::: ミステリ ::: ★★★☆☆
予想に反して、面白かったです。
って言ったら失礼なのですが。(´ー`)┌
有栖川センセの短編は、正直なところあまり期待していなかった。(オイ)
よって、これも失礼ながら、図書館でお借りしました。(スマン)
わたくしは、文庫版(2007年)で読んだのですが、既にノベルズ版(2003年)が刊行されている。
本作は光文社から発行された有栖川センセ初の書籍であり、そこでカッパ・ノベルズ・デビューするなら、鉄道ミステリを書きたかったと、センセはあとがきで語っています。
光文社のカッパ・ノベルズと言えば、旅情ミステリのドン(首領)・西村京太郎先生が思い浮かぶ。
西村京太郎といえば、鉄道ミステリ。。。時刻表を片手にアリバイ崩しだ。
そこで、 『白い兎が逃げる』 という作品が登場したのか。
なんて、勝手に独りで納得してます。(´ー`)┌
西村先生へのオマージュというわけでもないのだろうが、著者はかなり遊び心がある。
『不在の証明』 や、 『比類ない神々しいような瞬間』 にしても、どこか皮肉った(良い意味で)作品に思える。
皮肉というと言葉は悪いが、切れ味鋭い皮肉は、時として優れたジョークにも変幻するもので、笑いで例えるなら、誰もが腹を抱えて笑える通俗的な冗談ではなく、わかる人が聞けばクスリと頬を緩める、粋なまでのブラック・ジョークに近いのではと思います。
そんなクールさが好きだったりする。(´v`)
後日、本作を購入したいと思っているのだが、悩むのが、ノベルズ版を買うか、文庫にするかだ。。。
装丁としては、ノベルズ版の方が好みなのだが、あとがきのお徳感は、文庫だろうし。。。
あぁ〜どうしよう。。。
※ これ以降ネタバレしてます。短編が3編(『不在の証明』、『地下室の処刑』、『比類ない神々しいような瞬間』)に、中篇が表題作でもある 『白い兎が逃げる』 1編。
4編が年代別に収まっているのですが、不思議なことに、順番に作品としての質が良くなっていること。
良いか否かは、わたくし的な好みの問題でもあるわけですけど。。。
・不在の証明でました、双子モノ(?)
ミステリー作家たるもの一度は使う設定ですね。
双子という設定を利用した、アリバイトリックです。
双子といったら、替え玉によるトリックと考えそうですが、さすがに、そこまで単純ではない。
読む側もお手つきすることなく、犯人の目星はつくし、トリック自体もさほど難しいものでもない。
しかし、見破るのは難しいのだ。
それもこれも、首を絞めた人間が、被害者の元に戻ってきた(止めを刺すためか、助けるためかは不明)という話や、文鎮で人を殴り殺した事に動揺して、近くのゴミ箱に凶器を捨ててしまったという話も、火村センセ(著者)の推論でしかなく、果たして、そこにたどり着くまでに、登場人物達の人間描写(伏線)があったか? というと疑問。
個々の想像力と感性の問題という気がする。
ただ、第一容疑者だった双子の兄の、
“現場不在証明” が証明されて、犯人の
“不在の証明” が証明されるという言葉の遊び方や、皮肉な展開は面白かったです。
・地下室の処刑トリックが良かったです。
テロリストに拉致された刑事が、奇妙な殺人事件の目撃者となる奇抜な設定。
タイトルからして、痛そうなストーリーなのかと用心したが、著者の美的センスが許さなかったのか、酷い描写とかは全くなく、というより、あまり現実味を帯びない幼稚なテロリスト達だった。
正直、わたくしは死んだ男が自分でワインに毒を入れたんじゃないかと思ってたのですが、まさか、犯人が、 “安楽死が出来る毒薬” が、
本当に安楽死出来るのか否か、その真贋を確かめるために、他人の命を利用して実験を行ったとは。。。
殺害を否定していた犯人自ら、 “畜生” とか、 “いつ死んでもいい” 、 “希死念慮” といった、自白とも言えるキーワードを残していた。
“死” に対する関心と、 “死に様” に対する畏怖は、見事なまでに比例するものなんですね。
関心が高ければ高いほど、死に際を想像した時の恐怖感も、それ相応に高いってことなのか。。。
火村が “希死念慮は自覚するか?” と、犯人に質問をした時に、あっさりと否定した事からも、自殺に対しての関心や興味は高いものの、生死に対して正常な判断が可能な状態であることがわかる。
