::: ミステリ ::: ★★★★☆
有栖川センセの記念すべきデビュー作品。
著者は、綾辻行人らといった80年代後半から、90年代にかけて脚光を浴びた、新本格派世代のミステリー作家。
常に質の高い本格ミステリを提供しています。
新本格ブーム全盛期の頃、わたくしはというと、あまり読書をしていなかった。
当時は、カラオケ全盛ですよ!
音楽も大好きで、幸運にも音痴ではなかったので、仕事が終わればカラオケ三昧。
休日などは待ってましたのカラオケ日和で、本なんて読んでる場合じゃなかった。┐('〜`;)┌
たまに本を読む時は、赤川次郎や、宮部みゆきをよく読んでいましたが、2時間サスペンスの影響で、内田康夫に転向していった。
今でもよく読みますけど。
なので、ミステリ界の時流に全く乗れてなかった。
そんな中、じょじょにカラオケ熱も醒めて、図書館通いが始まった頃に、今でこそ、 『このミステリーがすごい!』 が年末の風物詩みたいになってますが、当時、ミステリのガイドブックのような本は見かけたことが無く、珍しさからも目にとまって興味本位で読んだ。
そこに、綾辻センセの 『十角館の殺人』 と本書の解説が掲載されていた。
他にも名立たる作家の名作がズラリと載っていたのですが、とにかくあらすじに興味が湧いた。
すぐに本屋に飛んでいき、買って読んだのが出会い。
本屋では偶然、本書の3作目である 『双頭の悪魔』 が文庫化されて店頭に平積みされていた。
2作目の 『孤島パズル』 も合わせて一気に買って、一気に読んだ。
仕事中もこっそり読んだ!(笑)
それくらい人生変えたといってもいいくら衝撃的な出会いでしたね。
ちなみに、綾辻センセの “館”シリーズも大人買い。。。┐('〜`;)┌
よくよく奥付を見たら、単行本で刊行されたのが1989年、文庫に落ちたのが1994年と5年もの開きがある。
わたくしの手元にある本書は、版を重ねること21回の1999年もの。。。
オソッ。 自分、気づくの遅すぎだよ。(´ー`)┌
つまり、本書が世にでてから10年という長い月日を経過して、やっとこわたくしの手に取られたというわけです。
感慨深いなぁ。。。
肝心の内容ですが、著者はエラリー・クイーンを敬愛しており、著作のほとんど全てがEQ風のミステリである。
本書の副題でもある “Yの悲劇’88” や、後半で登場してくる “読者への挑戦” など、オマージュ以上の愛(笑)を感じる。
EQだけでなく、推理小説そのものが本当に好きなんだなぁと感じるほどのオタクぶりが展開されてます。。
純粋さ、誠実さがひしひしと読み手に伝わってくる。
今回は、およそ10年くらい前に、1度読んだだけで、新作 『女王国の城』 を読む前におさらいということで再読でした。
シリーズとしては、新作を含め4作あるのですが、その中でも本書は当初、好きなほうではなかった。
再読して、読みづらさというのは、当時と現在とでの読書経験が違うので、ほとんど解消されていたが、 “つかみ” は相変わらず悪いと感じました。
ミステリにもいろいろあると思いますが、大抵のミステリ好きは、事件が起きなければ何も始まらないと思っている。
そこまで辿り着くまでに、延々と学生達のキャンプの情景だとか、恋バナとか、読まされてる読者は正直つらい。
ただ、本書は、ミステリであると同時に、青春小説としての側面も持ち合わせている。
本書は一般的に、学生アリスシリーズ(または江神シリーズ)と呼ばれ、著者と同姓同名の有栖川有栖という大学生が主人公の作品。
先輩である江神二郎が探偵役であり、アリスがその助手という役回り。
登場人物たちが学生ということもあり、青春ミステリとしての度合いが強い。
それに、サスペンス、アドベンチャー、ロマンスといった要素もふんだんに取り入れられていて、著者の作品の中でもこのシリーズの人気は高い。
ただの謎解きミステリではないので、そこだけ楽しみたいという方には、退屈かもしれません。
文句なく星5つと言いたいところですが、殺人の動機、登場人物の多さに比例した描き分けに難あり、ということで、星4つとなりました。
※ これ以降ネタバレしてます。デビュー作品ということもあり、作家自身の初々しさみたいなのが文章のそこかしこから垣間見えて、ぎこちなさも新鮮に感じましたねぇ。(笑)
文章やキャラクターも好感が持てる。
特に、江神さんてあんなに頼りがいのある人でしたっけ?(笑) と思ったりする。
作家アリスシリーズの火村さんと、似てることは似てるけど、大学生の江神さんのほうが達観した大人な印象を受ける。
ミステリとしての面白さは語るまでもないですが、難点を挙げるとしたら、やはり、犯人・年野武の動機と、多数の登場人物の2点でしょうね。
武の恋人・小百合がクリスチャンとはいえ、酔っ払いの学生2人にからかいを受けただけで、自分が半ば強引に連れてきた2人の女子学生を置き去りにして、さっさと1人で下山しちゃうという女性の描き方も問題だが、小百合が噴火による土砂崩れに巻き込まれたと、勝手に死んだものと判断し、からかった学生を短絡的に殺害しちゃう武も、とても法学部の学生とは思えない。
普通であれば、生死が確認された時点で、殺害計画を練るでしょうね。
クローズド・サークルで人殺しなんて、自分の首を締めるようなおろかな行為ですから。
それと、とにかく登場人物が多くて困りました。(笑)
誰が犯人だって考える以前に、こいつは誰で、どのグループの人? と混乱しっぱなしで、犯人探すのも大変。
フルネームだけでなく、ニックネームもあるのでわかりずらい。
わかりずらい原因は、やはりキャラクターの描き分けが出来ていないせいもある。
