::: ミステリ ::: ★★★☆☆
原書房 「本格ミステリベスト10 2006年度版」 で、堂々の8位にランクインした作品。
7位以上の作品は1作品しか読んでいないので、この8位という順位は妥当なのかどうかはわかりませんが、久しぶりの倒叙ミステリだったせいもあり、読了感も満足の二文字です。
倒叙形式のミステリーの代名詞と言えば、やっぱり、 『刑事コロンボ』
W.リンク&R.レビンソン原作、ピーター・フォーク主演のTVドラマは傑作です。
わたくしも子供の時分から大好きで、高校生の時には、二見書房から出版されていた小説も買ったほど。
著者はわたくし以上のコロンボファンであり、驚くことに、小説版の翻訳まで手掛けるほどになってます。ヽ(゚∀゚ )ノ
翻訳といっても、もともと『刑事コロンボ』は、TVドラマなだけに原書はない。
TVドラマ、脚本や資料を元に小説に興したものなので、翻訳というよりは、共著に近いですね。
そんな経緯もあり、とうとう自らW.リンク&R.レビンソンに対するオマージュ的作品である本作を刊行した。
中味は長編なのかと思っていたら、短編だった。
そこは、あれですよ、 『警部補・古畑任三郎』 を意識しての策だったのかもしれないですね。
著者よりも一歩早く、日本版コロンボをつくった三谷幸喜さんを、ライバル視してる気はします。
物語に登場してくる福家警部補は、ヨレヨレのコートを着込んだ、しょぼくれたオッサンでもなく、全身黒ずくめで、スマートな色白イケメン男でもない。
童顔で、チビで眼鏡っ娘の女刑事だったりする。
その容姿から、初対面の誰もが、福家が捜査一課の刑事(しかも警部補)であることに驚きを表す。
コロンボ流のお約束ですね。
他にも、警察バッチがバッグの中で迷子になり、事件現場で警官と押し問答になったり、ボロい手帳が1冊じゃたりないほどのメモ魔であるとか、初動捜査での鑑識・二岡とのやりとり等、各話には必ず彼女のトレードマークとして演出されてます。
忠実にコロンボ流の捜査に、
“こだわり” を継承しつつ、媒体を女性として新たに現代にフィットした刑事像を創っている。
短編4作のうち、個人的には、 「最後の一冊」 と 「月の雫」 が良かったかな。
両方とも初期の 『刑事コロンボ』 らしい感じが良く出ていた。
っていうか、ピーター・フォークを頭に描きながら読んでも楽しめそうだ。
個人的な評価は星4つでも良いとさえ思う。
ただし、わたくしが 『警部補・古畑任三郎』 を知らなかったらの話。
先駆者を知っているだけに、それ以上の作品を期待してしまうせいと、差別化という意味では、成功しているとは決して思わない。
その点を含めて、評価が落ちました。
※ これ以降ネタバレしてます。田村正和さんの降板により、 『警部補・古畑任三郎』 がファイナルとなって、とても残念に思っていた。
灰汁の強いキャラクターが支持されたせいもあり、もう古畑は田村正和さんしか演じられないだろうし。
三谷さん自身ミステリ作家というわけでもなく、連続ドラマはまず不可能そう。
違う役者を使って、単発でミステリドラマを作るか、いっそのこと映画か。。。
とにかく、倒叙ミステリは当分おあずけなんだろうと思っていた。
ところが、著者の手によって、質の高い本格的な倒叙ミステリが刊行されて、嬉しいというよりは、まずは、ホッとしたところ。
多くの読者に支持されているので、続刊もありそうととても期待しています。
全体の印象としては、 『警部補・古畑任三郎』 に一歩及ばずか。。。? という感じを受けました。
倒叙形式は、どちらかというと小説よりも、映像の方が活きると思います。
伏線もきちんとあるのですが、個人的に気になるのが、情報を後出しする場合が割と多い。
読者よりも一歩先を福家が歩いている感じを受ける。
そうなるとやはり正々堂々と、映像で全てを観客に見せていた古畑の方が、より強い衝撃を受けると思える。
また、キャラクターにしても、福家のインパクトが弱い。
コロンボも古畑もそうなんですが、死力を尽くした知力の闘いを繰り広げた相手には、例え犯人であっても、敬意を表したり、紳士的な対応や、プロフェッショナルな仕事(犯人の職業)ぶりを尊敬する。
そういう気質を福家にはあまり感じないんですよね。
なくはないのですが、女性というキャラクターなだけに、もうちょっと強くアピールしても良いんじゃないのかなぁと思いました。
あまりクール過ぎると可愛げがないですしね。。。(´ー`)┌
それと彼女は “変な人” という部類にはギリギリ入る程度で、以外と普通な女性です。
古畑の場合、三谷さん十八番のコメディー要素が、エッセンスとなり個性を発揮したのですが、著者流の遊び心は、キャラクター設定においては、封印するのでしょうかね?
