::: ダークファンタジー・ミステリ ::: ★★☆☆☆
タイムトラベル・ダークファンタジー・ミステリとでもいうのだろうか。(笑)
赤川さんは、ヨーロッパの文学や音楽、芸術といった文化に精通しているが、作品のほとんどが日本を舞台にしたものばかり。
本書は、スイスと、イギリスを舞台にした稀な作品。
内容は、現代(20世紀)のスイスで起きた猟奇殺人と、19世紀ロンドンで起きた切り裂きジャック事件を、主人公である日本の女子高生・綾が、タイムスリップして解決するというかなりの荒業。(笑)
本書で評価できるのが、現代と過去を行き来しながら、切り裂きジャック事件の謎解きを行うわけですから、そこには必然的に、タイムパラドックスという現象がつきまとう。
そのタイムパラドックスを無理なく、物語上でプラスに転化させた構成力が素晴らしい。
それまで点々と置き去りにしていた謎が、ある瞬間を境に一本の線に繋がり一気に解決する。
まるで立ち込めていた霧が、一陣の風に吹き飛ばされ、視界が広がるような感じである。
叙述的な仕掛けなので、2度読みするとより楽しめる作品であると思う。
星3つといきたいところだが、現代の猟奇殺人事件の解決がとってつけたような展開だったことと、切り裂きジャック事件の真相が、現在、有力とされている説をなぞった形であったことが、評価を下げた。
しかし、どちらかだとは思う。
本書のように、元ネタを利用して、展開させていく手法を取るか、新たな解釈で切り裂きジャック事件を謎解くか。。。
予想では、アイデアマンである赤川さんのことだから、新解釈でくるのかと思ったら、技巧的なトリック戦法できたのは意外でした。
※ これ以降ネタバレしてます。何がしたかったのか、という意図は明確に伝わった。
構成も良かったですし、次作も読みたいと思わせる作品だった。
切り裂きジャック事件の犯人説は諸説ありますが、最も有名なのが、当時のイギリス女王・ヴィクトリアの孫、アルバート・ヴィクターが犯人ではないかという説。
赤川さんもほぼこの説をとったようです。
物語では、ヴィクトリア女王とその息子・チャールズ(切り裂きジャック)という関係性でしたが。
切り裂きジャックを扱った、小説や映画はこの説で作られているものが多いように思います。
事実はどうだったのか未だ不明ですが。。。
本書の顛末はというと、主人公・綾と彼女の母親は、時を行き来し、死者に会う能力があったようです。
綾が幼い時分、列車から突然姿を消してしまった彼女の母親は、タイムスリップ能力により、19世紀のロンドンで、ヴィクトリア女王に仕えることになる。
娘の綾は、自分の意志でタイムスリップが出来ないのだが、母親は自分の意志でタイムスリップしたようです。
その母親と同じくヴィクトリア女王に仕えていた女性が、綾がスイス留学するヴィラ・アレクサンドリアの学長・サラの、曾祖母だったというオチ。
綾の母親は、20世紀を生きているであろう娘に向けて、サラの曾祖母に手紙を託した。
その手紙がきっかけで、綾はスイス留学をするのですが、問題は、その手紙に何が書いてあったのか?
そこが語られていないので、母親の意図がわかりません。
綾に切り裂きジャック事件を解決させるためとしても、いつどこで綾がタイムスリップするかは誰もわからないわけで。。。謎。
また、切り裂きジャックの最後の犠牲者、メアリー・ケリーは、人違いで別の女性が殺害されるとしてます。
残酷なバッド・エンドにしないところが赤川さんらしいです。
切り裂きジャックさえ出てこなければ、SFファンタジーなストーリーですよね。
タイムパラドックスを利用した構成はとても素晴らしいのですが、それだけでは、話が続かなかったのか、現代の切り裂きジャック事件とか、娼館での脱出劇といったエピソードを入れてるのですが、必要性がないとしか思えなかった。
現代での切り裂きジャック事件は、19世紀の切り裂きジャック事件との関連性がない上、謎解きも1行で済んでしまうようなあっけなさ。
推理もくそもあったもんじゃない。
両者のバランスの比率が悪すぎる。
娼館での大活劇に至っては、ちょっとした山場を作りたかっただけのような気がしてならないほど。
もし、本書がドラマ化とか映画化されたとしても、この部分はごっそりカットされるだろうことは明白。
娼館のエピソードを入れるくらいなら、現代の切り裂きジャック事件をもっと掘り下げて欲しかった。
構成が良かったのだが、マイナス面も同じだけあり、全体的に評価が落ちてしまいますね。
( ゚_ゝ゚) { 『がっかりだわ。悪徳刑事なんて、ありきたり過ぎる。』 たしかに。。。
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