だが、生きていく中で、今、死んでもかまわないと思った瞬間に、安楽死できる薬を手に入れているという、“保険”が欲しいばかりに、他人の命を平然と奪う、それに対する感慨も持たない。
そういう意味では、この犯人は正常な精神の持ち主ではない。
テロリストというのは、己らの目的達成の為には、暴力的行為も厭わない非道な連中であり、シャングリア十字軍なんてチャラ臭い名前のテロ集団よりも、もう1人の容疑者の女のように、幼稚な思想を掲げるよりも、自分の理想的な死に様の為に、人を殺すことも厭わない人間の方が、遥かに非道で、凶暴なテロリストに思える。
・比類ない神々しいような瞬間全体的にとてもバランスが良い作品。
ダイイング・メッセージの謎が、贅沢にも2つ用意されている。
わたくしはどちらもわかりませんでしたが。。。
1つ目のダイイング・メッセージは、香道にまつわるもので、“お香を聞く(嗅ぐ)” という雅な世界を知らないわたくしにはとても興味深い内容でした。
お香には、源氏香と呼ばれる遊びがあり、香りの種類ごとに、源氏物語の巻名になぞらえた名前やマークがある。
その香りを聞いて、名前を当てるゲームだそうです。
利き酒ならぬ、聞き香りってことですかね。
被害者はその源氏香の1つ 『明石』 を表すマーク、すなわち犯人の名前を残した。
2つ目は、千円札(夏目漱石)を握りしめて死んだ男のダイイング・メッセージ。
犯人は夏目なる人物か? お札の製造番号から殺害日を特定したのか? と思わせながら、実は、お札が印刷される場所が、大蔵省から財務省に変更され、その改訂された新札が出回った日付を利用したトリックだった。
実際の犯行日よりも以前に殺害されたように工作した犯人だが、工作した日付よりも後に出回った新札を被害者が握りしめて死んでるのだから、いい訳のしようもない、決定的な証拠となってしまったわけだ。
犯人どころか、被害者すら知らずに残されたダイイング・メッセージであり、まさに、比類ない神々しいような瞬間だった。
ただ、欠点を上げるとしたら、このお札のトリックには賞味期限があるってことですかね。
・白い兎が逃げる短編でも良かったのでは。。。と思う。
ストーカーに狙われていた劇団の看板女優を守る為に、ナイトの役を任された脚本家が、逆にストーカーに弱みを握られてしまう。
脅迫者となったストーカーを殺害すべく、脚本家が一計を案じるというストーリー。
著者はカッパ・ノベルズ・デビューでウキウキしていたのか、とても遊び心溢れる作品で楽しかった。
『不思議の国のアリス』 や 『うさぎとかめ』 といった物語を引き合いに出しながら、登場人物達にも凝った設定をしている。
ストーカーに狙われる女優の容姿が、白兎に似ているから端を発し、ストーカーがブンブンと纏わりつき、意表をつく攻撃性も備えている蜂のような男として表現され、その名前も蜂谷。
昔話『うさぎとかめ』 で、昼寝をしている兎を追い越す亀というところから、脚本家には亀井という名。
しかも、この亀さんは、アリバイトリックとして、本当に兎ちゃんを追い越すのだ。
構成がとても凝ってますね。
ただ、鉄道ミステリにしては、火村センセらの会話の中でしか、アリバイトリックを検証できないのが難点。
実際に、時刻表が掲載されているわけでもないし、手元にあるわけでもない。
本物の時刻表も毎年(半年?)改訂されるわけですし、そう考えると、著者にしてはフェアとは言い難い作品だなぁ。
あとがきで、時刻表を使った鉄道ミステリを苦手とする人にも楽しんでもらいたいという著者の言葉を見つけ、そういう意図があってのことなのかと、多少は納得。
納得できない部分としては、同じ列車に乗っていた犯人が、駅で兎ちゃんを待っていたかのように見せるトリックは、トリックって言えるようなもんじゃないのが残念。
そんなん、列車が着くまえに出口に待機していて、兎ちゃんに気づかれる前に降りて、ホームで待っていたかのように振る舞えばそれまでじゃんと、あっさり誰でも思いつくわけで、まさか、そんな単純なことじゃないだろうと、驚愕のトリックを期待していたのだが。。。
( ゚_ゝ゚) { 『盛り上がっていたんですか?』 何気ない突っ込みが笑える。さすが関西人。
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