ファーストネーム不明で、生活感が全くなく、わかっていることといえばCIAもびっくりな、情報収集能力があって、メモ魔の酒豪で、片付けられない女ってことだけ。。。
このまま、謎の人物像として、コロンボ流を忠実に貫き通すのか、気になりますね。
シリーズ化されれば、うちの旦那が。。。とか、いとこが。。。なんてセリフが出てくるかもしれませんね。(o゚c_,゚o)
いろんな意味で、本作が映像化されることを熱望します。
その時は多分、福家役は、安達祐美さんが演じそう。。。予感がする。
内容としては、
◆ 最後の一冊犯 人 : 私設 江波戸図書館館長 天宮祥子
被害者: 江波戸図書館オーナー 江波戸宏久
殺害動機と方法:江波戸宏久の図書館売却計画を阻止すべく、天宮は図書館に江波戸を呼び寄せ、脚立の上から、重量のある書籍を頭に打ち付けて殺害する。
◆ オッカムの剃刀犯 人 : 城北大学講師 柳田嘉文
被害者: 城北大学助教授 池内国雄
窃盗の常習犯 今井圭造
殺害動機と方法:柳田は科学捜査官時代に妻を殺害、ひそかに山中に遺棄した。
のちに発見された妻の死体の復元結果を、妻とは似ても似つかない別人の顔に捏造した事実を、池内助教授に知られ、脅迫を受ける。
柳田は保身の為に暗い夜道に池内を巧みに誘導し、バッドで殴打し殺害する。
そして、捜査の手が柳田に近づいたことを知ると、窃盗の常習犯・今井にその罪をなすりつけ、階段から突き落とし殺害するという、2段構えの殺人計画を実行する。
◆ 愛情のシナリオ犯 人 : 女優 小木野マリ子
被害者: 女優 柿沼恵美
殺害動機と方法:小木野の隠し子(若手の女優)のスキャンダルな写真をネタに、柿沼に脅迫を受けた為、自動車の排気ガスを利用し、一酸化炭素中毒死に見せかける工作を行い殺害する。
◆ 月の雫犯 人 : 谷元酒造オーナー 谷元吉郎
被害者: 佐藤酒造社長 佐藤一成
殺害動機と方法:財政難の谷元酒造が、佐藤酒造に吸収合併されることへの憤りから、醸造タンクに水を張り、突き落とし殺害する。
全体的に正直、動機に真実味というか、現実味は感じられないが、そこは致し方ないのでしょうね。
本格ミステリは、そこがメインじゃないのですから。
わたくしが好きなのは、 「最後の一冊」 と 「月の雫」 ですかね。
どちらもトリック、それを見破るための手法、プロフェッショナルな職業意識を持っている誇り高い犯人像などが、コロンボ風に仕上がっていたと思います。
笑ったのが、 「愛情のシナリオ」 で殺害される女優の名前が、
“柿沼恵美” だったこと。'`,、('∀`) '`,、
まさかとは思いましたが、この女優は料理番組に出演しているという設定であり、明らかに、
“上沼恵美子” じゃん。。。(O_O;)
何故、この短編だけ実在のタレントの芸名を利用したんでしょうね。。。?
それと、ストーリー上出てくる映画のタイトルが
“誤爆” っていうのも最高に笑えました。
言いえて妙なタイトルだよなぁ。(o゚c_,゚o) プ
4つの短編に登場してくる犯人は、全員、殺人計画を綿密に練っています。
行き当たりばったりの衝動殺人などはありません。
しかし、その完璧と自負していたシナリオは、皮肉な事に、被害者らの何気ない行動により書き換えられてしまいます。
完璧と自負してもどこかに綻びが生じてきます。
それは、殺人計画が殺す側の人間だけの私意で作られるからです。
殺される側の思考はあくまでも、憶見でしかない。
そんな自己愛100%な殺人が成功するわけがなく、嘘に嘘を重ね自滅するという寸法です。
よく考えてみれば、逮捕されないように衝動殺人を行う、なんて起用な真似が出来ないから、計画的に遂行しようとするわけで、そんな人間が実際の捜査対象にされた時、ミスを犯さないなんてありえないです。(´ー`)┌
大抵の殺人犯というのは、
“殺すまでの計画” は念入りなんですけど、
“殺した後の計画” が無いに等しい。
そんな犯人とは逆に、物言わぬ死体とは言いますが、死体は雄弁に真実を語ります。
生きてるどの人間よりも、素直に。
優秀な福家と、おしゃべりな死体がタッグを組んだら、犯人に勝ち目は端からないのです。
( ゚_ゝ゚) { 『よく言われます。』 登場シーンから既に慣れっこのセリフ。。。
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