死者4人に、犯人を含めて5人を犠牲者とすると、その倍くらいの目くらましの人数が必要だろうなぁくらいはわかるが、総勢17人はとてもじゃないが覚えられない。。。(´ー`)┌
ミステリとしてのつかみの悪さも考えると、デビュー作品とはいえ、初めて著者の作品を読む人には向かないと思う。
本書は、本格ミステリの王道中の王道。
クローズド・サークルに、ダイイング・メッセージと、あらすじを読んだだけでワクワクしてくる。
クローズド・サークルといったら、 “吹雪の山荘もの” とか、 “嵐の孤島もの” といったシチュエーションが有名ですが、本書では、火山の噴火という大胆な発想。
ありえない設定ではないが、奇抜かもしれない。
ただ、噴火の恐怖というサスペンス性や、危険地帯からの脱出といったアドベンチャー要素が取り入れられており、ミステリだけでない面白さがある。
殺人事件を解明する主人公が “ただの学生” であるというハンデを、クローズド・サークルという隔絶したシチュエーションにすることで帳消しにしている。
警察や科学捜査が介入できなければ、確定的な論証が得られないので、犯人が断固として否定すれば成り立たないのですが、素直に自白してくれる都合の良い犯人でよかったです。(笑)
それだけに、いかに論理的に謎を解明できるかが本格ミステリーの醍醐味でもある。
ダイイング・メッセージの “Y” に関しては、当時は賛否両論あったそうですが、わたくしは “と” を書きかけて “Y” のようになってしまったという設定に無理はないと思う。
どっちかっつ〜と、 “と” は大文字ではなく、小文字の “y” に近いと思うが。。。
被害者が犯人の名前を残そうとして、苗字の一文字目の “と” を書く途中で絶命したのですが、犯人の苗字は、 “としの” ではなく、 “ねんの” だったというオチ。
それが皆、 “Y” に見えてしまったから余計ややこしいダイイング・メッセージとなってしまった。
まぁ、 “と” って書けても、やっぱりなんだかわからなかったと思うが。。。(笑)
冒頭から、気にはなってたんですよね。
登場人物達が学生だからでもあるのですが、お互いニックネームで呼び合っていた。
友達ならわかるのですが、出逢ったばかりの人を、あっさりとニックネームで呼び合えるかなぁ? というのがわたくしの感想だった。
これから長い付き合いになりそうだという雰囲気ならわからなくもないが、ニックネームで呼び合わせることで、読者の目を苗字からそらせようとしていたんですね。
わたくしが1番感心したのが、犯人が夜中に北野勉を殺害し、手についた返り血を川で洗い流したが、誤まって懐中電灯を壊してしまい、仕方なくマッチを擦り、松明代わりに足元を照らし、殺害現場に戻るというシーンなんですが、川に行く時にマッチが使われたのではなく、川から戻る時に使われたという逆転の発想は目から鱗だったのですよ。
その論拠は、マッチの軸に血がついていなかったから。
上手いなと思ったのが、マッチの軸に血が “ついている” か、 “ついていない” かという事実を言明していないこと。
“ついていない” という事実が強調されてしまうと、そこから一気に犯人まで到達してしまう可能性があり、読者には絶対に気づかれず、かつ、推理に必要な情報だけを残すように伏線を張る必要性がある。
そこで、マッチの軸を見た登場人物達に、血痕に関する発言を一切させないことで、違和感なく自然と読者に “普通” のマッチの燃えカス、というイメージを刷り込んでしまうというテクを披露しています。
普通、人間は “ない” ものを無いと言葉に出す人はいない。
登場人物達は、 “マッチの燃えカス + 血痕” という非日常的なモノを見なかったからこそ、言葉にしなかったんですね。
その登場人物達の言動を勝手にというか、自然に読者が想像することで、ただのマッチの燃えカスのイメージを共有させることに成功している。
ただ、江神さんのように、それが、犯人につながる重要な意味を持っていることに気づくかどうかは読者次第というわけですね。
しかしながら気になる点が1つ。
犯人は血のついた手形を被害者の服につけてしまっている。
だったら、手についた返り血を被害者の服で拭うことも出来たと思うんですよね。
そうなると犯人を特定する論証がなくなってしまうんですが。。。
“マッチの謎が解ける = 犯人がわかる” という簡単な図式なだけに、著者としては絶対に解かれては困る部分だったということなのでしょうか。
それと、犯人が、小百合の指輪がはまって抜けなくなった尚三の指を切り落として、望月のカメラのフィルムを装填する部分に隠したという設定、これは必要だったのかが疑問。
確かに衝撃的なシーンだとは思う。
インパクトのある謎がもう1つ欲しいという気持ちはわからなくはない。
アイデアはすごいと思う。
ただ、恋人の大切にしていた指輪を捨てきれない心情は理解できるが、指ごとわざわざ他人の所持品に隠す意味がわからない。
後で回収することを考えたら、得策ではないことは明らかですしね。
それならば、林の草むらの中に埋めておいた方がまだまし。
その殺された尚三の遺体だけなぜ犯人は隠したのか、この点は良かったと思う。
指を切り取ったことで、疑惑が犯人に向けられるし、殺害後、噴火が起きているため、灰が遺体に降りかかることで、殺害時刻を特定されるのを防げるから。
いろいろ考え出すと、ダメ出しが多くなっていきそうで、星4つの評価も怪しげですが、好きだからいいか。(´v`)
( ゚_ゝ゚) { 『フェアプレイで読者に挑戦する日本のクイーン』 よっ、ロジック王。
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