっとわかりずらいのですが、そこにいくまでの過程がとにかく笑えます。
後者はプチ歴史ミステリ(?)で、タイトルも含めてアッと驚くようなオチがとても良かったと思います。









(  ゚_ゝ゚) { 『探偵は敬語を使ってはならない。(何のことだ?)』 (笑)





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